テニスの殿堂ウィンブルドンのサステナビリティ戦略 電力は100%再生可能エネルギー

テニスの殿堂ウィンブルドンのセンターコート

Photo by AELTC/Joe Toth

7月13日の男子シングルス決勝で幕を閉じた、ウィンブルドン選手権2025。テニスの殿堂と呼ばれるこの大会では、2030年までの脱炭素の目標を掲げ、プラスチック使用量や廃棄物削減などのテナビリティ戦略を推進。誠実さと卓越性を重んじる姿勢で、持続可能な大会運営に取り組んでいる。

聖京香/Kyoka Hijiri

ライター

イギリス在住25年のフリーランスWebライター。好きなものに囲まれながらも無駄を失くし、丁寧かつサステナブルな暮らしを目指して精進中。好きなものは猫と本と森林浴。

2025.07.14
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イベントがもたらす環境負荷

イギリスにあるウィンブルドン選手権のセンターコート

Photo by AELTC/Joe Toth

世界的なスポーツイベントは、しばしば大量のエネルギー消費や廃棄物の発生、CO2排出など、環境に大きな影響を及ぼす。

イギリスのロンドンで毎年開催されるウィンブルドン選手権(以下、ウィンブルドン)は、テニスの四大大会のひとつで、観客動員数も多く運営の規模も大きいため、その影響は無視できない。

テニスの聖地と呼ばれるウィンブルドンは、これまで伝統を重視してきたが、近年では環境意識の高まりを受け、持続可能性を重視した大会運営へと大きく舵を切った。芝のコートの維持、水資源の使用、電力の供給、食材調達にいたるまで、すべての面で持続可能性が求められている。

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ネットゼロを目指すウィンブルドンの施策

ウィンブルドン選手権のサステナビリティ戦略の一環、生物多様性への貢献のための植樹

Photo by AELTC/Chloe Knott

ウィンブルドンは「2030年までのネットゼロ(温室効果ガスの排出実質ゼロ)」の達成を目標に掲げ、さまざまな施策を展開している。代表的な取り組みとしては、次のものがある。

電力は100%再生可能エネルギー

会場で使用する電力は100%再生可能エネルギーに切り替えられており、太陽光や風力エネルギーが活用されている。

生物多様性を尊重

植樹をはじめ、緑の屋根、緑の壁などの導入で、生物の生息地をつくり、地域の生物多様性の向上に配慮。将来のウィンブルドン・パーク・プロジェクト全体で生物多様性を10%増加させることを目指している。

ウィンブルドン選手権で行われる生物多様性や地域住民向けのイベント

Photo by AELTC/Ben Queenborough

地域住民が参加して、自然や生物について学ぶイベント「「ネイチャーウィークエンド」をLondon Wildlife Trustとの協力のもと、開催している。

プラスチック使用量を削減

使い捨てプラスチックはほぼ廃止され、再利用可能なカップの利用や、給水ステーションの設置も行われている。

廃棄物の削減とリサイクル強化

地元の農産物を使ったケータリングや、ベジタリアン・ヴィーガン対応メニューの導入など、食に関する取り組みも強化。約1,000kgのあまった食品は地元の慈善団体に寄付され、それ以外の食品廃棄物は堆肥化。使用済みのテニスボールは再利用または寄付され、ラケットのガットは回収されてリサイクルされている。

持続可能なスポーツイベントの未来像として注目

サステナビリティ戦略を推進している、テニスの殿堂、ウィンブルドン選手権のコート

Photo by AELTC/Ian Walton

こうした取り組みは、ウィンブルドンのブランド価値を高めるだけでなく、他の大会やスポーツイベントにもプラスの影響を与えているとみられる。

実際、オーストラリアの「スポーツ環境アライアンス(SEA)」も、ウィンブルドンの取り組みを模範例として紹介している。

持続可能性を重視することは、単なるイメージ戦略ではない。実際、イギリスは熱波に見舞われ、ウィンブルドンは猛暑のなかでの開催となり、気候変動はスポーツ開催そのものを脅かすリスクとなりつつある。未来の世代にもスポーツを楽しんでもらうためには、地球環境そのものを守ることが欠かせないのだ。

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ウィンブルドンは、その歴史と格式を保ちながらも、持続可能な未来に向けて明確なビジョンを持って進んでいる。こうした取り組みは、スポーツ界だけでなく、観客や企業、地域社会全体にとっても重要な意義がある。

スポーツイベントに何を求めるのだろうか。その答えには、感動や競技の質だけでなく、「環境配慮」も加わる時代が、すでに始まっている。

※掲載している情報は、2025年7月14日時点のものです。

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