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災害が起きたときの備えはしていても、見過ごしがちなのが子どもの視点に立った防災。本記事では、子ども目線での防災の重要性から、子どもと一緒にできることとして、非常用持ち出し袋に入れる防災グッズや防災の基本を紹介。さらに災害時の心のケアなど、子どもを守るための工夫も紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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地震、台風、洪水、山火事、火山噴火などの自然災害は、いつ、どこで起こるかわからない。おまけに、近年の気候変動によって、自然災害の頻度は増加傾向にある。
そこで考えたいのが、家庭での防災だ。とくに子どもがいる家庭では、身体的にも精神的にも大人より弱い立場にある子どもの目線に立った防災を考える必要がある。子どもの年齢によって、非常用持ち出し袋に用意するべきものも異なる。
さらに、災害がもたらす大きな恐怖や不安は、子どもの心に大きな影響をもたらす可能性がある。加えて、緊急時は大人も切羽詰まった状況に置かれて、ふだんのように子どもに注意を向けにくいこともあるだろう。
子どもを守るためには、まずは大人が正しい知識と備えを持つこと。そして、子どもに寄り添ったかたちで防災を伝えることが大切だ。
日本は災害が多い国で、子どもにも防災の大切さを伝えていこう。その際、怖がらせるのではなく、「なぜ必要なのか」をわかりやすく、やさしく伝えよう。
・なぜ防災が必要か伝える
「もしもの時、命を守るためのおまじないだよ」といった、ポジティブな言葉で伝えよう。さらに備えをしておくことで、万が一のときに身を守れることをメッセージしよう。
・災害の種類と特徴
子どもの年齢に応じて、地震、津波、火事、大雨など、どんな災害があるのか説明しよう。また災害の種類によって対処や避難方法も異なることを伝えよう。
・子どもに伝えるときのポイント
「揺れたときはどうする?」「雨がたくさん降ったらどうする?」のように、質問形式で子どもも楽しく学べるようにしよう。そして、災害が起きても「準備すれば安全」というポジティブなメッセージを伝えよう。
子どもに防災を教えるときにおすすめなのが、「仙台防災枠組」。これは、2015年に世界各国の政府が仙台市に集まり、国連防災世界会議の場で決められたもの。自然災害が増えるなか、各国が防災の重要性に目を向け始めており、そのなかでも子どもの視点に立ってまとめられたものが含まれる。ゲームやパズルなどを取り入れながら、防災について学べる(※1)。
非常用持ち出し袋の中身は、大人と子どもで必要なものが異なる。また子どもの年齢によっても、必要なものは変わる。下記のリストを参考にしてほしい。
そして、一緒に用意できる年齢の子どもなら、非常用持ち出し袋の準備はぜひ親子で一緒に行おう。家族や友だちとの災害時の生活を想像しながら、子ども自身が必要なものを選んで準備することで、子どもの安心感につながり、避難時のストレス軽減にもきっと役立つはずだ。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが提案するチェックリストは以下のとおり(※2)。
1 | 水 |
---|---|
2 | 非常食・おかし |
3 | タオル |
4 | 着替え |
5 | 歯磨きセット |
6 | レインコート |
7 | カイロ |
8 | マスク |
9 | 救急用品・常備薬 |
10 | ウェットティッシュ・除菌ジェル |
11 | ポリ袋 |
12 | 給水袋 |
13 | 懐中電灯・ヘッドライト |
14 | ラジオ |
15 | 電池・充電器 |
16 | マッチ・ろうそく・ランタン |
17 | 軍手 |
18 | 新聞紙 |
19 | ガムテープ・油性ペン |
20 | レジャーシート |
21 | 万能ナイフ |
22 | 貴重品 |
23 | 本・カードゲーム |
24 | 安心できるもの・大切なもの |
上記のリストを参考に、子どもの年齢にあわせて以下のものも加えよう。
乳児 | 粉ミルク、哺乳瓶、離乳食、オムツ、おしりふき、おんぶ紐、おしゃぶり、母子手帳のコピーなど |
