第2回:企業も取り組む自然エネルギー導入 自然電力が考える持続可能なビジネスとは

ゼロから始める自然エネルギー

自然エネルギー100%の世界の実現を目指す新電力会社・自然電力㈱の中の人に話を聞き、電力のことを深堀りしていく連載企画。第2回となる今回は、いま世界中の企業が取り組む自然エネルギー導入の事例や、これからの時代に求められるビジネスとサステナビリティの関連について聞いた。

監修者: 自然電力

太陽光・風力・小水力等の自然エネルギー発電所の発電事業(IPP)、事業開発・資…

「青い地球を未来につなぐ」を掲げ、日本全国でグループとして約 1 ギガワット(2019 年12月末時点)の自然エネルギー発電事業に携わっている。太陽光・風力・小水力等の自然エ…

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2020.10.09
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

自然電力から見た「ビジネスと自然エネルギー」

気候危機を自分たちの問題と捉え、いま世界中の企業が「自然エネルギー」の導入に力を入れはじめている。

それを象徴するかのように、2014年には、企業活動において使用する電力を100%自然エネルギーでまかなうことを目指す国際イニシアチブ「RE100」が制定された。GoogleやAppleなどのグローバル企業を筆頭に、CHANELやBURBERRYといったブランドも続々と加盟し、企業として自然エネルギーを選択することはスタンダードになりつつある。

2011年の東日本大震災直後に創業して以来、自然エネルギーの発電・小売事業に取り組んできた電力会社「自然電力」も、近年のこうした変化を身をもって感じている。切り替えのニーズは非常に多く、その企業の顔ぶれもさまざまになってきているという。

一般家庭の電力切り替えと比べて、企業となればオフィスや工場などをあわせた使用電力量は大きく、事業へのインパクトも少なからずある決断だ。それでも、自社の使うエネルギーに広い視野をもって向き合う企業が増えている。

自然エネルギー事業のパイオニアである自然電力の中の人に、今知りたい自然エネルギーのことを聞いていく全4回の連載企画。第2回目は、前回に引き続き自然電力 エナジーデザイン部ゼネラルマネージャーの大迫直志さんに、企業の自然エネルギー導入をテーマにお話を聞いた。

自然電力 エナジーデザイン部ゼネラルマネージャー 大迫直志さん

自然電力 エナジーデザイン部ゼネラルマネージャー 大迫直志さん

会社のビジョンを示す手段に 企業の自然エネルギー導入が一気に加速

2019年は、環境問題や気候危機対策への関心が一気に高まった年だった。世界的なムーブメントを受けて、意識が変わってきた企業も多いのではないだろうか。法人顧客からの声をダイレクトに受ける立場にいる大迫さんは、近年の空気の変化をこう振り返る。

「半年おきくらいに世の中の空気の変化を感じます。2〜3年ほど前は、自分たちが使う電力を具体的に再エネに切り替えようとされている会社は、サステナブルなコスメやファッションを展開する外資系ブランドくらいでした。

ところが、日本でも少しずつ取り組む大企業が現れはじめ、昨年のSDGsや気候変動マーチなどの盛り上がりで一気に『やらないと乗り遅れる』ようなムードになりました。老舗銘菓のような伝統産業の領域にまで、自然エネルギーへの切り替えの波は来ています」

数年前までは、「安くなるなら」と切り替えを選択するケースもまだまだ多かったが、近年はもはや「環境への危機意識や義務感」だけが行動の理由ではないという。人々を突き動かすのは、企業としてこれからの社会にどう向き合うかという未来への展望だ。

「やはりビジネスを展開するうえで『サステナブル』が重要なキーワードになってきています。次の世代に何を残すかを真剣に考えているかどうかは、企業としての存在意義にも直結します。

具体的には、化石燃料を使っていることがダイベストメント(投資撤退)の対象になったり、お客さんからも選ばれなくなったりということが世界ではすでに始まっています。外部からの見られ方を意識すれば、自ずと『自然エネルギーへの切り替え』という選択肢が上がってくるとも考えられます」

国際イニシアチブ「RE100」に取り組む企業たち

こうした企業の動きを語るのに欠かせない、「RE100(アールイー100)」という国際イニシアチブがある。「Renewable Energy 100%(再生可能エネルギー100%)」の意味で、企業活動において使用する電力を100%自然エネルギーで調達することを目指す企業が加盟するものとして、2014年に国際環境NGOによって制定された。

加盟企業は将来的にこの目標を達成しなければならず、その期限も宣言している。Google、Apple、Microsoftといったグローバル企業はすでにこの目標を達成済みだ。2020年9月時点で世界で約250社が加盟しており、そのうち38社が日本企業となっている。

「グローバル企業やコスメやファッションなどのブランド力が強い領域からはじまり、いまもRE100に加盟する企業は増え続けています。日本企業では、リコー、積水ハウス、アスクル、イオン、富士通など名だたる企業がリードしてくれています。

