9月19日、20日の2日間、柏の葉T-SITE(千葉県柏市)にて「サステイナブルデイ」が開催された。主催はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。トークセッションやワークショップなど、さままざまな体験型コンテンツで会場を賑わせた。この記事では、ELEMINISTがプロデュースしたトークイベントとポップアップストアの様子を紹介したい。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
千葉県柏市は、都心に程近い場所でありながら、利根川の自然に育まれた緑豊かな土地だ。環境共生都市として生まれた「柏の葉スマートシティ」を中心に、低炭素社会の実現に向けた生活環境づくりに街全体で取り組んでいる。
2016年には、柏の葉スマートシティの開発計画が高く評価され、国際的な環境性能認証制度「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」の街づくり部門で、最高ランクとなるプラチナ認証を日本で初めて取得。世界トップレベルの都市環境を目指して、現在もさまざまな取り組みを推進している。
「柏の葉T-SITE」はスマートシティの一角に位置する複合商業施設として、2017年3月に開業。ファミリー向けイベントやワークショップの開催など、地域住民を巻き込んだイベントの開催を通して、環境を想うライフスタイルを提案してきた。
今回のイベント「サステイナブルデイ」は、サステナブル、エシカル、エコをキーワードに、参加者に“地球を想うはじめの一歩”を踏み出してもらうことを目的としたイベントだ。一人ひとりが今から取り組めるアクションを起こすことで、持続可能な未来が開けていくことを伝えるコンテンツがラインアップされた。
ELEMINISTプロデュースのトークセッションでは、1日目に発酵食、2日目には家庭菜園とコンポストをテーマに、サステナブルな活動家をゲストとして迎え、デモンストレーションも交えながら暮らしに取り入れやすい方法を提案した。
19日は発酵活動家の田中菜月さんを招き、発酵の基礎知識から、 手づくり発酵食を暮らしに取り入れるメリットをわかりやすく伝えた。
田中菜月さん
ショーの後半には、プラスチックフリーの食品用保存容器「stasher(スタッシャー)」を使い、米のとぎ汁を使った発酵おかず「水キムチ」をつくるデモンストレーションを行なった。
自身が体調を崩したことをきっかけに、体質改善を目指すようになり、ふとしたことから出会った発酵食にのめり込んでいったエピソードは、発酵食をより身近なものに感じさせてくれた。
「発酵というのは、先人たちが失敗を繰り返しできあがったものであり、失敗を恐れることはありません。失敗から新しい発酵食が生まれるかもしれないですね」というポジティブ思考や、デモンストレーションでは「自分が好きだと思うかたちに切ったり、味に整えたりするのがおいしく仕上げるコツ」という大らかさは、ビギナーが抱く「難しそう」というイメージを払拭してくれた。
発酵食について研究を始め、自身の行動範囲の広がりや人との出会いが増えたことで「自分も発酵をしているようだ」と嬉しそうに表現する田中さんの満面の笑顔が「発酵食を取り入れるライフスタイル」の魅力に参加者たちをますます引き込んでいった。
20日は、家庭用コンポストとして人気を集める「LFCコンポスト」を生み出したローカルフードサイクリング株式会社代表のたいら由以子さんと、NPO法人日本ホリスティックビューティー協会代表理事の岸紅子さんをゲストに迎え「はじめての家庭菜園とコンポスト」をテーマにトークを繰り広げた。
たいら由以子さん(写真左) 岸紅子さん(写真中央)
たいらさんの目指す社会のキーワードは「持続可能な栄養循環」。コンポストを通じて、栄養が含まれる生ごみを、植物に届く栄養素に変え、安全で健康な野菜を育てていくことが、栄養循環につながるとして活動を続けている。
一方で岸さんは、“美しさは、体の健康と心の健康に根ざす”と考える「ホリスティックビューティー」を軸に、医療費や介護費が膨らむ日本で、健康であることこそが社会貢献につながるということを伝え続けている。
岸さんも都会のマンションでコンポストを活用し家庭菜園を楽しむひとり。岸さんとたいらさんの実体験を交えながらのデモンストレーションは、コンポストをしたことのない人にも非常にわかりやすいものだった。
コロナ禍のなか家庭菜園を始めた人も多いと言われる通り、会場の参加者もコンポストと家庭菜園への興味が非常に高く、多くの質問が寄せられた。コンポストという小さな袋の中で、小さな生態系と循環が生まれることが、大きな社会の循環を考えるきっかけになると教えてくれた。
会場にはサステナブルなアイテムを販売するポップアップストアが並んだマーケットが登場。9月19日から10月31日まで開催される。「Sustainable Market powered by ELEMINIST」では、繰り返し使えてごみが出ない“ゼロウェイスト”な生活を提案。蜜蝋ラップやエコボトル、トークセッションで登場したstasherやLFCコンポストなどが並ぶ。
stasher/蒸す・焼く・温めるなどの幅広い調理に対応するプラスチックフリーの保存容器。100%ピュアプラチナシリコーンを原料に使用している。洗えば何度でも繰り返し使えるのが魅力。
aco wrap「ミツロウラップ」/ミツロウとオーガニックコットンでできた天然ラップ。ミツロウとホホバオイルには抗菌性と天然の保存性があり、食品の鮮度を長期間保てる。Made in Japanにこだわるaco wrapでは、染めから加工まで手作業でつくり上げている。
LFCコンポスト/生ごみを捨てない暮らしを手助けするLFCコンポスト。微生物の力で生ごみを堆肥(土の栄養)に変えてくれる。1〜3ヶ月間生ごみの投入が可能で、虫を防ぐファスナー付き。自宅の家庭菜園が循環型の小さなサステナブルファームに早変わり。
そのほかにも、100年続く京屋染物店のブランド「en・nichi(エン・ニチ)」のあずま袋や蜜蝋ラップ、使わなくなった布を裂き、緯糸として織る日本古来のリユース技術を生かした「幸呼来Japan(さっこらジャパン)」の裂き織アイテムや、世界中で収集した段ボールで作品を生み出した財布やコインケースが販売される店舗も並ぶ。
イベントのサブタイトルにもある「地球を想うはじめの一歩」が表す通り、サステナブルなライフスタイルに興味はあるがどう始めていいのかわからない人の一歩をサポートするよう、初心者にわかりやすいコンテンツが準備された今回の「サステイナブルデイ」。
2日間のトークセッションで活動家たちが伝えたメッセージの共通点は「楽しみながらやりましょう」の一言だった。食べ物が発酵して泡が出る瞬間、コンポストに生ごみを混ぜる瞬間、サステナブルアイテムを使って気持ちが高揚した瞬間、そうした一つひとつを楽しむことこそが、地球環境を想うことにつながる一歩に違いないのだ。そうしたアクションが数珠つなぎになり、社会の中で循環になっていくことこそ持続型社会の基盤だ。
小さく見える一歩も、多くの人がその一歩を踏み、長く続けていくことで、あっという間に長い距離の歩みを進めることができる。今回イベントに参加した人から、その友人や家族など周りの人へと「サステナブルな一歩の楽しさ」が広がっていってほしい。
イベントの様子は柏の葉T-SITEのYouTubeチャンネルで公開中
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