天然雪を春スキーに活用 「スノーファーミング」で人工雪に頼らないゲレンデに

「スノーファーミング」で春スキーがより持続可能に

Photo by Alessio Soggetti on Unsplash

人工雪をつくるにはエネルギーと大量の水が必要で、環境への負荷が問題視される。そんななか、自然に降った雪を収穫・保存して再利用する「スノーファーミング(雪の農業)」が広がりつつある。北米やスイスなどのスキー場では、持続可能なスキー場整備のためにさまざまな工夫が行われている。

岡島真琴|Makoto Okajima

編集者・キュレーター

ドイツ在住。フリーランスの編集者・キュレーター。変わりゆく都市ライプツィヒとそこに生きる人々の物語を記録するニュースレター「KOKO」(https://koko-de.beehiiv.c…

2025.04.09
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スノーファーミングとは 自然の雪を活かしてゲレンデを整備

「スノーファーミング」で春スキーがより持続可能に

Photo by Chris Holder on Unsplash

気候変動により世界で降雪量が減少するなか、持続可能なスキー場の整備方法として「スノーファーミング」が注目されている。

スノーファーミングとは、自然に降った雪を風で吹き飛ばされないように守り、その雪を広く均等にならしてスキー場にすること。冬の間に降った雪を保存して、次のシーズンに活用する方法もある。日本語に直訳すると「雪の農業」となることからわかるように、農作物を栽培して収穫するように、雪を適切に管理してスキー場として利用することをいう。

人工雪とは異なり、空気を多く含んだ天然雪は軽くて滑りやすく、よいゲレンデを整備できるという。

標高の高い米コロラド州のモナーク・マウンテンにあるスキー場では、1930年代の開業以来、人工降雪機を使わずに、駐車場などに積もった雪を「収穫」してゲレンデに活用してきた。より多くの雪を確保するために、雪面に穴を掘ったり、深い轍をつくって雪を集めたりしている。この方法により、雪質を維持しつつ、春先まで滑走可能な状態を保っている。

人工雪は多くの水とエネルギーを使用する

しかし、こうした方法を取るのは例外的で、アメリカで人工雪に依存しているスキー場の割合は、北東部で62%、中西部では98%に上る。人工雪は高密度で融けにくいため、春の植物の成長を妨げ、野生動物の餌場を奪ってしまうという環境問題も指摘されている。また、降雪機の騒音による野生動物への影響も考えなければならない。

さらに、人工雪づくりには大量の水が必要だ。人工降雪機をつくるSMI Snow Makersによれば、61m四方のエリアを覆う深さ15㎝の人工雪をつくるには、約28万リットルの水が必要だという。また、水をくみ上げて雪にするための電力が必要だ。カナダ全土のスキー場で年間4,200万立方メートルの人工雪をつくるときに使われる電力で、13万トン以上のCO2排出が発生するという研究結果もある。

グリーンエネルギーを導入するスキー場も増えてきてはいる。たとえば、バンクーバーのグラウス・マウンテンでは風力タービンが設置されているが、風力タービンで補うのは年間電力使用量の最大2%のみで、全体から見ればほんの一部にすぎない。

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こうした状況を受け、環境負荷の少ない代替手段としてスノーファーミングが注目されている。例えば、カナダのバンフ・サンシャイン・ビレッジでは、水源が近くにないことから人工雪の利用が難しいため、スノーファーミングのみに頼ってゲレンデを維持している。スノーフェンスを用いて雪を効率的に集め、自然の雪を有効活用しているのだ。

また、ワシントン州のマウント・ベーカー・スキー場では、木のチップを地面に敷くことで雪の融解を防ぐ工夫をしている。これにより、雪がより長く残り、シーズンの持続に貢献している。さらに、冬に集めた雪を厚い木片や断熱マットで覆い、夏の間も保存し翌シーズンに再利用している。この技術も各地のスキー場に注目されつつある。

バーモント州のクラフツベリー・アウトドア・センターでは、スノーファーミングを小規模から始め、木のチップで覆うことで夏の間も65〜70%の雪を保持できたという成果を得た。その後、規模を拡大して実施している。

モナーク・マウンテンのウィルバー氏は、「毎年、スキー場にとって理想的な年とは限らないが、私たちは気候変動と向き合いながら滑れる山を維持していく」と語る。85年にわたるスノーファーミングの経験を背景に、これからも自然との共存を目指す姿勢が、多くのスキー場に希望を与えている。

※掲載している情報は、2025年4月9日時点のものです。

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