防災を非日常にしない「フェーズフリー」という新しい概念とは

天災被害の現場

日常時と非常時の垣根を取り払うフェーズフリー。防災に役立つ商品やサービスを日常生活に取り入れることによって、防災意識を高め、社会の安全性を育むことを目指した新しい価値観だ。今後はフェーズフリー認証を取得した商品やサービスの普及が期待される。

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2020.11.24
SOCIETY
編集部オリジナル

KDDIのつなぐストーリー vol.3|災害時こそ“つながる”ことを目指して

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日常になじむ防災 フェーズフリーとは

衝突して破損した車

Photo by Michael Jin on Unsplash

フェーズフリーとは、日常と災害時のどちらの場面でも便利に活用できるモノやサービス、そのアイデアや概念のことを意味する。

地震や台風などの自然災害が多い日本は、世界で有数の災害大国であり、災害への備えは欠かせない。しかし実際、大きな災害直後には社会的な防災意識が高まるが、ある程度時間が経つとその意識は薄れていくものだ。

その理由として、実際に自分が災害に遭ったときにどのようなことが起こるのか、またどのようなものが必要なのか想像しにくいことが挙げられる。また、「防災グッズ」というものはふだんはしまわれ、非常時にのみ取り出して使うものだ。人々にとって災害はまだまだ非日常であり、日常的に防災を意識することは難しいと言える。

フェーズフリーはそんな日常と非日常(災害時)の垣根を取り払い、日常的に防災を意識する仕組みづくりに取り組む。例えば、災害による停電時に発電機や充電器として使える車や、笛やソーラーライト付きの社員証、避難時に重要な土地勘や人とのつながりを生む商店街のスタンプラリーなどもフェーズフリーとしてカテゴライズできる。

広がるフェーズフリーの価値観

現在、さまざまな企業や団体、または個人がフェーズフリーという価値観に賛同している。そのなかでも、実際にフェーズフリーとして商品化やサービスの提供がされた実例を紹介したい。

プリウスPHV

トヨタ自動車株式会社が開発する「プリウスPHV」は圧倒的な低燃費を実現したハイブリットカーだ。大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、ガソリンエンジンと電気モーターの2つの動力源を持つ。車内には二カ所のコンセントがあり、避難時や停電時には蓄電池・発電機として活用できる。これなら避難生活による車内泊も快適に過ごせそうだ。

ストークUSB

株式会社リーフライトが開発した、太陽発電による電力供給が可能な「ストークUSB」は、電力インフラから影響を受けないため、災害時や停電時にもソーラーパネルから電力を集め、照明や電源として利用できる。

支柱のUSBコンセントから充電ができ、バッテリーは長寿命なリチウム電池を採用している。取り付けも配線工事が不要で、通常時は防犯灯として利用が可能だ。

ボンカレーGRAN

大塚食品株式会社が販売している「ボンカレーGRAN」は、保存料・合成着色料・化学調味料を一切使わず、すべての具材に国産野菜を使用したレトルトカレーだ。調理する時間がないときはもちろん、登山やキャンプなどのお供にも便利。

保存や持ち運びがしやすく、常温でもおいしく食べられるため、避難生活中に電気やガスが使えない時でも手軽に食事ができる。

防災意識と社会の安全を育むフェーズフリー

事故で駆けつけた救急隊員とけが人

Photo by Kilian Seiler on Unsplash

フェーズフリー協会では、商品やサービスが日常時と非常時のどちらの場面でも価値を持つことを証明するための認証制度、「フェーズフリー認証」を実施している。審査基準は以下の5つの原則に基づく。

・どのような状況下でも利用が可能な「常活性」
・ふだんの生活で使える「日常性」
・年代問わず誰でも使い方がわかる「直感性」
・使用することで災害に対する意識やイメージが生まれる「触発性」
・誰でも気軽に参加し広めることのできる「普及性」

審査の結果、フェーズフリー認証を取得した場合には「PF認証マーク」を商品本体やパッケージ、パンフレットなどに使うことができる。

フェーズフリー認証を受けた商品やサービスが世の中に多く普及すれば、人々の災害対応力は向上し、社会全体の安心や安全を確保できるかもしれない。ただ、認証を受けた商品やサービスは現在21件と少なく(2020年11月時点)、フェーズフリーといった概念や言葉自体が多くの人に知られていないことは事実だ。

災害の悲劇を繰り返さないためにも、今後フェーズフリーが社会に浸透・普及していくことを期待したい。

※掲載している情報は、2020年11月24日時点のものです。

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