サステナビリティの先を行く「リジェネレーション」 なぜ持続可能では不十分なのか

いまサステナビリティに代わって、リジェネレーションという言葉が注目を集めつつある。なぜ新しい概念が登場したのだろうか。リジェネレーション注目の背景と、私たち一人ひとりに求められる考え方を紹介する。

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2020.09.30
EARTH
編集部オリジナル

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リジェネレーションの意味とは?

にんじんやきゅうりなどの野菜

Photo by Megan Thomas on Unsplash

リジェネレーションとは、直訳すると「再生」や「新生」。私たちにとっては環境再生型農業(リジェネレーティブな農業)がわかりやすいかもしれない。長期間に渡って土壌の改善を促し、空気中の二酸化炭素を吸収しながら食料を生産する。

日本ではなじみの薄くコンセプトも広がっていないが、ヨーロッパや米国のサステナビリティ関連の記事などでは、持続可能性を考えるだけでなく、その先の環境を再生することまで考える動きが急速に広がっている。

リジェネレーションとサステナビリティ

土と草

Photo by Roman Synkevych on Unsplash

いま、サステナビリティという言葉に変わって注目を集めつつあるのが、リジェネレーションだ。持続可能性が提唱するのは、従来型の経済モデルからエコ・環境配慮型のモデルへのシフトである。

しかし、それだけではマイナスがゼロに近づくだけで世界は変わらない。人類が地球に与えている負の影響はすでに限界で、もっと積極的にプラスを生み出していかなければ、持続することすら難しいと考えられるようになったからだ。

4つのリジェネレーション

太陽に向かって伸びる手

Photo by Maik Fischer on Unsplash

リジェネレーションは地球環境レベルの話だと思いがちだが、個人の生き方や組織のあり方に応用できる考え方でもある。

個人のリジェネレーション

世界を変えるには、自分自身を整えることから始めよう。サステナブルな個人でなければ、サステナブルな社会はつくれない。

健康な体と健康な心、そして自分のことだけでなく周囲のことを考えられる余裕を持ち合わせていることが前提に求められる。経済的な余裕や、時間的な余裕も必要だろう。

まずは家族や友人などの関係性から自分をとらえ、自分を受け入れるところから始めたい。

組織のリジェネレーション

コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響で、働き方や組織が大きく変わろうとしている。これをきっかけに日本でもテレワークやリモートワークが広がった。

従来型のスタイル方がやりやすいと考える企業もあり、緊急事態宣言が解除されると元に戻ったところもあるようだが、世界的に見れば緊急事態宣言中のニューノーマルな行動様式を歓迎する声は小さくない。

それは、これまでの組織構造やトップダウン式の指示命令系統のあり方が限界に来ていることを示す一端なのかもしれない。

組織がサステナブルであるためには、多様なメンバーがそれぞれ尊重され、自律性を発揮できる環境であることが求められるだろう。

畑の木柵にもたれかかる3人の男性

Photo by Science in HD on Unsplash

システムのリジェネレーション

環境だけでなく、経済、社会、教育、医療などのさまざまなシステムの再生が求められている。私たちの社会のそれぞれの領域は独立した存在ではなく、あらゆるつながりを持っている。

たとえば、メーカーは原材料の調達、製造、物流、販売を行っている。これまで企業は、売った後のことを考えなくても問題なかった。

しかし、これからはそれを回収、再生し、それに付加価値を加えるという経済活動も期待されるようになっていくだろう。

従来型の経済性や効率を最優先する分業システムではすでに不十分。ある一部分だけをとらえるのではなく、社会全体として循環できるシステムを構築していく必要がある。

地球のリジェネレーション

個人、組織、システムを包括する大きなレベルの再生が求められている。私たちが生きる地球と私たちの暮らしや経済のサステナビリティをどのように両立させるのか。

そこで注目されるのが、自然の叡智に学ぶ姿勢だ。たとえば、500系新幹線はカワセミのくちばしをヒントに考案されたと言われている。カワセミは餌をとるために水にもぐるが、水しぶきはほとんど飛び散らない。

これを新幹線に応用すれば、空気抵抗が抑えられて騒音対策になり、近隣に住む人はハッピーになる。こうした自然からアイディアを拝借するバイオミミクリーなどの考え方が、これまで以上に大切になっていくことは間違いない。

メガネに映る世界

Photo by Bud Helisson on Unsplash

リジェネレーションは、個人、組織、システム、地球のどのレベルでもすべての人に関係あるテーマだ。とりわけ、このたびの感染症の流行は私たちの社会システムの限界を見せつけた。

これからは、私たち一人ひとりにサステナビリティの文脈でどのように自分ごととしてとらえ、意味づけをしていく姿勢が求められるようになっているのではないだろうか。

おすすめしたい本

世界中で急速に広まりつつあるリジェネレーション[再生]の動きを説明し、定義した初めての本です。本書は「一世代で気候危機を終わらせること」を目的に書かれており、気候危機を防ぐために個人・団体ができる最も重要な行動と、2030年にCO2排出量を50%削減するための78の解決策を紹介しています。

※掲載している情報は、2020年9月30日時点のものです。

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