知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート

“藻”を使用した石けんでお馴染みの「サキュレアクト」。微細藻類に着目し、石油に替わる化粧品原料や、その他消費財原料の製造を目指している。その活動は製品開発にとどまらず、環境問題の啓蒙にまでおよぶ。2024年10月19日(土)に開催されたビーチクリーンを、アンバサダーに就任したELEMINIST Followersが体験した。

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2024.11.07
Promotion: circuRE act

プラスチックがマイクロ化する前に。ビーチクリーンは最後の砦

サキュレアクト

プラスチック製のカゴか何かの破片。いまはまだ大きいが、いずれ微細なマイクロプラスチックとなり回収不能となってしまう。

海に捨てられたペットボトルが分解されるには、約400年もかかる(※)という。人間の寿命すらもはるかに超える途方もない年月だ。にもかかわらず、世界では毎年800万トンものプラスチックごみが海に流れ出している。その数は2050年には魚よりも多くなる勢いだ(※)。人体や生態系に及ぼす影響は計り知れない。

ペットボトルしかり、私たちの暮らしにとって身近な存在のプラスチックだが、今や海洋汚染として問題視されるようになった。プラスチックごみはやっかいなことに、一度海に流出すると回収が難しい。紫外線による劣化や波に削られ、5mm以下のプラスチックごみ、極小のマイクロプラスチックとなってしまうからだ。

マイクロ化する前に何とか阻止したい。そのための有効な手段が、ビーチクリーンだ。「サキュレアクト」代表の塩原祥子氏も、「ビーチクリーンが最後の砦」だと訴える。街から飛ばされてきたペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみを、海へ流出させることなくビーチで食い止める。

「サキュレアクト」では「team530(チームゴーサンマル)」として、2023年よりビーチクリーン活動に取り組んでいる。海に生息する微細藻類という藻を培養し、抽出したオイルで石けんやその他サステナブルな原料をつくる会社にとって使命だと考える。

「ただビーチクリーンに参加するのではなく、ごみを出しているのは私たちだという当事者意識を持って学んでほしい」。そんな思いではじめたという活動は、環境問題についての講義とビーチクリーンがセットになったもの。ごみを知って、ごみを拾うことで“自分ごと化”してもらうのが狙いだ。

今回は「サキュレアクト」の姿勢に共感するアンバサダー、ELEMINIST Followersの5名も参加した。海洋汚染の現状を知り、実際にごみを拾うことによってどんな気付きがあり、毎日の暮らしにどう活かしていけるのか。彼らの体験をレポートした。

「藻」から化粧品づくりに挑むサキュレアクト ELEMINISTからアンバサダー10名が就任

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ごみを拾う前に、海洋プラスチック問題の現状を知る

8Hotel

「team530」主催のビーチクリーンが行われたのは、茅ヶ崎にあるホテル「8HOTEL CHIGASAKI(エイトホテルチガサキ)」。アメリカのモーテルをイメージしたというホテルはサウナとプールを有し、湘南カルチャーを体感できる人気スポットだ。

この日はELEMINIST Followers含め、20名ほどが集まった。参加者は家族連れや友人同士、一人で参加する人も少なくない。まずは「サキュレアクト」代表の塩原氏から、環境問題の現状について学ぶ。

サキュレアクト

床に座るスタイルでリラックスした雰囲気のなか、塩原氏の軽妙なトークにみな聞き入っていた。

「暑いですね。今日は10月の何日ですか?」そんな塩原氏の問いかけからスタートした。10月も中旬だというのに、関東は30度近くと真夏日予想。まさに異常事態だ。そこから温室効果ガスによる気候変動、海洋プラスチック問題へと話が続く。クイズ形式で、参加者自ら考えながら理解を深めるスタイルだ。いくつか紹介しよう。

世界人口12位の日本が、プラスチック消費量2位の意味

「プラスチックの生産量が一番多い国はどこか?」(選択肢は中国、アメリカ、日本)。正解はアメリカ。ちなみに2番が中国で日本は3番目だという。アメリカの人口は3.3億人、中国は14億人だ。対して日本は1億2千万人。これをどう捉えるか。実際、プラスチックの消費量でみると、日本はアメリカに次いで2番目に多い。「世界人口12位の日本がプラスチックの消費量で2位になるということは、私たち日本人は使いすぎなんです」と塩原氏。

