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少数派の意見を持つ人が多数派の意見に合わせるよう、無言の“圧力”で強制する「同調圧力」。本記事では、同調圧力と似た言葉との違いを説明しながら、生じる背景と原因を解説。さらに、具体例や与える影響、ネガティブな同調圧力に負けないためにできることについても言及する。
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同調圧力とは、少数派の意見を持つ人が多数派の意見に合わせるよう、無言の“圧力”で強制すること。同調圧力は、外出の自粛やマスクの着用など、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時に、日本社会で顕著になったとされている。
同調圧力に似た言葉で、「同調行動」「同調効果」「協調性」がある。それぞれとの違いを見ていこう。
「同調行動」とは、「周りの意見や行動に合わせて、自分も同じように行動をしてしまうこと」を指す。これは、意識的に周りと同じような行動をする場合もあれば、無意識のうちに行っていることもあるという。
同調圧力が、少数派の意見を持つ人が多数派の意見に合わせるよう、無言の“圧力”で強制することであるのに対し、同調行動は同調圧力を受けた結果にとる“行動”を指す点が、2つの言葉の違いである。
「同調効果」とは、社会心理学用語で「無意識に自分の考えや行動を周囲に合わせて同調してしまう心理効果」のこと。周囲の人と同じ意見や行動だと安心し、逆に自分だけが周囲と違うと嫌悪感や不安を感じる心理状態を指す(※1)。
同調圧力と似た言葉であるが、同調効果は、同調圧力を受けた結果生まれる心の動きのことである。
「周囲の意見に合わせる」という点で、同調圧力と誤用されやすいのが「協調性」だ。
結果として周囲の意見に合わせる点は同じだが、協調性はあくまで自発的に「周囲に合わせる」のに対して、同調圧力は「合わせるように強制される」点が違いといえるだろう。
同調圧力がなぜ生まれるのか、その背景や原因を解説しよう。
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日本は同調圧力が強いといわれているが、これは日本の「他人と衝突することはなるべく避ける」という“和”を重んじる文化的要因が影響している。
集団の輪を乱さないために、場の空気を読んで周囲と同じように行動することが、集団生活のなかで重視されることが多いためだ。
会社や学校などの集団内において、空気を読んで周囲に合わせていると、一人だけ目立つこともなく、自分だけ批判的な意見を浴びることもないという安心感がある。
また、多数派と同じ意見を持つことで、自分がそのコミュニティの一員であるという帰属意識を持てるようになるのだ。
他者と関わり生活していると、他者からの評価が気になるもの。同調圧力は、「自分は他の人からどうのように思われているのだろう」「会社でどのように評価されているのだろう」など、他者の評価を気にすることで発生する。
それに加えて、他人と衝突することは避けた方がいいという日本の文化的要因と、秩序が重視された昔の村社会の集団構造がいまもなお残っているのも、同調圧力が生じる背景といえるだろう(※2)。
同調圧力が存在するのは、日本だけではない。
たとえば、アジア圏やサハラ以南のアフリカでは民族や家族を重視する文化が強い。そのため民族や家族の文化を尊重するような社会的要請があり、周囲になじむことや伝統を守ることを求める傾向をもつ国が多くある。
同調圧力にはどのようなものがあるのだろうか。日常生活や職場などで見られる同調圧力の具体例を紹介する。
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職場での飲み会や付き合いに、気が進まないながらも参加した経験がある人は少なくないだろう。
「必ず参加するように」と言われたわけでなくても、参加しなければいけない空気が漂っていたり、参加しないことでどう思われるかを気にしてしまったりするのも同調圧力によるものだ。
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「自分は仕事が終わっているが、周囲(とくに上司)が残業しているから帰りにくい」というケースも、同調圧力といえる。
圧力をかけている側はただ仕事が終わらず残業しているだけであっても、周囲の人は帰りにくいと感じていることもあり、無意識に残業を強制してしまっている。
有給(年次有給休暇)とは、労基法が労働者の「権利」として認めた有給の休暇である(※3)。
しかしながら、ほかの人が取得していないから申請したくても申請できないといった同調圧力が存在する職場も少なくない。
同調圧力は、SNS上にも存在している。正義や倫理に反するとみなされた言動には、怒りの声が押し寄せ、いわゆる“炎上”状態になる。
このとき本当に自分のなかから湧き上がってくる怒りで発言する人がいる一方で、同調圧力によって「自分も怒らなきゃ」と、多数派意見に追従する人もいるという(※4)。
同調圧力は個人や社会に、ポジティブ・ネガティブ、両方の影響を与える。それぞれどのような影響があるのか、考えていこう。
