サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

2021年にヘルシンキで設立されたリセールプラットフォーム「Ninyes(ニンイェス)」は、従来の中古品販売サイトとは異なり、ブランドと提携し、自社製品のリセールを公式に展開できるように商品の回収から販売、発送までを一括して行うサービスを提供することで注目を集めている。

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト/PR

長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…

2026.06.18

エコデザイン規則「ESPR」によって変化するリセール市場

欧州のリセール市場は急速な成長を続けている。なかでもドイツはとくに活発な市場のひとつで、消費者の半数以上が過去1年間にオンラインで中古品を購入した経験があるという。

オンラインショッピングが日常化した現在では、新品だけでなく、誰かが着用したセカンドハンド商品をオンラインで購入することも一般的になりつつある。一方で、リセール市場の拡大に伴い、新たな課題も浮上している。

多くの中古品販売サイトはブランドの管理外で行われるため、商品の価値やブランドイメージが適切に維持されない可能性がある。また、取引が活発化しても、商品を生み出したブランド自身はその経済的価値の大部分を享受できていないのが現状だ。

こうした課題の解決を目指して誕生したのが、フィンランド・ヘルシンキ発のリセールプラットフォーム「Ninyesニンイェス)」である。

2021年に設立された同社は、「Resale-as-a-Service(リセール・アズ・ア・サービス、サービスとしてのリセール)」をコンセプトに掲げるブランド主導型リセール事業を展開。単なる中古品販売サイトではなく、ブランドが自社商品のリセールを公式に展開できるよう、商品の回収から販売、発送までを一括してサポートしている。

この仕組みによって、ブランドは商品の価値を維持しながら適切な価格でリセールを行い、ブランドイメージやポジショニングを守ることができる。また、購入者との接点を維持することで、顧客との長期的な関係構築にもつなげられる。Ninyesは、ブランドと消費者を直接結びつける新たな循環型ファッションのインフラとして注目を集めている。

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

Photo by Elina Niinisto © Laura Oja

発起人は、長年に渡り、サステナブルな子ども服の代理店やオンラインストアの運営を手がけてきたElina Niinisto(エリーナ・ニーニスト)とサステナブルなスタートアップの立ち上げやコミュニケーション業界でキャリアを築いてきたMikko Siukosaari(ミッコ・シウコサーリ)の2人。本インタビューでは、CEOを務めるエリーナにNinyesが提供するブランド主導型リセールと循環型ファッションの仕組みについて語ってもらった。

サステナブルファッションの専門家に聞くブランド主導型の仕組み

ー長年に渡り、サステナブルファッションに取り組んできた中で「Ninyes」を立ち上げたのはなぜですか?

私たちは、より多く生産し続けることを前提としたビジネスモデルから脱却したいと考えていました。市場にはすでに十分すぎるほど多くの新しい衣服が出回っていると感じていたため、循環型でありながら、利用すること自体が楽しいサービスを生み出したいと思ったのです。

ーESPR(エコデザイン規則)はこれまでファッション業界にどのような変化をもたらしたと思いますか。また、2026年7月に新たな要件が施行されますが、今後どのような変化を期待していますか。

ESPR(エコデザイン規則)は、ファッションブランドに自らの事業のあり方を見直すことを促し、より持続可能なビジネスへの転換を後押しする重要な節目だと考えています。また、ESPRは売れ残り在庫をより持続可能な形で活用するための制度であるだけでなく、多くのファッションブランドにとって新たな収益源にもなり得ます。

ESPR導入以前、多くのブランドは売れ残った商品を焼却したり廃棄したり、あるいはアウトレットでほとんど利益の出ない形で販売したりしていました。Ninyesのソリューションを活用することで、ブランド価値を損なうことなく売れ残り在庫を販売できる新たなチャネルを確保でき、同時に高い収益も期待できるようになります。

EU全体で「ファッション業界の売れ残り廃棄」禁止 2026年7月から

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ー2027年にデジタル・プロダクト・パスポート(DPP)が導入予定ですが、Ninyesではどのように組み込んでいく予定ですか。

すでに一部の提携ブランドとはDPPの活用を始めています。今後、各ブランドが独自のDPPを導入していくなかで、Ninyesもそれらと連携していく予定です。リセール市場では、素材や製造情報といった商品データだけでなく、その服がどのように着用・利用されてきたかという履歴を次の所有者へ引き継ぐことが重要だと考えています。

ーNinyesの最大の強みは何だと考えていますか。また、ブランドと消費者双方にとってのメリットや、競合との差別化ポイントを教えてください。

ブランドと消費者の双方にとって、Ninyesにはいくつもの強みがあります。ブランドにとって最大のメリットは、リセール事業に必要な機能を一つのプラットフォームで利用できることです。新品と中古品を同じショッピングカートで購入できる統合型の販売システム、ヨーロッパ全域での運営体制、高いリセール収益、そして導入しやすいプラグアンドプレイ型の仕組みなど、複数のリセールソリューションが提供する機能を一括で利用できます。

消費者にとっては、中古ファッションを売買するためのもっとも簡単で安全な方法の一つです。商品を売る際は、自分で写真を撮ったり出品作業をしたり、購入者が現れるのを待ったりする必要はありません。商品を梱包して発送するだけで、ほぼすぐに対価を受け取ることができます。また購入する際も、すべての商品が事前に検品されており、わかりやすい返品ポリシーが用意されています。品質や状態について予想外のトラブルに直面する心配がありません。

