古材を救って、その価値を伝える 古民家リノベーションの先駆け「リビセン」のいまに迫る

古民家リノベーションの先駆け「リビセン」ことリビルディングセンター

長野県・諏訪市のリビセンこと「ReBuilding Center JAPAN」は、古材や古道具を販売するリユースショップとして2016年9月に設立。近隣の古民家をリノベーションし、古材を用いた内装が特徴の店舗をいくつもオープンさせている。精力的に活動するリビセンが目指すものとは?

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト/PR

長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…

2023.03.22
SOCIETY
編集部オリジナル

美郷町だからできる自然と共生するサステナブルな暮らし

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古民家の風情を残したリノベーションプロジェクトで変わってゆく町並み

「ReBuilding Center JAPAN」代表・東野唯史さん

「ReBuilding Center JAPAN」代表・東野唯史さん。

リビセンと聞いて、ピンと来る人がいるかもしれない。2月にテレビ東京系列の経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』で紹介され、その名は全国へと広がった。

長野県・諏訪市に拠点を置く、リビセンこと「ReBuilding Center JAPAN(リビルディングセンタージャパン)」は、空き家から古材や古道具を引き取り、自分たちの手で掃除や手入れを行い、販売しているリユースショップだ。廃棄するのではなく、不要とされたものに新たな価値を与え、必要な人のもとへ届けることから「レスキュー」と呼んでいる。

彼らの活動はそれだけではない。諏訪や近隣地域に残されている空き家をリノベーションし、古材を用いた内装デザインを手がけ、カフェ、花屋、レコードショップ、本屋などに生まれ変わらせている。諏訪の町独特の風情を活かしたデザインが高い評価を生み、次々と店舗が増えている。ボランティア希望者、レスキュー希望者は増え続け、店内は常に盛況で県外から訪れる人も多いという。

古民家リノベーションの先駆けとも言えるリビセンだが、ここまで注目を集めている理由は一体なんなのだろうか? 2021年に紹介した記事から2年経ったいま、再び代表の東野唯史さんにインタビューを実施。リビセンの魅力を紐解いていく。

古材・古道具と次の持ち主が出会う場所 ReBuilding Center JAPAN

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「ReBuilding Center JAPAN」代表・東野唯史さん(右)と奥さまの華南子さん(左)

東野唯史さん(右)と奥さまの華南子さん(左)。

ー最近の主な活動を教えてください。

まず、店舗の1階にあるカフェを全面リニューアルしました。カウンターの位置を変え、床の高さも変えています。1つしかなかったトイレを3つに増やし、キッズルームもつくりました。あとは、天井も元の錆びた赤色から白に変えて、壁も断熱性能・耐火性に優れている珪藻土に塗り替えて色味を合わせました。

オープン当初はインダストリアルな空間でしたが、もっと古材を活かした空間として見せたかったんです。古材を使った内装を希望する人が来店した時にショールームのように参考になればと思っています。

ーカフェ以外にも近隣にかなりの店舗が増えましたよね?

最近で言うと、古書店の「言事堂/ことことどう」ですね。沖縄から移住してきた方がオーナーですが、もともと知人が所有する長野県の蔵に本を預けていたという経緯があります。妻の華南子が諏訪に本屋がほしいと願っていたこともあり、ソーシャルメディアに投稿したところ、それを見てくれてオープンに至りました。

「言事堂(ことことどう)」の店内

「言事堂」の店内。本だけでなく、棚や什器にも新たな価値が与えられ、風情ある空間を生み出している。

それ以外にも、長野朝日放送「abnステーション」のスタジオセットを古材でつくりました。2022年末に完成して、2023年の初めから番組から使われています。

長野朝日放送「abnステーション」のスタジオセット

長野朝日放送「abnステーション」のスタジオセット。機材に囲まれたハイテクな印象の強いテレビのスタジオセットも古材によって温かみが伝わってくる。

ー隣町の岡谷市にある「小さな泊まれる廻舞台 mawari」はどういった施設ですか? ステキなネーミングですね。

小さな泊まれる廻舞台 mawari」は一棟貸しの宿泊施設です。リノベーションが完成したのは2022年の夏になりますが、断熱材のない建物なので、冬は寒くて宿泊するのは難しいです。もとは、1850年頃の江戸末期の農村歌舞伎廻舞台で、40年前に解体されそうになっていたところを自腹で救った男性がいたんですが、75歳とご高齢で家族も誰もいらないということでリビセンが引継ぎました。