プラスチックごみ問題の背景にある、豊かな国による搾取

サキュレアクト

プラスチックごみであふれる長崎県対馬市。海流に乗ってごみが流れてくる。

写真が1枚紹介された。“世界一汚い川”との悪名を持つ、チタルム川だという。川面を覆い隠すように浮かぶ白い物体。そのほとんどはペットボトルだ。川の水自体も工場排水によって汚染され、近隣の住民たちが吐き気や頭痛に悩まされている。

「この川はどこの国にある?」(選択肢はマレーシア、インドネシア、タイ)。正解はインドネシアだ。川を埋め尽くすペットボトルはインドネシアの人たちが出したごみではない。私たち先進国が出したものだという。2017年に規制されるまで、廃プラスチックは資源という名のもとに輸出されていた。日本の輸出先は中国がもっとも多く、次いで台湾や東南アジアだ。しかし、実際には資源としてリサイクルできないものも多く、相手国にごみを押し付けるような形になっていたという。

「私たちが出したごみで、インドネシアの人たちが苦しんでいる可能性もあります」と塩原氏。「先進国の豊かな暮らしのしわ寄せが、なんの関係もない発展途上国の人々にいっている現状を知ってほしい」と訴えた。

そして同様のことが、ここ日本でも起こっているという。日本一海洋ごみが多いと言われる長崎県対馬市だ。海流にのって中国や韓国からプラスチックごみが流れつき、処分できずに問題となっているのだ。もはや対岸の火事ではない。

私たちは、自分で出したごみを自分で食べている……

サキュレアクト

クイズは3択。ただ聞くのではなくみんなで考えて“自分ごと化”していく。

「すでに毎日食べていると言われるマイクロプラスチック。カード1枚分食べるのにかかる時間は?」(選択肢は1ヶ月、1年、1週間)。正解は1週間! マイクロプラスチックを魚がエサと間違えて食べる。それを私たち人間も口にする。極小のマイクロプラスチックは浄水器のフィルターもすり抜けるため、飲料水に入っている可能性もある。

ペットボトルだけではない。化粧品などに混入しているマイクロビーズなど、私たちの生活のさまざまな所にマイクロプラスチックとなりうる原料が潜んでいるのだ。「人間が出したごみを自分たちで食べている。因果応報ですね」と塩原氏。これはもう、他人ごとではいられない。

プラスチックのリサイクルは、単一素材でないと難しい

私たちにできることは何か。「まずはごみにしないこと。リデュース(減らす)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)が大切です」と塩原氏は話す。この順番も重要だ。リサイクルへ回す前に、ムダな買い物を減らし、ごみにならないよう繰り返し使って、製品を長期利用することが何よりも肝心なのだ。

リサイクルについていうと日本の現状は厳しい。リサイクル先進国のEUと比べると極端に低いという。そもそもプラスチックは単一素材でないとリサイクルができない。実はプラスチックにも種類があり、分別では7種類ほどに分けられる。ペットボトルを本体のペットとフタに分ける必要があるのもそのためだ。混合物については燃やすか埋め立てるしかない。

日本では、燃料として再利用する「サーマルリサイクル」が6割を占めるという。私たちが分別したプラスチックごみの多くが、可燃ごみの着火剤として利用されているという事実に驚きを隠せない。リサイクルは本来、ごみを原料として再利用するもの。その「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」よりも燃やす方が多いのだ。「この国のリサイクルは本当に問題。ペットボトルのように90%近くリサイクルできている素晴らしいものもあるが、それ以外は進んでいません」。

洋服についても同じことが言える。ポリエステル100%の商品であればリサイクル可能だが、そこにアクリルや麻などが入ると混合物となり本来のリサイクルが難しくなる。「すてきな服をみつけても、素材が混合だったらリサイクルしにくいので買わない。そういう選択基準になりました」と塩原氏は自身の体験を語った。

私たちにできることはある! 今日から取り入れたい6つのこと

サキュレアクト

「サキュレアクト」代表の塩原祥子氏。長らく化粧品会社にいたため、廃棄のなかでも容器に多く使われているプラスチックごみの現状を身を持って知っている。

講義の最後には、今日からできることとして下記の6つが伝えられた。

1.可燃ごみを分別して資源ごみを増やそう
紙はできるだけ資源ごみとして出す。例えばティッシュ箱や包装紙、封筒などは「雑がみ」として分別すれば、資源として再利用できる。ただし、フィルムなど紙以外の素材が付着している場合は取り除く。ちなみに、レシートは感熱紙のためリサイクルできない。紙ではないので気をつけよう。