つまり、ブランドにとってはリセール事業を効率的かつ収益性の高い形で運営できること、消費者にとっては安心して売買できることが、Ninyesの大きな差別化ポイントとなっています。

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

ーNinyesではサステナブルブランドのみと提携していますが、ヨーロッパのファッションブランドの多くがサステナビリティを取り入れています。どのような基準でパートナーを決めているのでしょうか。

私たちは、長く着用されることを前提にデザインされ、リセール市場でも価値を維持できる商品をつくっているブランドとのみ提携しています。そのため、ファストファッションブランドや、年間に何度も大量のコレクションを発表するブランドとは提携していません。商品の寿命が長く、時代を超えて価値を保てることが、循環型ファッションを成立させるうえで重要だと考えているからです。

ー提携ブランドからはどのような反応が寄せられていますか。

ブランドからもっともよく聞かれるのは、2つの点に対する安心感です。1つ目は、リセール事業を始めても新たな運営業務がほとんど発生しないことです。ブランドはこれまで通りデザインや新品販売に集中でき、それ以外の業務は私たちが担います。2つ目は、多くのブランドが懸念していたような定価販売の売上への悪影響が見られないことです。

むしろ、商品の「信頼できる第二の人生」を提供することで、ブランドへのロイヤルティが高まる傾向があります。さらに、リセール事業はコストを上回る収益を生み出しています。高いサステナビリティ効果を実現しながら、同時に利益も生み出せる取り組みは、まだ業界内でも珍しい存在です。

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

Photo by Elina Niinisto © Laura Oja

ー不要になった衣服を送りたいユーザーの条件について詳しく教えてください。従来のリセールサービスでは、汚れやダメージのある商品は受け付けられず、デザイナーズブランドの商品でも古いモデルは低く評価されることがあります。ブランド公認のプラットフォームであるNinyesでは、古い商品の価値も保証されるのでしょうか。

価値が固定的に保証されるとは言えません。リセール価格は常に商品の状態、ブランド、そして市場での需要によって決まるからです。ただし、私たちが提携しているブランドの商品は、非常に高い価値維持率があります。実際に、10年から15年前に製造された商品であっても、現在なお高い需要があり、リセール市場で取引されているケースは少なくありません。

だからこそ私たちは、長く愛用されることを前提に商品をデザインしているブランドとのみ提携しています。重要なのは商品の新しさではありません。品質の高さと、時代を超えて愛される普遍的なデザインこそが、リセール価値を左右するもっとも重要な要素なのです。

ー現在、Ninyesは主にフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツで展開しています。今後さらに市場を拡大する予定はありますか。

日本の市場にとても興味があります。日本では中古市場そのものがすでに大きく成熟しており、「中古品に価値を見出し信頼する文化」が根付いています。しかし、ブランド自身が公式にリセールサービスを提供する「ブランド主導型リセール」は、まだ新しい分野です。

私たちは、そのギャップを埋めるお手伝いができればと考えています。私たちとともにブランド公式リセールの実証実験に挑戦してくれる、先進的な日本のファッションブランドと出会えたら素晴らしいですね。

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

ー廃棄をなくし、真のサーキュラーファッションを実現するためにもっとも重要な要素は何だと考えていますか。

ファッションブランドにとって、リセールが収益を生み出す明確なビジネスとして成立することが不可欠です。私たちは、将来的にリセールがブランド売上の最大10%を占める事業へと成長できると考えています。また、消費者にとっても、利用しやすく、安全で、経済的なメリットがある仕組みでなければなりません。

循環型ファッションを実現するためには、環境にいいだけでは不十分です。ブランドにとって利益があり、消費者にとっても便利で価値のある選択肢であることが重要だと考えています。

Bストックのリセールによって廃棄とコストを減らす

Ninyesは現在、パタゴニア、マリメッコ、Mini Rodini、Reima、Falla Finland など、環境や製品の長寿命化に取り組む約300のブランドと提携している。さらに、ESPRへの対応を見据え、欧州初となるBストック向けリセールサービスのパイロットプロジェクトも開始した。

Bストックとは、返品された商品や軽微な使用感がある商品など、新品として販売できない在庫を指す。従来、このような返品在庫は廃棄されたり、素材リサイクルに回されたりするケースが少なくなかった。

しかしNinyesでは、それらの商品をリセール市場で再販売することで、新たな収益源へと転換している。これによりブランドは売上を確保できるだけでなく、返品処理や在庫保管にかかるコストの削減も可能になる。

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

実際に、フットウェアブランドの VIBAe では、従来であれば廃棄またはリサイクルされる予定だった返品シューズ約600足を対象にBストックリセールサービスを導入。その結果、ブランドの年間売上高が約1%増加したという。本来は価値のない在庫と見なされていた商品が、新たな収益を生み出す資産へと変わったのである。

サーキュラーファッションを目指すヘルシンキ発リセールプラットフォーム「Ninyes」

ESPRの施行によって、売れ残り在庫の処理はもはや環境問題だけでなく経営課題となりつつある。Ninyesが提示するのは、廃棄を減らすための仕組みではなく、これまでコストと見なされてきた在庫を新たな収益へと変えるビジネスモデルとして、今後ますます注目されていくだろう。

※掲載している情報は、2026年6月18日時点のものです。

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