無償で譲っていただいたのはいいですが、電気、ガス、水道といったインフラが全く整ってないし、雨漏りもするので結局改装費用が2000万円ぐらいかかりました。でも、僕が引き継がなければそのまま解体されて産業廃棄物になってしまいますからね。僕ぐらいしかやる人はいないと思っていたし、使命感のような気持ちでやりました。

長野県岡谷市「小さな泊まれる廻舞台 mawari」

長野県岡谷市「小さな泊まれる廻舞台 mawari」

ー諏訪周辺にはそういった空き家が多いんですか?

多いですね。諏訪には空き家だけでなく、蔵も多いです。諏訪に移住を決めた理由も人口が減少していて空き家が増えている場所というのが大前提にありましたから。

ただ、近隣地域でも原村や富士見町はもう空き家がなくなってきています。軽井沢も一時期は空き家だらけで困っているという状況でしたが、みんながそこに目をつけたので、今では新築物件が多くなっています。山の自然の中で田舎暮らしができるという点でも人気なんだと思います。

長野県岡谷市「小さな泊まれる廻舞台 mawari」

小さな泊まれる廻舞台 mawari。江戸末期につくられた建物とは思えないほどモダンでスタイリッシュな内装。2023年3月17日から宿泊予約が可能とのこと。

ー他の地域から移住した人として、地元住民の方とはどのように交流を深めていきましたか?

それに関しては、とくに大きく苦労した点はないですね。スワテック建設という地元では有力な建設会社の建物をリースさせてもらっていることもあるかもしれません。スワテック建設は諏訪では一番大きな建設会社で、現在はすでに退かれてますが、社長が商工会議所の会頭だったということも大きいですね。

あとは、基本インディペンデントで行っている事業なので、地域の人を頼っていないという点もあります。ただ、移住者としてこの地域にお邪魔しているという認識は持っています。お盆の時期や日曜の朝には電動工具を使わないとか、そういったルールは決めています。最初は知らなかったので近所の方から指摘されてから設定しました。

ーいちばん苦労された点はどんなことですか?

設立当初にスタッフが定着しなかったことですね。労働環境が過酷な上に諏訪への移住が前提条件となります。現場仕事なのでリモートではできませんからね。そのため、1年ぐらいで辞めていってしまうことが多かったです。

多くの人から愛される理由とは?

リビルディングセンター

店舗1階のエントランス部分では、不定期でポップアップを開催している。

ー今となっては、ボランティアだけでもリビセンで働きたいという希望者がかなりいると聞いています。ここまで注目されることは想像されていましたか?

一応、狙ってはいましたが、想像以上になっているかもしれません。以前の取材時にも話していますが、リビセンの活動はポートランドにあるNPO団体「ReBuilding Center」がビジネスモデルとなっています。日本でリビセンを設立する際に自分の名前ではなく、ポートランドの「ReBuilding Center」の名前を使った方が浸透するのでは? と思ったんです。

何かを始めるときってメンター的なものがほしいじゃないですか? そう考えて、ポートランド店から許可を得て、ロゴもつくってもらいました。日本においては、ポートランドより僕たちのリビセンの方が有名になっているかもしれません(笑)。

あとは、タイミング良く世の中の流れに合っていることも理由の1つだと思います。ただ、リサイクルやアップサイクルはトレンド化され、飽和状態になっていると思います。中にはコンポスタブルとうたっているのに全然そうではないプロダクトさえあります。僕たちはその点において、一貫したポリシーで活動しています。

屋根に設置したソーラーパネルで自家発電をしたり、バイオマスエネルギーも使っています。建物を断熱することによってエネルギーコストを下げるなど、自分たちでできることをすべてやっています。レスキューにはトラックが必要ですが、ガソリンを使わないわけにはいかない、でも、それは世の中に電気で動くトラックが存在していないから仕方がないですよね。

