リジェネレーションとは「再生」や「新生」を意味する言葉で、いまサステナビリティに代わって注目を集めつつある。なぜ新しい概念が登場したのだろうか。リジェネレーション注目の背景と、私たち一人ひとりに求められる考え方、事例について紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
「藻」から化粧品づくりに挑むサキュレアクト ELEMINISTからアンバサダー10名が就任
Photo by Megan Thomas on Unsplash
リジェネレーションとは、直訳すると「再生」や「新生」。私たちにとっては環境再生型農業(リジェネラティブな農業)がわかりやすいかもしれない。長期間に渡って土壌の改善を促し、空気中の二酸化炭素を吸収しながら食料を生産する。
日本ではなじみの薄くコンセプトも広がっていないが、ヨーロッパや米国のサステナビリティ関連の記事などでは、持続可能性を考えるだけでなく、その先の環境を再生することまで考える動きが急速に広がっている。
Photo by Roman Synkevych on Unsplash
いま、サステナビリティという言葉に変わって注目を集めつつあるのが、リジェネレーションだ。持続可能性が提唱するのは、従来型の経済モデルからエコ・環境配慮型のモデルへのシフトである。
しかし、それだけではマイナスがゼロに近づくだけで世界は変わらない。人類が地球に与えている負の影響はすでに限界で、もっと積極的にプラスを生み出していかなければ、持続することすら難しいと考えられるようになったからだ。
サステナビリティの言葉以外にも、リジェネレーションはサーキュラーエコノミーともつながりがある。サーキュラーエコノミーとは、循環型の経済やシステムのこと。資源を使ってものを作り、それを使用して捨てて終わるのではなく、使用後は廃棄物を出さずに再び資源として利用していくシステムだ。そして、リジェネレーションはそんなサーキュラーエコノミーの一環といえる。
Photo by Maik Fischer on Unsplash
リジェネレーションは地球環境レベルの話だと思いがちだが、個人の生き方や組織のあり方に応用できる考え方でもある。
世界を変えるには、自分自身を整えることから始めよう。サステナブルな個人でなければ、サステナブルな社会はつくれない。
健康な体と健康な心、そして自分のことだけでなく周囲のことを考えられる余裕を持ち合わせていることが前提に求められる。経済的な余裕や、時間的な余裕も必要だろう。
まずは家族や友人などの関係性から自分をとらえ、自分を受け入れるところから始めたい。
コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響で、働き方や組織が大きく変わろうとしている。これをきっかけに日本でもテレワークやリモートワークが広がった。
従来型のスタイル方がやりやすいと考える企業もあり、緊急事態宣言が解除されると元に戻ったところもあるようだが、世界的に見れば緊急事態宣言中のニューノーマルな行動様式を歓迎する声は小さくない。
それは、これまでの組織構造やトップダウン式の指示命令系統のあり方が限界に来ていることを示す一端なのかもしれない。
組織がサステナブルであるためには、多様なメンバーがそれぞれ尊重され、自律性を発揮できる環境であることが求められるだろう。
環境だけでなく、経済、社会、教育、医療などのさまざまなシステムの再生が求められている。私たちの社会のそれぞれの領域は独立した存在ではなく、あらゆるつながりを持っている。
たとえば、メーカーは原材料の調達、製造、物流、販売を行っている。これまで企業は、売った後のことを考えなくても問題なかった。
しかし、これからはそれを回収、再生し、それに付加価値を加えるという経済活動も期待されるようになっていくだろう。
従来型の経済性や効率を最優先する分業システムではすでに不十分。ある一部分だけをとらえるのではなく、社会全体として循環できるシステムを構築していく必要がある。
個人、組織、システムを包括する大きなレベルの再生が求められている。私たちが生きる地球と私たちの暮らしや経済のサステナビリティをどのように両立させるのか。
そこで注目されるのが、自然の叡智に学ぶ姿勢だ。たとえば、500系新幹線はカワセミのくちばしをヒントに考案されたと言われている。カワセミは餌をとるために水にもぐるが、水しぶきはほとんど飛び散らない。
これを新幹線に応用すれば、空気抵抗が抑えられて騒音対策になり、近隣に住む人はハッピーになる。こうした自然からアイディアを拝借するバイオミミクリーなどの考え方が、これまで以上に大切になっていくことは間違いない。
Photo by Bud Helisson on Unsplash
リジェネレーションは、個人、組織、システム、地球のどのレベルでもすべての人に関係あるテーマだ。とりわけ、このたびの感染症の流行は私たちの社会システムの限界を見せつけた。
これからは、私たち一人ひとりにサステナビリティの文脈でどのように自分ごととしてとらえ、意味づけをしていく姿勢が求められるようになっているのではないだろうか。
アウトドアブランドでありながら、リジェネラティブ農業の取り組みを行っているのが、パタゴニアだ。同ブランドは「We’re in business to save our home planet.(私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む)」をミッションステートメントに掲げ、地球の健全性を守るための手段として、ビジネスを行ってきている。
パタゴニアは1996年から100%オーガニックコットンのみを使用するなど、農業を通じた環境改善に取り組んでいるのだ。
観光業のあり方でリジェネレーションを取り入れたのが、アメリカのハワイだ。ハワイでは世界でもいち早く、持続的な観光のかたちを進めてきた。「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」をスローガンに掲げ、観光客もハワイの地域の再生に貢献できるようなツーリズムを紹介している。
世界中で急速に広まりつつあるリジェネレーション[再生]の動きを説明し、定義した初めての本です。本書は「一世代で気候危機を終わらせること」を目的に書かれており、気候危機を防ぐために個人・団体ができる最も重要な行動と、2030年にCO2排出量を50%削減するための78の解決策を紹介しています。
ELEMINIST Recommends