分散型ホテルとは、街に点在する空き家などを改築し、ホテルとして活用する取り組みである。日本では地域活性化や空き家対策の観点だけでなく、観光客へ向けた新しい宿泊スタイルとしても注目されている。そんな分散型ホテルのメリット、デメリット、意味から、注目される背景について紹介しよう。
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分散型ホテルとは、点在する空き家や歴史的建造物をリノベーションし、ホテルとして活用する取り組みである。「町全体をホテルにする」というコンセプトのもと、飲食スペース、宿泊スペース、浴場などの設備や施設が地域内に分散している。
分散型ホテルは、イタリアで生まれた地域活性化の取り組み「アルベルゴ・ディフーゾ(分散型宿泊施設)」をモデルとしている。アルベルゴ・ディフーゾは、1976年にイタリア北部で大地震が発生した後、住人がいなくなった空き家を有効活用するために考え出された。
通常のホテルとは異なり、分散型ホテルは観光客を一つの建物に囲い込まない。観光客が街へ出ていきやすくなるため、街の飲み屋や土産物屋への集客に繋げやすく、街全体が儲かりやすいという利点がある。
また、分散型ホテルは古民家や空き家などを活用するケースが多い。新たにホテルを建てる必要がないため、景観を壊すことなく宿泊施設を増やせる。宿泊客にとっては、訪問先で街の住人になったような気分で宿泊できるというメリットもある。
分散型ホテルは、地域活性化や空き家問題の解決策として、いまとても注目される取り組みである。
分散型ホテルが増え、注目を集めている理由のひとつに、空き家が増加している問題があるだろう。とくに地方などでは空き家が増加し、そうすると地域が寂しい印象になる。そんな地域一帯を盛り上げるきっかけとして、分散型ホテルという方法があるのだ。
また分散型ホテルでは、空き家のほかに歴史的建造物なども利用することがある。残されてきたそのような資源をホテルとして利用することも、地域側のメリットとしてあるだろう。
分散型ホテルのメリットは、町全体を盛り上げられることにある。仮に一件の空き家が観光客を呼び込もうとしても、その効果はどうしても限定的になるだろう。しかし分散型ホテルなら地域全体で盛り上げて、観光客を呼び込むことができる。
また利用する観光客側から見ると、非日常を体験できて、地域の人々との交流も楽しめるだろう。その地域で暮らしているような気分でステイできる。
一方、デメリットは地域の連携がないと成立が難しいことだ。フロント機能を持つ建物、宿泊する建物、食事する建物など、それぞれで連携していないと、分散型ホテルとはならない。地域が協力してこそ、観光客にも温かな体験を提供できるだろう。
東京の都心にありながら古民家が多く、下町の雰囲気を色濃く残す谷中。hanareは、その谷中の街全体をホテルに見立てた宿泊施設だ。
チェックインと朝食は、築60年を超える木造アパートを改築した「HAGISO」という施設を利用する。宿泊や入浴には街の宿屋や銭湯を、レンタサイクルには街の自転車屋を利用する。工房などで行われるワークショップに参加することもできる。
観光地としても人気の谷中だが、地元民が多く通う飲食店や銭湯を実際に使うことで、観光地ではない、地元の人が生活を営む谷中本来の姿を堪能できる。hanareを運営するのは、株式会社HAGI STUDIO。同社の代表取締役である宮崎晃吉氏は、分散型ホテルを全国で推進している、日本まちやど協会の代表理事も務めている。
京都に初めてオープンした分散型ホテル。京都中心部の四条通と五条通の間に点在した五棟で構成されている。設備や客室数が異なるそれぞれの建物は相互利用が可能で、どの建物からでもチェックイン・チェックアウトできるほか、周回しながら楽しめるよう工夫されている。
陶芸作家である安藤雅信氏とコラボをした「ENSO ANGO FUYA I」や、ジムを併設した「ENSO ANGO FUYA II」など、個性的な5つの建物から構成される。内装のデザインを新進気鋭のさまざまなデザイナーが担当している。各拠点を回るだけで、ギャラリーとして楽しむことも可能なのだ。
デザイン性の高い建物だが、それぞれの建物は街に完全に調和しているため、ひと目見ただけでは宿泊施設だと気が付きにくい。そのため、宿泊客はまるで昔から京都に住んでいたような感覚になる。
イタリアのアルベルゴ・ディフーゾ協会から、正式に「アルベルゴ・ディフーゾ」であると認定されている岡山県矢掛町の宿泊施設。矢掛町は旧山陽道の宿場町で、いまでもその街並みを残しており、矢掛屋はそんな街の中心に位置している。
古民家を再生した本館や別館、食事処が半径200m圏内に立ち並んでおり、街の雰囲気を堪能しながら滞在できる。「うなぎの寝床」とも呼ばれる町屋ならではの細長い構造の建物や、伝統的な本瓦葺などを堪能できる。
別館では日帰り温泉を楽しむことも可能。地域の人も気軽に声をかけてくれるため、宿場町の情緒を楽しみながら、カフェや温泉を満喫できる。
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