米議会がメルカリなどの再販企業支援へ 中古品市場の活性化を目指す

ハンガーにかかったシャツ

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子ども服を中心に急成長を続ける中古品市場。アメリカでは、その拡大を後押しするための超党派の議員連盟が発足した。国をあげた取り組みにより、今後の制度整備と市場拡大の動向に注目が集まっている。

鴨井里枝|Rie Kamoi

ファッションライター/エディター/ジャーナリスト

イギリスの美術大学でグラフィックデザインを学び帰国後、ファッション週刊紙「WWDJAPAN」の編集部に約10年在籍。ファッションビジネスやトレンドの分析を主に、海外ではNY、ミラノ、ロン…

2025.07.30
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“安さ”だけでない、中古品の社会的価値に着目

アメリカの連邦議会で、中古品市場の活性化を目指す議員連盟「リコマース・コーカス(Recommerce Caucus)」が設立された。ファストファッションや大量消費の見直しが進むなか、サステナブルな消費行動として注目を集める中古品市場の拡大を後押しするかたちだ。

連盟の目的は、リコマース(リセール)という一度消費者の手に渡った中古品を再び販売・流通させるビジネスモデルをアメリカ国内の経済と環境政策の中心とすること。「モノを繰り返し使うことが廃棄を減らし、持続可能な未来をつくる」という価値観のもと、eBayやDepop、Poshmark、Etsy、メルカリといった大手中古取引プラットフォームの支援も検討するなどし、消費者と販売者双方が参加しやすい制度設計を目指す。

政策案には、「中古品への消費税の軽減または撤廃」「サーキュラービジネスを行う中小企業への税制優遇や規制緩和」「気候変動対策としてのセカンドハンド促進」を掲げている。

環境団体や業界関係者は、「単なるフリマアプリの促進ではなく、気候危機や大量廃棄に向き合う構造改革の一環として重要な一歩」と評価している。

メルカリ「消費行動の変化を捉えた政策に敬意」

メルカリの山田進太郎CEOは、この動きについて以下のようにコメントしている。

「私たちは“あらゆる価値を循環させることで、人々の可能性を解き放つ”というミッションのもと、環境問題の解決に貢献するプラネット・ポジティブな企業を目指している。

今回、米連邦議会における『リコマース・コーカス』の立ち上げに参画できたことを光栄に思うとともに、消費行動の変化を的確に捉えた議員の革新的なリーダーシップに敬意を表する。

消費者は今、単に利益や節約を求めるだけでなく、購買行動が地球に与える影響にも目を向け始めている。こうした意識の変化を後押しする取り組みに協力できることを嬉しく思う」

衣類回収ボックスの先で起こっていること ケニア・ギコンバの現状を鎌田安里紗がレポート

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サステナブル消費の未来図を描く政治アクション

アメリカでは廃棄衣料の問題が深刻化しており、捨てられる衣料品の多くが埋め立てや焼却処理にまわされるという。一方で近年では、レトロブームを牽引するZ世代を中心に「新品より中古を選ぶ」という消費スタイルが広がっている。

2024年はアメリカの消費者の58%が中古の衣料品を購入し、そのうち56%はオンラインで取引された。「低価格」「個性」「環境配慮」が同時に手に入るセカンドハンド市場。2035年には1兆ドルを超える市場になると予測する市場調査機関もある。

こうした消費の変化に政治が歩調を合わせる動きとして、今回設立された議員連盟は画期的な取り組みといえる。

また、トランプ大統領による関税措置によってさまざまな業界やサプライチェーンに混乱が生じるなか、アメリカ国内での取引が可能な中古品取引について、好意的に受け止める声も多く、これも中古品市場活性化の後押しとなる可能性がある。

中古品流通の促進は、CO₂排出削減や廃棄物削減のみならず、中小企業や個人販売者による地域経済の活性化にもつながることが期待される。

※掲載している情報は、2025年7月30日時点のものです。

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