Photo by Jorien Loman on Unsplash
イギリスでは1930年から97%もの自然の草地が失われ、受粉を担う生き物の数も激減している。そんななか、庭や草地さえあれば誰でも実践できる身近なアクションとして注目されているのが「ノー・モウ・メイ」だ。
Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
“サステナブルな未来”を体感するSUSKATSU PARKアフターレポート前編〜体験コンテンツ〜
Photo by Plantlife
イギリスではここ最近、春になると「ノー・モウ・メイ(No Mow May)」という言葉を目にする機会が増えた。これはイギリスの自然保護団体「プラントライフ(Plantlife)」が2019年から始めたキャンペーンで、5月(May)は芝刈りをしない(No Mow)でおこうというもの。
寒い時期が終わり植物がよく成長する5月の間、庭や公園などの芝刈りをしないことで、草花の自然な成長を促すことが目的だ。
プラントライフが2019年に行った調査では、ほとんどの人が2週間に一度芝刈りをしていることが明らかになっている。だが、一ヶ月間芝刈りを休むだけでも野草は花を咲かせることができ、ミツバチや蝶など、花粉を運ぶ役割をもつポリネーターの活動をサポートできるのだという。
ミツバチや蝶の数が増えれば、それらを食べる鳥やほかの生き物にとってもいい影響が生まれる。
Photo by Nikki Son on Unsplash
イギリスでは1930年代以降、草地の97%が失われてきた。その結果、受粉を担う生き物の数も激減。
例えば、蝶は1976年から約50%も減少し、ミツバチは13種が絶滅してしまった。さらには、カッコウセンノウ(Ragged Robin)、クナウティア・アルベンシス (Field Scabious)、サクシサ・プラテンシス(Devil’s-bit Scabious)のようにイギリスで古くから親しまれてきた草地の植物も現在絶滅危惧リストに入っているという。
そこで、芝刈りをせずに芝をのばし、植物の育成を促して、それらの植物の花や蜜にあつまる生物のサポートにもつなげるのがこの取り組みだ。
プラントライフは、ノー・モウ・メイの期間が終わった後も庭を部分的に4〜6週間ごとに芝刈りしていくことを推奨している。それによって、庭には異なる長さの芝生が存在することとなり、咲く花の種類や量を増やせるという。
また、刈った草は放置せずコンポストにすることも重要なポイントだ。刈った草をそのままにしておくと、より繁殖力の高いほかの雑草が繁茂してしまうからだという。
ノー・モウ・メイを実践すると、タンポポやデイジー、バターカップ、ワスレナグサなどの花が庭で見られるようになる可能性がある。プラントライフのシニア・エコロジカル・アドバイザーのサラ・シャトルワース氏は、「5月中の芝刈りを避けることで、春の野花が増えるだけでなく、人々が緑地を楽しみ、自然と触れ合う時間が少し増えるのです」と話している。
※参考
No Mow May 2025: Why it's time to let the weeds grow|BBC COUNTRYFILE
Plantlife
ELEMINIST Recommends