トレーサビリティとは 推進の目的とメリット・事例などを解説

「トレーサビリティ」とは、商品の原料から加工、流通に至るまでのすべてを可視化できること。食品や医薬品、機械部品などの分野で使われてきた言葉だが、近年ではサステナブルな観点からも注目されるようになった。トレーサビリティの意味。メリットや事例ととも紹介しよう。

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2023.01.31

トレーサビリティとは

ディスプレイされたTシャツ

Photo by Keagan Henman on Unsplash

トレーサビリティとは、トレース(Trace:追跡)とアビリティ(Ability:能力)を組み合わせた造語で、日本語では「追跡可能性」という意味となる。食品や医薬品、自動車、電子部品などでは、トレーサビリティの確立は重視されている。

「チェーントレーサビリティ」と「内部トレーサビリティ」

トレーサビリティは、主に2つに分類できる。

チェーントレーサビリティ

「チェーントレーサビリティ」とは、原材料の生産・調達から、製造、加工、流通といったサプライチェーンの各段階を指す。企業や消費者は、どようなプロセスで商品がどのように出来あがってきているか、情報を得ることができる。

内部トレーサビリティ

「内部トレーサビリティ」とは、工場や事業所など特定の範囲におけるトレーサビリティを指す。チェーントレーサビリティはサプライチェーン全体を対象とするが、内部トレーサビリティはその一部分に着目する。

トレーサビリティの目的・必要な理由

トレーサビリティの目的を簡単にいうと、商品の信頼性を明確にすることだ。消費者にとっては、目の前に陳列された商品がどのような原料を使い、どのように加工・流通してきたのかが明らかになるため、安全性の判断がしやすくなる。

一方、生産者にとっては、もし不良品が出たとしても、原因の特定や回収を迅速に行えるようになるため、品質管理の向上や効率化などが期待できる。

トレーサビリティのメリット

スーパーに並んだ生鮮食品

Photo by Waldemar Brandt on Unsplash

消費者からの信頼を得られる

産地・流通情報を消費者に提供できるようになり、どこで、どんな材料で作られているのかわかりやすくなる。それによって、消費者からの信頼度が高まるだろう。

リスク管理できる

例えば、米や野菜、肉などの食品については、産地・流通情報を記録・保存することが法律で生産者や流通業者に義務付けられているため、産地偽装などの問題が発生したときに流通ルートを特定しやすくなる。

品質向上

製造業でも、トレーサビリティは重視されてきた。日本の場合、大手メーカーの下請けを担ってきた町工場では、製造される部品にシールを貼り、製造工程ごとにチェックを行う品質管理方法が伝統的に取られてきた。これによって、最終製品で不良品が出た場合で該当部品の所在を特定しやすくなり、日本の高品質なものづくりに寄与している。

サステナブルな観点でのメリットは?

広大な農地を耕すトラクター

Photo by Petim latifi on Unsplash

サステナブルな観点からも、トレーサビリティは重視されるようになってきている。トレーサビリティをサステナブル観点で見たとき、何ができるのか、どんなメリットがあるのかを見ていこう。

環境問題

トレーサビリティの観点から、製造・流通の全行程で、地球環境に配慮しているか、生態系の破壊につながる乱獲・乱伐を引き起こしていないか、などを確認できる。

代表的な取り組みに、「海のエコラベル」とも呼ばれるMSC認証がある。MSC認証は、持続可能な漁業を続けていくために、魚の漁獲量や時期、大きさなどを定めたり、他の生物がかかりにくい漁具を使うなどの取り決めを行う業者に与えられる。

MSCの審査は、漁獲だけでなく、水産物の加工・流通も厳しくチェックされる。MSCのマークが付いている商品は水産資源や海洋環境に配慮した商品だということがわかるため、消費者は安心して水産物を購入できる。

人権問題

商品がつくられて消費者に渡るまでのすべての工程で、学校に行くべき児童が労働に従事していないかどうか、開発途上国の女性が搾取されていないか、などを確認できるようにすることも、トレーサビリティの重要な役割だ。

例えば、「カルヴェン」や「ニナ リッチ」でディレクターを務めたギョーム・アンリが手がけるファッションブランド「Patou(パトゥ)」は、すべての服にQRコードが記載されたリーフレットを付けている。QRコードを読み取ると、生地の産地やつくった職人の名前、手入れの方法などを確認できる。

消費者は一着の服を買うまでにどのような工程で製造されたのかがわかるだけでなく、自分の買った服に対して愛情と責任を持てるようになる。

トレーサビリティのデメリット・課題

コストがかかり企業に負担となる

トレーサビリティを実施するためには、コストがかかる。企業にとって売上に直結するものではないため、その負担を負わなければならない。だが、メリットで挙げたように、トレーサビリティは消費者からの信頼を得たり、企業のイメージアップにつながるという側面があることを理解しておきたい。

現場の負担が増える

トレーサビリティを導入するには、現場の作業の負担が増えることが考えられる。特に中小などの規模が小さい企業では、これが導入へのハードルとなることが考えられる。

トレーサビリティを導入した事例

ファッション業界のトレーサビリティのガイドライン

サプライチェーンが複雑でトレーサビリティを導入するのが難しいと言われているファッション業界。だが企業やものづくりに透明性を求める昨今の社会的なニーズを受けて、ファッション業界でも、トレーサビリティを導入しようとする動きが出てきている。

ファッション業界にも透明性を トレーサビリティに関するガイドブック登場

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薬の製造元から患者に投薬するまで、すべてを追跡するトレーサビリティを導入する動きが、世界各国であるという。消費者や薬剤師が、個々の薬について、どこで作られたものなのか情報を得られれば、安全性も高くなると考えられる。

トレーサビリティを意識した消費行動を

もしあなたが「サステナブルな商品を買いたい」と考えるなら、トレーサビリティを意識して商品を選ぶようにしよう。商品が何を原料として使い、どのような環境でつくられ、どうやってお店までやってきたのか。トレーサビリティな商品であれば、原材料から製造、流通に至るすべての工程を追跡できる。

※掲載している情報は、2023年1月31日時点のものです。

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