未来の原料と期待される微細藻類由来オイルを使った化粧品づくりをおこなう「circuRE act(サキュレアクト)」から、40歳の肌悩みに着目したナイトクリームが間もなく発売される。だが製品化までの道のりは、決して簡単なものではなかった。それというのも、同社では「石油由来原料不使用」をはじめとする厳格なプロダクトポリシーを掲げており、開発の現場を悩ませたからだ。実際の開発に携わった研究者の鈴木龍介氏に、石油由来原料不使用などの制限によってどんな困難が生まれたのか、同社の特徴である微細藻類由来オイルの魅力などとあわせて話を聞いた。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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サキュレアクトの塩原祥子代表(左)と、開発担当で研究者の鈴木龍介氏(右)。
2025年3月24日に発売のサキュレアクトのナイトクリーム「FIVE THIRTY Night-care cream」は、40歳の肌悩みに着目したエイジングケア*クリームだ。 サキュレアクトの自社ブランド「530(FIVE THIRTY)」では、肌年齢を決めるのはラメラ構造(角質層でミルフィーユのように水分層と油分層が積み重なった構造)の密度であると考えている。*年齢に応じたお手入れ
このナイトクリームは、“深(しん)の潤い”を追及することで、ラメラ構造の密度を整え、若々しいハリのある肌を保つ設計だ。
また、530では地球環境に配慮し、13のプロダクトポリシーを掲げている。さらに今回はナイトクリームの開発にあたって、以下の13の「CLEAN BEAUTY POLICY」を設けた。
「ポリシーに反するものは製造しないと決めている」と、塩原代表の思いが揺るぐことはない。
■環境負荷の高い原料や資材は不使用
・パーム油(ただしRSPO認証を受けたものは採用の可能性がある)
・動物由来原料(クルエルティフリー含む)
・合成界面活性剤
・炭素原子含むシリコーン
・石油由来原料
・鉱物油
・石油系防腐剤
・合成着色料
・合成香料/精油(アップサイクルされた精油は使用可能とする)
・プラスチック資材
・原料産地不明確
■自然の恵みを最大限に活かしたレシピつくり
・100%天然由来成分
・ヴィーガン処方
石油由来原料を使わないと、「混ざらない」「テクスチャーが悪い」「固まらない」といった難題が次々に起こるという。
化粧品業界に15年以上従事する研究者の鈴木氏は、原料の開発や、メーカーから依頼され数々の化粧品の処方組みをおこなってきた。サキュレアクト代表の塩原祥子氏に“職人”と言わしめるほどの豊富な知識と経験の持ち主であり、自らを化粧品の成分や原料の“オタク”と笑う。そんな鈴木氏でも、CLEAN BEAUTY POLICYをふまえての商品開発は簡単なものではなかったという。
13項目のCLEAN BEAUTY POLICYのうち、とくに鈴木氏を悩ませたのが「石油由来原料不使用」。多くの化粧品には、水と油を混ぜるために界面活性剤が使用されている。しかし、界面活性剤は石油由来のものが多く、植物由来の原料で代用する必要があった。
さらに、「石油由来原料が使えないと、テクスチャーがめちゃくちゃ悪くなるんです」と鈴木氏は話す。植物由来の成分を使いながら、0.1%程度ずつ配合量を調整し、最終的にスーッと伸びていくような理想的なテクスチャーのクリームが完成したという。
鈴木氏は、完成したクリームを自身の手の甲に伸ばしながら、「めちゃくちゃいいでしょ?」と、嬉しげに仕上がりを見せてくれた。
そのほか、容器から直接手で取るタイプのクリームにおいて、「石油系防腐剤不使用」も研究者泣かせなポリシーだったという。「石油由来原料不使用」や「石油系防腐剤不使用」など、すべての課題をクリアして処方組みができあがるまでに1年かかったそうだ。
実際に手にとると、スーッと伸びて心地いい。石油由来原料不使用で、この仕上がりにたどり着くのは簡単ではなかったという。
失敗を何度も繰り返しながらも研究を続けてこられたのは、「課題がある方が面白いと思うタイプだから」と、鈴木氏は笑顔で話す。課題が多いことで職人魂に火がつき、大変ながらもやりがいのある研究であったことが伝わってきた。
さらに、「環境に負荷の少ない原料を使った商品をつくりたい、という塩原さんの思いに共感しているから、というのも理由のひとつです」と、鈴木氏。
これまで多くの化粧品の原料開発や処方組みをしてきたが、自身が携わった化粧品の廃棄量や環境負荷について知る機会がほとんどなかったそう。しかし、塩原氏に出会い、廃棄の多さなど化粧品業界の問題について指摘され、はっとしたという。
「たしかに、メーカーさんに依頼されて処方を組んだ商品は大量生産されていたので、売れなかった分はたくさん捨てられているだろうな……って。心のどこかに環境問題のことはあったので、塩原さんの言葉を聞いて腹落ちしました」と振り返る。
「だからこそ、サキュレアクトでの商品づくりは、本当にいいものをつくっていると実感できます」と、鈴木氏は晴れやかな表情で話す。
やっとの思いで完成した今回のナイトクリームについて、「これまで環境について意識してなかった人に使ってもらいたい」と、鈴木氏。 「サステナブルでありながら、比較的手が届きやすい価格を実現している上、素晴らしい成分がいくつも入っています。サステナブルな化粧品は、『高い』『肌実感が穏やか』といったイメージを持たれやすいですが、その点、このクリームはしっかり差別化できていると思います」と語り、完成品への自信の高さがうかがえた。
ソラルナ®オイル。微細藻類を培養して増やし、蓄積されたオイルを抽出する。
530の商品の核となるのは、微細藻類由来の「ソラルナ®オイル」だ。オイルを多く蓄積する、目に見えないほどの小さな藻を培養し、オイル蓄積量が最大となる約2週間後に回収して、そのオイルを抽出する。鈴木氏は、まずその早さに驚いたという。
