使用済みペットボトルから治療薬をつくる 微生物の力でアップサイクル

ペットボトル

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私たちが日々手にするペットボトルはリサイクルされているものもあるが、焼却や埋め立て処分されるケースも少なくない。英国の大学が、そんな環境負荷の“象徴”とも言える廃プラからパーキンソン病治療薬を生み出した。微生物のチカラを借りて、ごみが人の健康を支える未来が来るかもしれない。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2026.04.06

ペットボトルがパーキンソン病の治療薬に

英国のエディンバラ大学の研究チームは、ペットボトルの原料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)をパーキンソン病の治療薬として知られる「レボドパ」に変換することに成功。3月16日発行の学術誌「nature sustainability」で研究論文を発表した。

研究チームはまずPETを分解し、これを遺伝子組み換えを行った大腸菌に与え、複数の酵素反応を経て、レボドパに変換した。

パーキンソン病は手足の震えや筋肉の硬直などが起こる病気で、体の動きに関わる神経回路がうまく機能しなくなる神経疾患だ。

プラスチック廃棄物から神経疾患の治療薬を生み出すために、生物学的プロセスが用いられたのは今回が初めて。

使用済みのプラスチックで医薬品をつくることは、一般的な医薬品の原料である有限な化石燃料に頼るよりも持続可能だといえるだろう。

「バイオアップサイクル」が資源の価値を変える

生物のメカニズムを解明し応用する「バイオテクノロジー」は、先人らが自然とともに生きるなかで培ってきた発酵技術から、近代的なゲノム編集に至るまで、私たちの身近な暮らしや産業で活かされてきた。

それらの技術を基盤にいま、高付加価値な素材や製品に変換する「バイオアップサイクル」と呼ばれる分野に進展。廃棄物削減と環境負荷低減、さらには資源循環の経済化を実現する技術として、社会実装が進められている。

今回の研究を率いた、エジンバラ大学のスティーブン・ウォレス教授は「プラスチック廃棄物は環境問題として捉えられがちですが、同時に膨大な未利用の炭素源でもある」と話す。

これまでにウォレス教授は、プラスチック廃棄物からバニラの香料分子であるバニリンに変換する研究も行っており、この成果をもとに2023年には実験的にバニラアイスクリームがつくられた。

このように、医薬品、香料だけでなく、香水、化粧品、動物飼料といった、石油系化学製品から合成される物質の代替となることが期待される。

バイオアップサイクルをプラスチック汚染という喫緊の課題に対する解決策とみなすのは時期尚早かもしれないが、「廃棄物」が「資源」になり、循環する社会に不可欠な技術となりそうだ。

ペットボトルの先にある未来は、私たちの想像以上に大きく広がっているのかもしれない。

※掲載している情報は、2026年4月6日時点のものです。

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