アイルランド政府が「Buy one, get one for free(ひとつ買ったら、ひとつタダ)」や「Two for one(ふたつ買ってもひとつの値段)」などの広告キャッチコピーの使用禁止を検討している。それらの言葉がフードロスの原因になっているというのだ。
小嶋正太郎
農家 / 編集者
元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。
アイルランドはEU加盟国のなかでも、真っ先にサーキュラーエコノミーの実現を達成しようとしている。
9月初旬、政府は「アイルランド国家廃棄物政策2020-2025」を発表。プラスチック製品の使用規制だけでなく、使い捨てコーヒーカップに対する課税(ラテ税)を導入し、繰り返し使えるカップの利用率を上げようとしている。
そういった多くの施策が実施されるなか、同国の政府はフードロス削減対策として、斬新な取り組みを検討中。
セールで使われる広告キャッチコピーの禁止だ。
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循環型経済ともいわれるサーキュラーエコノミーは、さまざまな側面から対策をとる必要がある。いま同国の政府が考えているのは食品業界にかかわる取り組みだ。
具体的には、格安で商品を販売する際に使われる謳い文句の禁止。日本でも「まとめ買いがお得」「2点目半額」などの広告キャッチコピーを目にする機会は多いが、アイルランドでは「Buy one, get one for free(ひとつ買ったら、ひとつタダ)」や「Two for one(ふたつ買ってもひとつの値段)」などが対象になるという。
はじめて聞いたら少し驚くかもしれない。きっと多くの人が考えている予想を超えてくるのだから。そもそも使用禁止用語を設定するだけで、効果があらわれるかどうかも疑問だろう。
当たり前だが、もちろん政府も闇雲に施策を検討しているわけではない。背景にはしっかりとした理由がある。
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ダブリンに拠点を置く「The Irish Times」オンライン版の記事によれば、全体の30%のフードロスはセールに伴う謳い文句に起因しているという。これは、アイルランド国家廃棄物政策2020-2025を発表した通信・気候変動対策・環境大臣Eamon Ryan氏のスポークスマンが語ったものだ。
つまり消費者の多くはセールだからと食品を購入したものの、使い道がないために賞味期限をむかえてしまい、そのまま破棄しているということになる。多少の違いはあるかもしれないが、30%の理由には衝動的な行動が関係しているといえそうだ。
政府はこうした数字を証拠に「Buy one, get one for free」や「Two for one」など言葉を使用禁止にすることを検討。言葉による衝動的な行動がフードロスにつながっているとするならば、使用規制をかけるのも納得がいくだろう。
必要なものを必要な分だけ購入する。日本でも同じような施策が実施されないためには、地道で堅実な行動が鍵となるのかもしれない。
参照サイト/THE IRISH TIMES
https://www.irishtimes.com/news/environment/ban-on-two-for-one-food-deals-and-fines-for-not-separating-rubbish-are-being-considered-1.4346843
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