インドネシアで「象乗りを禁止」 動物福祉でアジア初の決断

ゾウの親子

Photo by Circe Denyer on Unsplash

インドネシアで、象乗り体験が禁止された。動物福祉への関心の高まりを背景に、バリ島を含む全保護施設で終了。国単位での禁止措置はアジアでも初めてのことで、注目が集まる。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2026.03.02

象乗り体験を禁止 広がる動物福祉への意識

かつて、東南アジアのリゾート地で定番だった「象乗り体験」。このアクティビティが、インドネシアで全面的に禁止されることになった。これにより同国は、アジアで初めて象乗りを禁止する国となる。

インドネシアには、絶滅危惧種のスマトラゾウやボルネオゾウが生息している。こうした野生動物の個体数が減少するなかで、インドネシア政府は2025年末、国内すべての保全・観光施設に対し象乗りの禁止を発表した。2026年初めから順次、各施設の順守状況を監視している。

この影響がとりわけ大きいのは、年間約700万人の外国人観光客が訪れるバリ島だ。しかし、バリ動物園を含むバリ島の全保護区で、2026年1月末までに正式に象乗りが禁止されている。バリ自然資源保護庁によれば、順守しない施設は営業許可取り消しのリスクがあるという。

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世論の高まりが後押し

禁止に踏み切った背景には、動物福祉への国際的な関心の高まりがあった。

2025年11月、動物愛護団体の「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」は、バリ島で観光用の象が日常的に鎖でつながれ、鋭利なフックで叩かれて服従させられている実態を公表。象乗りのための訓練が、象に対して身体的・心理的な負担を与えていると指摘した。

また、インドネシア国内の人々の間でも問題提起が広がり、バリ島を中心にこのような施設を関係当局に知らせるため、多くのインドネシア人がSNSを活用した。こうした世論の高まりが、政府の決断を後押ししたとみられる。

象乗りは、動物福祉の研究者や専門家のあいだで、有害な行為だと広く認識されている。人を乗せることに慣れさせる過程では、痛みや強いストレスを伴う訓練が行われる例が多いほか、水浴びのような自然な行動も制限される。結果、象の心身へのダメージが長期間におよぶ可能性が大きい。

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「触れない観光」への転換

象乗りを廃止することによって、これまで行われてきた訓練が不要になった。象は、仲間と過ごし、草を食べ、水浴びをするといった本来の行動に、より多くの時間を充てられるようになる。

インドネシア政府は現在、保護施設に対し、動物福祉を最優先とする運営を行うよう求めている。訪問者には教育的なプログラムを提供し、直接触れ合うのではなく、野生動物の自然な姿を尊重した観察型の体験へと軸足を移す方針だ。

一方で、象乗り体験は、アジアの他地域では依然として主要な観光アトラクションの一つになっている。なかでもタイは、最大の「象乗り」推進国。

PETAアジアのジェイソン・ベイカー代表は、今回の禁止措置が「象の扱いを改善する大きな一歩」だと表明しつつ、「タイ政府のほか、ネパール、ラオス、インドを含む国々にも、インドネシアの先例に続くよう強く求める」と述べている。

インドネシアの禁止措置は、訪れる旅行者にも意識の変化を促す。写真映えする体験よりも、動物の暮らしに目を向けること。今回の決断は、従来の観光のあり方を見直す転換点になるだろう。

※掲載している情報は、2026年3月2日時点のものです。

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