vol.4 子どもに未来をつなぐためのライフスタイルやアイテム選び

HOME, SWEET ZERO WASTE HOME!

さまざまな立場の方のゼロウェイストな暮らしを見せてもらう連載。第4回目は、静岡県伊豆市のとある山の上の一軒家に住む斉藤さん宅。小さな子どもがいる家庭ならではのサステナブルな生活実践法を見せてもらった。

Sonomi Takeo

フリーランスエディター&ライター

東京生まれ・東京育ちだけど自然が好き。現在は鎌倉在住。某出版社でファッション誌、ハワイ専門誌、料理雑誌などの編集を経たのちフリーランスエディター&ライターに。独立後は動画メディアサイトの…

2020.11.15
ACTION
編集部オリジナル

知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート

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今回取材に訪れたのは、静岡県伊豆市のとある山の上。JR伊東駅から車で約40分、標高は900メートルに位置するその場所は、都内に比べると気温は5℃も低い。

山の木々が道の両側に迫るなか、車をしばらく走らせると野生の鹿たちがお出迎えしてくれる。

そんな自然豊かな場所に住むのは、株式会社CLAVIS HELICE(クラビスヘリス)代表取締役/一般社団法人日本サステイナビリティ推進協会代表理事の斉藤圭祐さんと、ヨガインストラクターのエリカさん、まだ9ヶ月の愛娘。

(左から)エリカさん、いつでもニコニコ笑顔の娘さん、圭祐さん

(左から)エリカさん、いつでもニコニコ笑顔の娘さん、圭祐さん

圭祐さんは、広告代理店で勤務した後に独立。2019年にサステナビリティ推進を専門としたプロジェクトデザインスタジオ「CLAVIS HELICE」を設立し、自社で手がけるプロジェクトやサービスのほか、企業や自治体のサステナビリティ推進をバックアップしている。

また、2020年からは「一般社団法人日本サステイナビリティ推進協会」を立ち上げ、なにかを生み出すときには当たり前にサステナビリティの視点を持ってもらうことをミッションに、オンラインの講座や研修など実施している。

そのほか、自身のプロジェクトとして新しい石油由来の素材を使わないサーフブランド「Rinne Surfboards」のプロデュースや、葉山ではオーガニック&フェアトレードのコーヒーを提供するカフェ「LITTLE STAND HAYAMA」の経営など、サステナビリティに関わる活動を多岐に渡って行っている。

サーフボード

職人さんと一緒にアップサイクルしたセカンドハンドのサーフボード

LITTLE STAND HAYAMA

Photo by 斉藤圭佑さん

サステナビリティを実践する場所として、共同経営の3名でオープン。自然電力と契約し、100%再生可能エネルギーを使用している

斉藤さんは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でリモート仕事が増え、さらに今年はじめに娘が産まれたことをきっかけに、6月から自然あふれる伊豆へ移住した。

澄んだおいしい空気と鳥のさえずりに癒される、斉藤さん宅のゼロウェイストホームをさっそく紹介しよう。

「生ごみ」という概念をなくす

斉藤さん宅で使用している生ごみ処理機は、神奈川県の葉山町など湘南地域で販売されている「キエーロコンポスト」。裏庭に置き、野菜の切り端などを埋めて土に還す。

コンポスト

葉山在住時に購入。黒土と太陽、風を活かして生ごみを土に還す木製のコンポスト

ここ数年、日本では生ごみ処理機であるコンポストが普及し始め、自治体によっては補助金や助成金が出る場合もある。

それでもまだまだ、活用している人は少ないのが現状だろう。

野菜

野菜の皮や端っこは刻んでチャーハンにしたり、小麦と混ぜておやきにしたりと、なるべくごみを出さない工夫も

「2年ほど前に視察で訪れたスウェーデンでは、マンションには当たり前のように生ごみ処理機が設置されているし、住宅街にも常設されているところが多い。それを国では数十年前から実施していて、スウェーデン人は小さい頃から『生ごみはエネルギーだ』という概念が備わっている。日本ももっとそうなるといいですよね」(圭祐さん)