RE100に加盟することは、企業単独でのメッセージングという目的に加えて、多くの企業が集まることによって自然エネルギーの需要の高まりを可視化することで、政策決定者や発電事業者に自然エネルギーがより使いやすくなるように働きかけていくことに繋がります。やはり経済合理性がないと選択しにくい企業は多いため、より低価格で安定的に供給されるように、電力業界にたいしてプレッシャーをかけていくような意味合いもあるんです」

自社発電や証書購入を組み合わせ、企業にあった方法で取り組める

企業規模が大きくなるほど、電力を使用する場所や環境はさまざまだ。事業上、自然エネルギーへの切り替えができないこともあるだろう。たとえば、大型商業施設内のテナントとして店舗展開している場合、自社店舗だけの電力を切り替えることはできない。こうしたケースにあわせ、実は企業が取れる方法は多岐にわたる。

「RE100を達成するためには、電力の切り替えのほかにも、自社で使う電力を発電してしまうという方法もあります。大きく分けて、自社敷地内に太陽光発電パネルなどを設置するオンサイト、自社から離れた場所で発電したエネルギーをオフィスに流して賄うオフサイトの2つの方法があります。

最近は、複数の企業が共同で発電所を持つ『コーポレートPPA』という方法が注目されています。一社だけで持つのは大変なので、発電所を共同購入するような感覚で、そこで作った自然エネルギーを自分たちで分け合って使うやり方です。例えば、Googleが同じくRE100を宣言しているウォルマートやジョンソン・エンド・ジョンソンと手を組んで、大規模な自然エネルギーの電力購入契約を結ぶといった取り組みがトレンドになっているんです」

多様なアプローチが考えられるが、「そんな大規模なことはうちではできない」と考える企業担当者も多いだろう。逆に中小・ベンチャー規模の企業の場合は、証書購入の仕組みを活用することも、取り組みやすい選択肢のひとつとなる。

「証書購入は少し理解が難しい概念なのですが、たとえば屋根に太陽光パネルをつけて発電している企業Aがあったとして、そこで発電された電気を消費することで生まれる『CO2を削減したという価値』だけを取り出して、『環境価値』として証書化することができるんです。それを企業Bがお金を出して購入することで、企業Bが排出したCO2をオフセット(帳消しに)できるという考え方です。

環境価値は自分で使うことも可能ですし、最終的に必要な人が活用できる仕組みになっているんです」

未来はこの方向にしか進まない 再エネ100%への旅路を歩みはじめる人へ

滝壺にたたずむ女性

環境保護の観点を超えて、会社としてのメッセージングやコミュニティづくりにも寄与する自然エネルギーへの向き合い方は、これからの時代にビジネスを行う上で無視できない要素になるだろう。自然電力には、先日提携を発表したアウディ社のようなグローバル企業から、街の小さなクラフトビール工場まで、あらゆる方向から関心が集まる。大迫さんのもとには、どんなリアルな声が届いているのだろうか。

「最近は、現場の熱心な担当者に加えて経営者などトップの層が『自然エネルギーに切り替えるぞ!』と宣言して動いてくださっていることが多いと感じています。自然エネルギーは『未来はこうあってほしい、こうあるべきだ』と、サステナブルな世界を半歩先回りして発信するのにも有効なツールです。単純な経済性だけではなく、そうした気概をもって私たちの電気を選んでくれる企業が増えてきていますね。

あるWebマーケティングの企業は、既存の事業に加えて気候危機問題の解決をもうひとつの事業の柱にすると決め、社員向けの勉強会をはじめています。もともとの事業がサステナビリティや環境保護と親和性がなかったとしても、これから大事になるからということで新たに取り入れる企業も増えていますね。

当社の自然エネルギーを導入していただくという関係性であっても、目指している未来像が合っていれば、価格交渉だけのコミュニケーションにならず、『ぜひ一緒にやりましょう!』と言っていただけます。電気の小売事業者というよりも、未来を一緒に考えるパートナーとして接してくださるのは、嬉しいですね」

仕組みが複雑で難しそうという印象を持たれがちな企業の自然エネルギー化への取り組みだが、はじめから完璧に理解してスタートできる人はほとんどいない。さまざまな企業と接してきた大迫さんならではの言葉で、企業担当者の背中を押してくれた。

「僕が好きなのは、『再エネ100%への道は旅路みたいなもの』という考え方です。長い道のりなので、最初はできることからはじめてみて、証書やコーポレートPPAのような概念は取り組むなかで理解していけばいいと思います。

徐々に難しいものにもチャレンジしつつ、その取り組みにもストーリー性をもたせていきながら、最初の一歩さえ踏み出せれば、あとはもう前にしか進みません。一緒に進むことを決めてくれた企業様は、全力でサポートしていきます」

ビジネスを行うにあたりサステナビリティを考えることが当たり前になれば、自然エネルギー100%の世界の実現に向けた大きなステップとなるだろう。次回は、導入にあたり知っておきたいことを聞き、自然エネルギーに関するよくある疑問を解消していく。

記事監修/自然電力
https://shizendenryoku.jp/

※掲載している情報は、2020年10月9日時点のものです。

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