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最近頻発している「太陽フレア」。この太陽フレアとはどのような現象なのか、太陽フレアが起こることによる影響と、陽フレアのリスク予防、回避に向けた取り組みについて紹介する。
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エレミニスト編集部
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太陽フレアとは、太陽の表面で起こる爆発現象のことをいう。この現象は、太陽の表面に現れる大きな黒点で起き、黒点の周りに非常に明るい部分が現れる。数分で最大に明るくなった後、徐々に暗くなる。その時間は短いもので数分、長いもので数時間続く。
太陽フレアの色は通常、水素ガスが出すHα(エイチアルファ)線で赤く見えるが、とくに明るい色になると白色光となり、これを「白色光フレア」という。太陽フレアが起きる理由には、黒点の活動が関係していると考えられている。黒点の磁場がねじれたり変形したりすることで、そのエネルギーが周囲のガスに伝わり発生するといわれている。(※1、※2)
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太陽フレアが発生すると、地球上にさまざまな影響をもたらすといわれている。
太陽フレア発生直後から、短波帯(HF)の通信に支障が生じる。短波帯の電波を利用しているものには、船舶無線や航空無線、アマチュア無線がある。
また太陽フレアによる電波雑音(太陽電波バースト)の影響によって、VHF帯・UHF帯の周波数を使用する無線システムにも支障が出る。VHF帯・UHF帯の周波数を使用する無線システムには、防災行政無線、消防無線、警察無線、タクシー無線、列車無線などがあり、最悪の場合には、公共機関のシステムにも影響が生じる。
さらに携帯電話システムが使用できる周波数が一時的に逼迫する可能性もあり、緊急通報がつながりにくくなったり、スマートフォンからの公衆網のネット接続も難しくなったりすることがある。(※3)
太陽フレアが発生すると、太陽の上層大気のガス「コロナガス」が宇宙空間に放出される。このコロナガスが地球に到達すると、GPSの測位誤差が大きくなることがある。(※4)
GPSの測位誤差が大きくなると、GPSを活用しているカーナビや自動運転、スマートフォンの位置情報などにも影響を与える可能性がある。(※3)
太陽フレアによって衛星の運用に不具合、故障、誤作動をもたらすケースもある。そうなると天気予報の精度が低くなったり、衛星放送の視聴ができなくなったりする。
また衛星の太陽電池が急激に劣化することで、衛星自体の寿命が短くなることもリスクだ。(※3)
太陽フレアに伴い、磁気圏じょう乱により地磁気誘導電流(GIC)が発生し、広範囲で停電となる可能性もある。また変圧器が加熱により損傷を受け、電力供給がスムーズに行えなくなることも考えられる。(※3)
太陽フレアが発生しても、地上にいる人間への健康被害はほとんどないといわれている。しかし国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士や、高緯度地域を飛行中の国際線パイロットが被爆する可能性がある。(※5)
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過去には太陽フレアによって大きな影響があった地域がある。いつ、どのような影響があったのだろうか。
1989年3月、カナダのケベック州で太陽フレアによって磁気嵐が発生。この影響により電力系が停止し、約9時間停電が起き、約600万人に影響を及ぼした。また、アメリカのニュージャージー州では変圧器に大きな損傷を与えた。(※2)
2003年10月に史上最大規模の太陽フレアが発生した。この影響を受け、スウェーデンでは1時間の停電が発生、約5万人が影響を受けた。また太陽の発する放射線により、一瞬にして数十を超える人工衛星が機能停止や機能喪失する被害も起きた。(※6、※7)
2012年7月23日に発生した太陽フレアは、太陽風を発生させた。この太陽風は強力な威力をもっていたが、幸い軌道からは免れていた。あと1週間早く太陽風が発生していたら、地球を直撃していたことになるため、全地球測位システム(GPS)やインターネットなどのシステムに被害があった可能性がある。(※8)
2024年10月1日~7日にかけて、6回もの太陽フレアが発生した。この影響により、太陽フレアによって発生するX線や紫外線が急増し、地球の電離層のD層の電子密度が高まることで短波帯の電波が吸収される現象「デリンジャー現象」が日本各地で発生。磁気嵐が発生し、北海道を中心に日本国内でオーロラが見られた。(※9、※10)
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太陽フレアをはじめとする宇宙で発生する事象は、私たちの社会や地球環境にリスクをもたらす可能性がある。このリスクを予防、回避するために行われている取り組みや研究について解説する。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、「宇宙天気予報」というウェブサイトを運営している。このサイトでは太陽フレア、プロトン現象、太陽風、デリンジャー現象などの活動レベルの予報が掲載されている。活動レベルは「非常に活発」「活発」「やや活発」「静穏」の4段階で発表される。また太陽黒点や太陽フレアなどの現況チャート、太陽フレアに関する臨時情報なども見ることができる。(※2、※11、※12)
この「宇宙天気予報」を活用することで、太陽フレアからのリスクを最小限にとどめられるよう、対策が講じられる。
NTT宇宙環境エネルギー研究所では「宇宙放射線電磁バリア技術」というテクノロジー開発が進められている。この技術は、宇宙空間を飛び交う強力な宇宙線から電子機器や人間を守る技術である。また宇宙線の性質を再現する粒子加速器を使ったシミュレーションを行い、電子機器の防護や誤作動を防ぐ技術(磁気シールド、遮蔽材など)の確立を目指している。(※2、※13)
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太陽の表面で起こる爆発現象「太陽フレア」は、一見、私たちの生活には関係がなさそうに思える。しかし、発生するとGPSや衛星、通信や放送などに影響を与え、生活に支障をきたす恐れがある。停電の発生やスマートフォンがつながらないといったことも考えられるため、私たち自身も自然災害と同様の備えをしておくことが大切だ。
※1 太陽では大爆発がおきるのですか?|国立科学博物館
※2 太陽フレアとは?その影響と対策について解説|NTT
※3 宇宙天気の警報基準に関するWG報告:最悪シナリオ|総務省
※4 大規模な太陽フレア発生による人工衛星などの通信障害を注意喚起、NICTが発表|日経クロステック
※5 太陽フレアを監視せよ!|国立天文台(NAOJ)
※6 地球を近々襲う可能性大、最大規模の太陽フレアによる甚大な被害|JBpress
※7 太陽の嵐|JAXA
※8 2年前に地球をかすめた太陽風、直撃なら200兆円の被害も|CNN
※9 2024年10月1日~9日にかけてXクラスフレアが6回発生|宇宙天気予報
※10 太陽フレアに伴う磁気嵐で「低緯度オーロラ」が出現 10月11日(金)明け方|ウェザーニュース
※11 宇宙天気予報|国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
※12 太陽フレアで大規模通信障害!?現代に与える深刻な影響とは|NHK防災
※13 宇宙放射線電磁バリア技術|NTT
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