---|---|
幼児 | 好きなお菓子、おもちゃ、絵本、塗り絵、使い慣れたお皿やコップなど |
小学生 | 筆記用具、連絡先カードなど |
忘れずに入れてほしいのが、子どものこころを落ち着かせられる愛用グッズ。例えば、お気に入りのぬいぐるみ、いつも使っているタオル、愛用の絵本などだ。これらがあることで、非常時の子どもの不安を和らげるのに役立つだろう。
子どもと一緒に確認しておきたいのは、災害が起きた際の行動ステップ(※4)。
(1)身を守る
モノが落ちてきたり倒れてきたりしない場所で、頭を守って身を守る
机やテーブルの下に入れるなら入る
何もないときは手で頭を守って体を丸めてダンゴムシのようなポーズをとる
(2)火を消す
調理中やストーブを使用中の場合、可能であれば火を消す
ただし危険な場合は無理をせず避難を優先する
(3)避難する
落ち着いて避難場所に移動する
火事が発生したら、煙をすわないように体を低い姿勢にして、ハンカチなどで口をおさえる
大声を出して周囲に助けを求めることも教える
家のなかの安全な場所を親子で一緒に見て確認しよう。また、小学生など、災害時に子どもと親が離れた場所にいることがあり得るなら、集合する場所を決めておこう。緊急連絡先を確認したり、子どもと一緒に災害伝言ダイヤルの使い方を練習したりすることもいいだろう。
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大人であっても、災害が起きたときは大きな不安に見舞われるもの。子どもならさらに大きな不安を覚えるだろう。避難場所で過ごすことになれば、慣れない環境に加えて、食事やトイレ・入浴といった日常生活も大きく変わる。友だちと離ればなれになったり、騒音に悩まされたりすることもあるかもしれない。
避難した際は、日常生活が一変する。だからこそ、「日常を再現する工夫」が大切だ。例えば、ふだんと同じ時間に食事をしたり、寝る前にはいつもと同じように読み聞かせをしたりするだけでも、子どもは安心感を得られる。とくに、ぬいぐるみや絵本など、子どものお気に入りのグッズは、こころの支えとなるため、ぜひ非常用持ち出し袋に入れよう。
「避難所で遊ぶなんて……」と不謹慎に感じる大人がいるかもしれないが、子どもにとって遊びは日常生活の一コマであり、遊ぶことでエネルギーを発散し、不安を和らげ、日常の感覚を取り戻すことができる。また、知らない子ども同士でも交流を生んで、孤立を防ぐ。
実際、日本ユニセフは災害時の子どもをサポートするために、子どもたちが自由に遊べるような「子どもにやさしい空間」づくりを提案している(※3)。
また、遊びを通して子どもたちに笑顔が生まれれば、それは大人のこころを和ませることにもつながる。非日常の場面でできる遊びは以下のサイトを参考に。
大人でも子どもでも、サポートが必要なときにそれをうまく表現したり、人に伝えたりすることが難しい場合がある。そんなとき、ふだんとは違う行動を起こしているかもしれない。子どもの小さな変化に周囲の大人がいち早く気づき、子どもの目線にあわせて声をかけてあげることが大切だ。子どもの話をじっくり聞いて、共感するだけで、子どもの気持ちが落ち着くこともあるだろう。
セーブ・ザ・チルドレン「子どものための心理的応急処置(子どものためのPFA)」の動画(下記)を参考にしてほしい。
子どもと一緒に非常用持ち出し袋を用意したり、家のなかで安全な場所を確認したり、防災をふだんの生活で取り入れることで、万が一、災害にあったときの「非日常感」を軽減できるだろう。
「災害時=非日常」に備えるのではなく、災害時(非日常)と日常の垣根をなくしたのが「フェーズフリー」の考え方。その考えにそって、ふだんから防災について親子で話したり確認したりすれば、もしものときの子どものストレスを減らすことにつながるはずだ。
子どもを含め「誰一人取り残さない」備えは、国際社会が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の理念そのもの。災害時に子どもを守ることは、未来の世代を守ること。今日からできる小さな備えや工夫をぜひ始めてみよう。
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