2.買い物は必要なものだけを購入しよう
買い物をするときは、本当に必要なものか考える。そして買ったものはできるだけ長く大切に使う。「先進国の豊かさは素晴らしいですが、お金があればあるほど物を大切にしない。簡単に捨ててしまいます」。

3.過剰な包装は断ろう
スーパーなどでは、レジ袋を断っても薄いポリ袋に詰められることがある。不要なものは断ろう。「キュウリなどの野菜も袋に入れる必要はあるのか。過剰なサービスでは? 小売側が変わるべきところかもしれません」。

4.洗濯ネットを使用しよう(マイクロプラスチックが流出しないタイプ)
洗濯ネットのなかでも「マイクロプラスチックが流出しない、内側にフィルターがあるタイプを選んで」。ELEMINIST SHOPではGUPPYFRIEND(グッピーフレンド)の「Washing Bag(ウォッシングバッグ)」も扱っている。

5.節電をしよう
電力消費の3割は家庭によるもの。そのためCO2削減効果も高い。こまめに部屋の電気は消す、使っていない家電の電源プラグは抜く、家電を買い換えるときは省エネ性能の高いものを選ぶなど、できることからはじめよう。

6.街なかでごみを見たら拾って、ごみ箱へ
街なかのごみが排水溝や風によって河川や海に流出し、マイクロプラスチックとなってしまう。「ビーチクリーンに参加できなくても、家の近所のごみを拾うことならすぐにできるはず!」

サキュレアクト

紹介された今日からできることを、どのように暮らしに取り入れるかなど、会場では活発な意見交換がされていた。

会場がホテル内にあるサウナ後のととのえ部屋だったのもあり、リラックスした雰囲気ではじまった塩原氏による講義。目を背けたくなるような現状に驚きの声があがることもあったが、暗いムードにならないのはさすが。熱心に聞き入る参加者の姿が印象的だった。

講義のあとは、「8HOTEL CHIGASAKI」内のカフェラウンジにてランチタイム。メニューは、ホットドッグorソイミートのチリコンカンドッグの2種類から選べる(別途1人1000円)。セットのオーガニック野菜を使ったスープが好評だった。一人参加の方もお互いに声をかけ合い、心地いいコミュニケーションが生まれていた。

いよいよビーチクリーンへ

サキュレアクト

ホテルから茅ヶ崎の海岸までは大人の足で15〜20分ほど。会話しながら歩いているとあっという間に到着。スタッフからトングとごみ袋、手袋が配られ、もらった人からビーチクリーンを開始する。

この日は風が強く、回収するのも一苦労。拾ってもすぐに飛ばされてしまう。それにしても、プラスチックごみの小ささに驚く。カラフルな色味のため目立つが、かなり目を凝らさないと見逃してしまう。「もはやトングより手で拾う方が早い!」という参加者もいた。

30分ほどで終了の合図。回収したものを見せ合うと、お菓子の袋や、ビニールひも、漁網に、何か不明な大物も! ごみ袋にして2つ分。今回は少ない方だという。

サキュレアクト

最後は塩原氏の「ごみゼロー!」のかけ声とともにお決まりのポーズをつくって記念撮影。ここで現地解散となった。

参加したELEMINIST Followersの感想は?

家族やお子さんと一緒に参加した方もいた5人のELEMINIST Followers。それぞれのライフスタイルから海洋プラスチックごみについてどのように感じたのか。率直な感想を聞いてみた。

環境問題は地球に住むみんなの問題。俯瞰でみる大切さに気づいた

サキュレアクト

「今日、はじめて知ったことも多かったです。インドネシアの世界一汚い川、チタルム川の問題も知らなかった。自分の周りのことだけではなく、もっと世界を俯瞰でみる必要があるなと思いました。

洗濯ネットはぜひ取り入れたいです。洗濯ネットに種類があるなんて驚きでした。コロナ禍以降、衛生感が高まったのか、洗濯の回数も環境への負荷も増えたような気がします。使うことでマイクロプラスチックの削減につながるとうれしいです」(磯村さん/@yukieisomura)