ポジティブな影響としてまず挙げられるのが、集団の秩序や協調性の維持だ。
集団において同調圧力が働くことで、規範やルールが守られやすくなり秩序が保たれる上、みなが同じ方向に進みやすくなるため、協調性が維持されやすくなる。
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同調圧力によって、チームパフォーマンスの向上も期待できる。
適度な同調圧力があると、周囲と同じ意見であることで仲間意識や信頼感が高まり、結束力が生まれやすくなる。チームワークが向上することで、チームのモチベーションや生産性も高まり、結果としてチームパフォーマンスが向上するのだ。
程よく同調圧力があることで、「同じ考えを持っている」という信頼感や、チームとしての一体感が強くなる。
それによって、帰属意識が高まり、個人の生産性やモチベーションアップにもつながるのだ。
適度な同調圧力は、企業にもポジティブな影響を与えることがある。
同調圧力によって、社員たちに企業理念や行動規範が浸透しやすくなり、企業全体で同じ目的や目標に向かって力を発揮できるようになるのだ。
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同調圧力がもたらす、ネガティブな影響のひとつが、個人の自由や創造性の喪失である。
同調圧力が存在する環境では、少数派の意見の人が多数派の意見や行動に合わせざるをえず、個人の意見を伝えることができない。
企業などにおいては、個人の自由や創造性を喪失することで、新しいアイデアやビジネスチャンスが生まれる機会が減り、企業の成長を妨げる可能性もある。
同調圧力が強い環境では、「行きたくない飲み会に行かなければいけない」「定時で帰りたいのに帰りにくい」「有給を取りづらい」など、自分が本当に望むこととは違う行動をとらざるをえない場面がある。
慢性的にこのような状況が続くことで、ストレスが増加してしまうのだ。
自分の意見を言いづらいのも、同調圧力のネガティブな側面である。
自分が多数派の意見とは違う意見を持っていても、「仲間外れにされてしまうかもしれない」「周りに合わせた方がいいかもしれない」「どう思われるか怖い」などと心配をしてしまい、自分の意見を素直に伝えることが難しくなってしまう。
同調圧力が強い環境だと、集団のなかで自分の意見が言いづらい。もし文化に違和感や罪悪感をおぼえていても、発言しにくく、不正や悪しき風習が是正されないというデメリットもある。
ここでは、同調圧力を心理学的な観点から分析してみよう。
アッシュの同調実験とは、社会心理学者ソロモン・アッシュによって1951年に報告された、人間の同調行動を検証した実験である。
アッシュの同調実験では、8人の被験者を集めて、そのうち7人は「サクラ」。この7人には、アッシュの指示通りに行動してもらい、残りの1人を被験者として実験を行った。実験では正解が明らかな問いをいくつか用意し、8人に回答させ、それによって被験者の答えがどう変化するのかを調査した。
その結果、サクラ全員が正解を答えると、被験者も堂々と正解の選択肢を選んだが、サクラが不正解を答えると、被験者も不正解の選択肢を選ぶ傾向が確認されたのだ。
この実験から、集団のなかにいるときは、集団に合わせて誤った判断をしてしまう傾向が明らかになった(※5)。
適度な同調圧力はプラスに働くこともあるが、過度なものや使い方によってはデメリットが生まれる。ネガティブな同調圧力に負けないためには、何ができるか考えていこう。
ネガティブな同調圧力に負けないためには、自分軸を持つことが重要だ。
自分と他人を明確に分けて考え、自分の意見を尊重することで、周囲に惑わされずに自身の本当に気持ちに正直にいることができる。
「NO」と言える勇気を持つことも、ネガティブな同調圧力に負けないためは大切である。
行きたくない飲み会や残業など、誠実に自分の気持ちをしっかりと伝えることで、相手や組織に自分がどんな考えを持っている人間なのか伝わるはずだ。
学校や会社などの集団において、日頃から適度なコミュニケーションをとっておくこともおすすめだ。
自分の気持ちを伝えやすい人間関係を構築しておくことで、周囲と意見が違うときがきても、聞く耳を持ってもらいやすくなる上、自分自身も話しやすくなるだろう。
無言の圧力とはいえ、受けた側は不安になったりストレスを抱えたりすることもある同調圧力。適度な同調圧力は組織においてポジティブな影響をもたらすが、ネガティブな影響をもたらすこともある。ストレスや不安から心を守るためにも、まずは同調圧力に遭遇したらどうすべきか自分にあった方法を考えておくといいだろう。
※1 同調現象のマーケティング活用|企画の種
※2 同調圧力とは?生まれる理由と企業にもたらすメリット・デメリットを解説
※3 年次有給休暇はもらえるのですか?また、パートタイム労働者ももらえるのでしょうか?|厚生労働省
※4 怒ってないのに「私も怒らなきゃ」 SNS炎上と「怒り」の同調圧力|朝日新聞デジタル
※5 アッシュの同調実験|STUDY HACKER(スタディーハッカー)
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