バス

Photo by 斉藤圭佑さん

バイオガスで走るバス

信頼している農家さんからオーガニック野菜やお米を

地産地消でオーガニック野菜が1番だが、時期によって北海道、青森県、山口県にある3つの信頼するオーガニック農家さんから配送してもらっている。

ちょうど取材日の前に届いていた野菜は、青森にある『雲谷(もや)ト森山農園』のもの。雪解け水を使用し、固定種や在来種だけを使った新鮮な無農薬野菜だ。包装はできるだけ新聞紙で最低限にしてもらっている。

野菜

小ぶりだがみずみずしさがあふれる野菜たち

「まったくゼロではないのですが、二人ともいまはあまりお肉を食べません。でも有機農家さんから取り寄せたお野菜が本当にパワフルでおいしいので、むしろ体調はいいですね」(エリカさん)

「僕はもともと週3で焼肉店にいくほどお肉が大好きだったので、かなり食生活は変わりましたね。いまではめっきり野菜中心です」(圭祐さん)

お米は玄米を取り寄せて、自宅で精米。その日の気分によって、3分づき、5分づき、と精米歩合を変えられる。

「精米したてだと、やはり味が違います」(圭祐さん)

ぬか漬け

精米機で精製した玄米から出た米ぬかは、ぬか床へ

ぬか漬け

自家製のぬか漬けはほっとする味

米

逗子にある米屋「ちんや商店」から無農薬のお米を取り寄せている

「米ぬかは、ほかにも水で少し溶かしてスクラブにできます。お肌がツルツルになるんです!」とエリカさん。

採ってきたドクダミの花を米焼酎に浸けてチンキにしたりと、どんなものもただ新しいものを買うのではなく、自然や天然のものを使って余すことなく使うことがモットーだ。

ドクダミチンキ

ドクダミチンキ。ミントや精油などを混ぜて虫除けミストにしたり、グリセリンなどと合わせればスキンケアとしても使える

無駄になりやすいベビー用品こそサステナビリティを意識して

「ベビー用品は本当にサステナビリティが難しい。いかにリユースできるか、長く使えるかを考えながら、妻とアイテムを探しました」(圭祐さん)

バウンサーは、新生児から大人になるまで使えるという「farska(ファルスカ)」の製品をメルカリで購入。縦に横にと置き方を変えたりシートの長さを調節したりできるため、「一生使えるイス」として注目されている。

「farska」の“一生使える”イス

「farska」の“一生使える”イス

歯固め

ウッドでできた歯固めは、オーナメントとしてずっと使えるものを

「子どもの成長は早いので、ベビー服はすぐ着られなくなる。お下がりサイトを見たり、リサイクルショップで古着を買うように心がけています」(エリカさん)

地球にも子どもの肌にもやさしいオーガニックコットンなど、自然素材にもこだわり、日本やニュージーランドのブランドなど、価値観の合うものを選択している。

おむつは、とくに大量のごみになりやすいが、布おむつにすることで、洗濯すれば何回でも洗える。でも、その手間が大変なのでは?

「汚れを少し落としてから、ほかの洗濯物と一緒に全部洗ってしまうんです。赤ちゃんの便の色は、紫外線にあてると消えるんですよ。だからそこまで汚れを落とすのは大変ではないんです。それに何事も、やっぱり習慣。

そしてなにより、赤ちゃんと便を通じたコミュニケーションが取れるのがいいですね。でも、本当に忙しい時や大変なときもあるから、その時は無理をしないことも大切。うちも、紙おむつと使い分けしています」(エリカさん)

愛用している「Disana(ディサナ)」「EcoNaps(エコナップス)」の布おむつは、カバー前面のスナップボタンが多数配置されていて、赤ちゃんの足回りにぴったりのサイズ調整ができる。新生児からおむつ離れするまで、赤ちゃんの成長に合わせて使えるのが画期的だ。

布おむつ

ディサナとエコナップスの布おむつ

“子どもや子どもがつくる家族の未来のために”が原動力

親子

そもそも、圭祐さんがサステナビリティに目覚めたのは何がきっかけだったのか。

「マーケティングやヘルスケア界隈で仕事をしていましたが、その時には普通にオーガニックという言葉を使っていたんです。

でもある時ふと、オーガニックがなにかということを全然知らないなと思ったんです。それで『オーガニックとは?』という話をたどっていったら、兵庫県にある丹波山奥の農家さんにご縁があって話を聞くことができたんです。