「化粧品でよく使われるパーム油は、原料となるアブラヤシの木を育てるのに多くの栄養分が必要で、時間も、人の手も、かなりかかるんです。それに比べて、ソラルナ®オイルはできるまでの期間が圧倒的に短い。おまけに光合成で酸素を出してくれるし、いいことづくめですよね」
できあがったオイルのクオリティについても申し分なく、サステナブルな原料である上、抗酸化物質が入っていたり、シリカが含まれていたりと優秀。「本当に素晴らしいと思いました」と絶賛する。
成分の分量や配合のタイミングなどを細かく変えて、繰り返し実験をおこなったという。
ソラルナ®オイル以外では、40歳の肌悩みを考え、ラメラ構造の密度を整えることを目指し「ソラルナ®オイルだけだとうるおいが足りないので、肌にうるおいを与えてみずみずしい状態を保つ、海藻由来の『アカモクエキス』を採用しました」という。
また、40歳前後で気になりやすいたるみについては、表皮が痩せてきていることが原因のひとつであることから、脂肪を蓄えさせる働きのある「デクティオプテリスオイル」を採用した。
「これは、脂肪を蓄えて肌にハリが出ることで、たるみなどをカバーできる成分です。バストアップやリップクリームに使われている成分ですが、まだあまり知られていないので、スキンケア商品に使われるのは珍しいですね」
アスパラガス由来の「Elapillar(エラピラー)」も、重要な役割を担っている。「アスパラガスって、やわらかさと弾力性を持ちながら、細い新芽でもピーンと立っていますよね。あれはアスパラガスの成分が関係していて、エラピラーを化粧品に入れることで肌を支えるピラー構造を保護する狙いがあります」
膨大な数の成分を知る鈴木氏が、今回のナイトクリームにこの3つの成分を選んだ背景にも、やはり530のポリシーがある。
「機能だけでいうと、ほかにも同じことができる原料はあります。ただ、最初から防腐剤が使われていたり、化学合成品だったり、原料開発の時点で動物実験をおこなっていたりするものが多くて。530のポリシーに反するため、選択肢がぎゅっと狭まった」という。
そのなかで、ソラルナ®オイルを起点として、ラメラ構造の水相および油相、さらに構造そのものを包括的にサポートするこの3つを選び処方を組んだそうだ。
医学のバックグラウンドを持つ鈴木氏も、化粧品や原料の開発現場で、サステナブルが意識されるようになってきた変化を肌で感じているという。
危機的な環境問題を背景に、世界中で環境負荷への配慮が求められているが、化粧品開発に携わってきた15年のなかで、開発の現場における環境への配慮は大きく変化したと鈴木氏は語ってくれた。
「容器のことや水の使用などいろいろありますが、とくに大きいのは大手化粧品企業で動物実験が廃止になったこと」と振り返る。
しかし、環境問題が深刻化するいま、化粧品開発はさらに変わっていく必要があると話す。とくに優先すべきだと考えているのが、処方組みについて。
多くの化粧品は、コストを考えて一度に大量生産するが、「コンビニのお弁当は、日持ちしないから一度に何十万個もつくらないですよね。でも化粧品は、生モノなのに、あえて3年持つような処方にして、大量につくっちゃうんです。そういうつくり方をしているから、売れ残りが出て、結果ごみになってしまう」と指摘。
「だからまず、処方組みから変えるしかないと思います。極端な話ですが、例えば、明日腐ってしまっても仕方ないような処方にして、1日分だけつくるとか。それくらいの気持ちで処方組みをしていかないと、せっかくつくった商品がごみになり続けてしまうと思います」
効率の追求によって生まれた大量生産・大量廃棄の根本的な改善が必要であることを伝えた。そのような点においても、サキュレアクトのナイトケアクリームでは、少量ロットで必要な分だけつくる体制ができているという。
石油由来原料を使わないことが、化粧品づくりにおいて、いかに難しいか語ってくれた鈴木氏と塩原氏。安易に妥協しない強い信念と、責任あるものづくりへの姿勢が、多くの人の共感を得ることになるだろう。
そんな「FIVE THIRTY Night-care cream」は、中身のクリームだけでなく容器やパッケージにおいても、環境への配慮を徹底している。ガラス瓶やアルミ製の蓋を採用するほか、化粧箱についてもFSC認証紙を使用するなど、リサイクルを前提として、ごみが出ないように設計されている。
発売は、2025年3月24日より、サキュレアクトオンラインストアなどでおこなわれる。
また、「FIVE THIRTY Night-care cream」の発売に先駆けて、新商品説明・体験会を開催する。当日は、新製品のこだわりなどの説明をおこない、実際に手に取って試せるうえ、現品のお土産付き。同社の考えに共感したり、本商品に興味を持ったりした方は、ぜひ参加してはどうだろう。
開催日:2025年2月26日(水)
時間:以下の3つから選択できます。 応募フォーム内で希望時間を選んでください。
1部)13:00〜14:30
2部)15:00〜16:30
3部)17:00〜18:30
会場:axle 御茶ノ水(東京都千代田区神田小川町3-28-5)
東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅より徒歩3分、JR中央・総武線 御茶ノ水駅より徒歩6分、都営新宿線 小川町駅より徒歩6分、東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄三田線・新宿線神保町駅より徒歩8分(地図はこちら)
応募締切:2月9日(日)
※応募者多数の場合は、抽選をおこないます。※当選のご連絡は(eleminst-followers@trustridge.jp)より、フォーム内に登録いただいたメールアドレス宛に2月14日(金)までにご連絡します。
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