もともとリビセンを設立した経緯が、古材の価値を広げないと日本の空き家や古民家がどんどん壊されてしまって、現代のプレカット住宅しか残らなくなってしまうという危機感からなんです。空き家や廃墟化したビルには資源となる古材が豊富にあります。それらを再利用することで産業廃棄物やごみの量を減らすことにもつながっていきます。そういった活動やビジョンに賛同してくれる人が増えたことは嬉しいですね。

ーここまで人を惹きつけている理由はなんだと思いますか?
スタッフとお客さんの立ち位置や温度感を大切にしています。事業を拡大することなく、小さなチームで個人のゲストハウスが持っているようなテンションやホスピタリティーを実現させたいと思っています。

リビルディングセンター

ーそれもサステナビリティーの一環ですよね。代表者の目や声が届く範囲で事業をやってるからこそ現場の声も届きやすいということでしょうか?

僕はそうは思いません。それより、各担当がリビセンのビジョンを深く理解して、それを実行できることだと思います。何より店のことを愛してくれていることが一番大切ですね。また、リビセンのような事業は人件費に一番お金がかかります。でも、それは雇用を生みやすいということでもあります。

リビセンは機械化しにくいビジネスなので、「人の手でなんとかするぞ!」というスタンスでやっていますし、スモールスタートでできる事業でもあります。

ポートランドのリビセンを知るまでは、個人のカフェのようにオーナーの目が行き届いていて、その人に愛されているのがいい空間だと思っていました。でも、ポートランドのリビセンは5000平米規模に従業員が40名ほどいて、ボランティアスタッフに限っては3000人もいます。それでも僕が理想とする”いい空間”ができ上がっているんですよね。

日本のリノベーションブームについて

リビルディングセンター2階に並ぶ小道具

レスキューしてきた多数の古道具が並ぶ2階。見やすい陳列と手頃な値段も人気の理由。

いま日本では空前のリノベーションブームというか、古民家や使わなくなった学校をリノベーションして文化施設にするプロジェクトがかなり盛んな印象を受けますが、その辺についてはどう思いますか?

正直言って、あまり他の活動は意識していません。ただ、以前は古材が好きとかカッコいいデザインだから依頼したいという人が多かったですが、最近では地球環境のために古材を使用したいという人や企業が増えてきたのは事実です。環境にいい活動をしているリビセンと関わりたいという人が増えました。20代30代の若い世代にとってそれがスタンダードな未来になっていくんだと思います。

今後やっていきたいこと、目指しているゴールなどがあったら教えてください。

最近ですが、リビセンと地元の不動産会社と信用金庫と合同出資で「まちづくり会社」を設立しました。僕たちがこれだけいろいろな店舗や施設をつくっても、まだこの地域の価値に気付いて新規参入してくる事業主の方は少ないですね。

個人店だと隣接した敷地や周辺の環境のことまで面倒を見ることは難しいですし、まず、地域内の価値のある空き家をきちんと活用すること、そして、新規参入が増えてきたらこの地域の価値を損なわないようにきちんとコントロールすることを目的に設立しました。

その一号店目として現在取りかかっているのが、4軒続きの長屋のリノベーション。2階にオフィスやアトリエスペース、1階に飲食店やアパレルが入居予定となっていて、今春オープン予定です。

リビセンで「ELEMINIST SHOP」のPOP UP SHOP開催

リビセン(リビルディングセンター)で開催されている「ELEMINIST SHOP」のポップアップ

POP UP SHOPは2023年4月11日(火)まで開催

「リビセン」こと、「ReBuilding Center JAPAN(リビルディングセンタージャパン)」で、2023年3月17日(金)から4月11日(火)まで、『ELEMINIST SHOP』のPOP UP SHOPを開催している。

ふだんはオンラインでしか販売していない『ELEMINIST SHOP』の商品を実際に手にとれる数少ないチャンス。ぜひ、この機会にリビセンに立ち寄ってみてはどうだろう。


ELEMINIST SHOP POP UP SHOP at リビルディングセンター
場所:ReBuilding Center JAPAN @rebuildingcenterjp
長野県諏訪市小和田3-8
期間:2023年3月17日(金)〜4月11日(火)
時間:11:00〜18:00 ※最終日4/11(火)のみ17:00まで
定休日:水・木

撮影:古厩志帆(「abnステーション」スタジオセット、POP UP SHOP画像を除)

※掲載している情報は、2023年3月22日時点のものです。

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