その方は、『IFOAM(国際有機農業運動連盟)』という組織のアジア理事をされていた方でした。農場の真ん中で、歴史や戦争、貿易や食文化、飼料のつくりかた、生物多様性などについてたくさんお話いただいて、『あっ、すべてはつながっているんだ!』と気付くことができたんです。

農場に野菜があり、平飼いの鶏がいて、鶏が食べる発酵のエサがあって……。循環を目の前で見ることができて、体感できたことが大きなきっかけです。社会人になって関わってはきたけれど、自分は何も知らなかったんだなと痛感しました」(圭祐さん)

その後にSDGsやサステナビリティという言葉に出会い、北欧への視察などで深く学ぶようになり、サステナビリティを推進する仕事以外はしないと決めた。

「やったことの影響まで責任を持てない仕事は辞めようと決意したんです。情報やコミュニケーションに携わる仕事が多かったので、何かを広めるという行為はとても責任があることだなと。それがもし、地球環境や社会によくないことだとしたらどうなんだろう、と考えました。

でも、『サステナビリティ』はいろいろな事柄を含むとても大きな概念です。行動に移そうとすると、いろいろ考えすぎてしまうので、私はいつも『誰かに、どこかに、しわ寄せがないか』というシンプルな問いを持って動くようにしています。

私自身は、人の意志の力を信じています。おかげさまで、いままで多くの優秀な方やおもしろいクリエイターに出会うことできました。いいアイデアやすばらしい想いが自然環境や社会へのマイナスにつながらないように、知恵をどうスライドさせるか? これが、いまの私のミッションです」(圭祐さん)

今年2月にはじめての娘が産まれたことで、より一層その想いは深まった。「子どもたちの未来の生活を守りたい」。その気持ちが、いまの活動の原動力にもなっている。

自宅近くの山道で

自宅近くの山道で

「子どもたち自身にも、知識を得るだけではなく自然に触れたりしながら、体感してもらいたい。それが自然豊かな場所に引っ越した理由でもあります。次はもっとローカルに、ファームなどにアクセスしやすい場への移住も考えているんです」(エリカさん)

「体験すること・体感することは大切ですよね。SDGsって、別に全部を覚えたりしなくていいと思うんです。身近にある食べ物がどうやってできるのか、3回くらい問いかけて掘り下げてみたり、ちょっと海や山にはいって観察してみたり。都市での生活や仕事だけが私たちの暮らしじゃない、と肌で感じてみるのが大事です」(圭祐さん)

最後に、サステナビリティにとって大切なことは? と質問してみた。

「どんな自分も認めて、相手も認めてあげること」と圭祐さん。

「自分はこんなに負担している、こんなにやっているのにと思うと、やっていない誰かを非難したくなる気持ちが生まれてしまう。だから、まず自分も含めて色んな人がいるということを認めてあげることが大切です。そのうえで自分自身はサステナブルな選択をしたいと思ったのなら、行動に移すだけ。

たった一人がマイボトルやエコバックを持つことは、意味がないことではありません。全体への影響のボリュームから見ると足りないだけです。SNSや消費を通した意思表明、投票、地域の活動への参加といった一人ひとりの行動の積み重ねが、やがて社会システムの本質的な変革につながっていく」

子どもたち、その子どもたちの家族、そしてまたその子どもたち……。彼・彼女らが見る未来は、どんな風景なのか。その風景は、いまを生きている大人たちがつくりだしているものだ。

「例えば、子どもたちが海に入れなくなる……。そんな未来にはしたくないですよね。サステナブルな選択することは特別なのではなく、子どもが産まれた自分にとっては当たり前。20年、30年先のためにできることを、少しずつ実践していきたいと考えています」(圭祐さん)

すべての源は家族への愛。まずは自分事にすることから始めることで、どんなサステナブルな選択をするか、考えやすいかもしれない。そんなことを改めて考えさせてくれた。

撮影/實重かおり

※掲載している情報は、2020年11月15日時点のものです。

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