ビーチクリーンはいいことだけど、プラスチックごみをなくすことが目標

サキュレアクト

「ビーチクリーンには、今までも参加したことがありました。エシカルな暮らしと同じようにいい活動だと思っていたのですが、本当はプラスチックごみを減らし、ビーチクリーンをしなくてすむ世の中になったほうがいい。そのことに今日、気づかされました。

塩原さんの『豊かになるとものを大切にしなくなる』という言葉が印象に残っています。私は豊かになればなるほど、エシカルなライフスタイルになると思っていたんです。そして、デニムからもマイクロファイバーがたくさん発生すると知ってびっくり! 洗濯するときは、ちゃんと洗濯ネットに入れようと思いました」(津野ゆりさん/@tsuno__chan)

子どもの世代にもかかわること。親として他人ごとではいられない

サキュレアクト

「エシカル初心者なので基本的に知らないことばかり。毎回勉強になります。日々の洗濯からもマイクロプラスチックが出ていて、私たちはすでに食べていると知って怖くなりました。一人がやったところで変わるのか?と思うこともありますが、子どもたちの世代にかかわる話です。今日は一緒に学ぼうと思って、子どもと参加しました。

プラスチックごみの分別でいうと、以前、コンビニのペットボトル回収機を利用していました。ポイントがつくので(笑)。自治体だけでなくコンビニやスーパーも利用しながら、無理せず等身大でやっていきたいです」(@takigawa.nahokoさん/写真右)

遠い未来の話ではない。緊急性を持って取り組む必要がある

サキュレアクト

「環境問題について具体的な数字でみると、パンチがあってわかりやすかったです。2030年には、現在の地球1.75個分から地球2個分の資源を使うことになるなど、近い未来の話ばかり。緊急性をもって取り組む必要があると実感しました。

根本にあるのは、すべてが過剰なんだと思います。ごみを減らしたいと思っていても、スーパーにいくと過剰にプラスチックで包装された野菜が並んでいます。“適量でいい”ということをどう発信していけばいいのか? 発信しつづけることで目に触れる機会を増やす、友達に伝えるなど、小さなアクションの積み重ねが大切なのかなと感じています」(haluさん/@haluchn)

子どもにも海洋プラスチックごみについて伝えていきたい

サキュレアクト

「今日は家族3人で参加しました。近辺に住んでいるので、子どもが小さいときからビーチクリーンは日課でした。この辺りの方はみんなマイトングやマイ手袋を持っていて、よくやっているんです。海の恩恵を受けているので還元したいと思って。今日のように人数が多いと一瞬で終わっていいですね。

子どもにも海洋プラスチックごみについて教えています。『プラスチックごみがお魚さんのエサになっているんだよ』と話していたら、街に出てもごみが落ちていたら拾うようになりました。ふだんからごみを減らすためにコンポストなどさまざまなことをしています。ただ個人では限界もあり、なかなか難しいなと悩んでいます……」(いくらさん/@veg.icura)

プラスチックごみを減らすために、私たちが変わろう

サキュレアクト link

「team530」のイラストが描かれたフラッグ。Instagramでもポップなイラストを使った“暗くない”環境問題を投稿している。

エシカル感度の高いELEMINIST Followersなら、海洋プラスチックごみの問題について、ある程度の知識はあっただろう。今回、改めて海洋プラスチックごみについて“学び”、ビーチクリーンを“体験”することによって、より自分ごととして考えられるようになったのではないか。情報として知るだけでなく、自分で体感することの大切さを感じたイベントだった。

ただごみ問題ともなると、国や自治体、企業の対応など、社会のシステム自体を変える必要性を感じた人もいたようだ。

「社会を変えるには、消費者が変わる必要があります」と塩原氏は話す。私たちが声をあげればメーカーなどの提供側も変わらざるを得ない。消費者がかしこくなり、メーカーがつくる責任を果たすことで社会全体が変わっていくという。マイクロプラスチックを食べなくていい未来のために、今日からできること、そして買い物という投票で意思表示をしていこう。

team530ではインスタグラムで環境問題のこと私たちが日常で取り組めることを日々紹介している。是非フォローして情報を仕入れてみてはいかがだろうか?

11月16日(土)今年最後のビーチクリーンが開催される。
興味のある方はteam530のホームページへ。
https://circureact.com/team530_news/recruitment/20241116/

team530インスタグラムはこちら

※ WWF|海洋プラスチック問題について「海洋ごみが分解されて細かくなる年数」

撮影/岡田ナツコ 取材・執筆/村田理江 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2024年11月7日時点のものです。

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