Photo by © ALDI SÜD
ドイツのディスカウントスーパーで、動物福祉の関心の高まりに応え、精肉コーナーを従来の動物の種類別ではなく、「飼育形態別」に再編。アニマルウェルフェアに配慮された製品を、消費者がより簡単に選べる仕組みを導入した。環境・倫理に配慮した買い物を後押しする動きとして注目されている。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・キュレーター
ドイツ在住。フリーランスの編集者・キュレーター。変わりゆく都市ライプツィヒとそこに生きる人々の物語を記録するニュースレター「KOKO」(https://koko-de.beehiiv.c…
Photo by Marques Thomas on Unsplash
ドイツの大手ディスカウントスーパーALDI SÜDは、動物福祉に配慮した新たな販売戦略として、精肉の冷蔵棚の陳列方法を刷新した。牛肉、豚肉、鶏肉といった、これまでのような動物の種類別ではなく、「飼育形態」の水準によって分ける試みである。
そのもととなっているのが、ドイツで2019年から始まった、動物の飼育環境を評価する基準「Haltungsform(動物福祉ラベル)」。アニマルウェルフェアの視点で5段階評価されたもので、数字が上がるにつれて動物福祉レベルも上がる。
小屋飼いか外飼いか、飼育面積や小屋の密度、定期的な外気浴が行われているか、有機畜産に相当する環境かなど、細かく定められている。ドイツの大手スーパーマーケットやディスカウントストアなどがこのラベルを取り入れており、これを参考に買い物をする消費者も少なくない。
そして今回ALDI SÜDは、この5段階評価をもとに、精肉コーナーを以下のような3つの色でゾーン分けした。
青:従来型の飼育(5段階評価の1・2に該当)の製品
緑:高水準な飼育(5段階評価の3・4・5に該当)の製品、および挽肉
赤:特売品
これにより、動物福祉に配慮した製品を一目で識別でき、消費者の選択をサポートする。
Photo by haltungsform.de
食品に関わる動物の飼育環境を示す「Haltungsform(動物福祉ラベル)」
その背景には、ALDI SÜDが2021年に掲げた「#Haltungswechsel(飼育形態の転換)」という企業方針がある。2030年までに、自社の精肉・牛乳(飲用)・冷蔵肉製品をすべて「飼育形態3以上」(動物に屋外スペースやより自然な飼育環境を提供するレベル)のものに切り替えることを目標としている。
すでに牛乳(飲用)や七面鳥・牛肉は完全に移行済みで、今回の冷蔵棚改革はこの目標を店舗空間でも体現する新たなステップとなる。
ALDI SÜDのサステナビリティ部門のユリア・アドウ博士は、「よりよい飼育環境の製品を顧客がすぐ見つけられるようにしたい」と語る。実際に、同社では「飼育形態1」のソーセージ製品をすでに取り扱っておらず、動物福祉への企業姿勢を強く示している。
この飼育形態表示の取り組みは、生鮮肉にとどまらず、牛乳やチーズ、ソーセージなどの冷蔵製品にも拡大。天井からのサインやマグネット表示により、「飼育形態3以上」の製品がわかりやすく紹介される。
2025年7月中旬までに大半の店舗で導入が完了する予定で、一部は新しい店舗デザインの導入と並行して行われる。また、ボン大学の農業・食品経済研究所と共同で、消費者の購買行動や市場への影響についての独立調査も行われており、企業の一方的なPRではなく、科学的な評価も伴っている。
ドイツのスーパーが進めるこのような「見える化」された動物福祉の取り組みは、持続可能な社会の実現に向けた一つのモデルとして、日本の流通業界や消費者にとっても学びとなるだろう。
※参考
Als erster großer Lebensmitteleinzelhändler: ALDI SÜD startet neues Konzept in der Kühlung|ALDI SÜD
Aldi Süd Organises Fresh Meat Display Based On Animal Husbandry Type|ESM Magazine
Haltungsform
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