地盤沈下の原因は? 引き起こされる条件や仕組みを解説

コンクリートにひび

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日本の地盤沈下の主な原因は、地震などの自然発生的な場合と、地下水の過剰な汲み上げなどによる人為的なものがほとんどだ。この記事では地盤沈下が引き起こされる条件と、それにより起こり得る被害や影響について言及する。

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2024.11.20

地盤沈下 原因とは

黄土色の地面にひび

Photo by mario caruso

地盤沈下とはどのような原因で起こるのか、仕組みや地盤沈下の種類についてまずはみていこう。

地盤沈下が起こる仕組み

地盤沈下とは、主に地下水の過剰な汲み上げによって地下水位が下がり、地層の収縮(粘土層の収縮)を引き起こして地表面が少しずつ沈んでいく現象を指す。地盤沈下は粘土層が厚くて軟弱な地盤ほど発生しやすく、一度沈下した地盤は元に戻らないため、引き起こさないための対策や注意が必要とされている。(※1)(※2)

広域地盤沈下と局地的地盤沈下の違い

地盤沈下のうち、広域地盤沈下と局地的地盤沈下の違いは以下のとおりである。

・広域地盤沈下
広域にわたって起こる地盤沈下であり、地下水や石油、水溶性天然ガスなどの液体資源を人為的に抽出することで地表面が広がって沈下する現象。一般的に地盤沈下とはこちらのことを指す。

・局地的地盤沈下
局地的に起こる地盤沈下であり、人為的工事で水位低下や地下水排除が引き起こされて沈下する現象。工場から数十〜数百メートル圏内で発生しやすい。(※3)(※4)

地盤沈下の原因

道路

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ここでは地盤沈下が引き起こされる原因について解説する。

地下水の過剰な汲み上げ

地盤沈下が引き起こされる原因の多くは、地下水の過剰な汲み上げである。地下水は基本的に雨水や河川水などの地下浸透によって自然に養成されるが、それを上回る勢いで地下水を汲み上げると、砂れき層などの帯水層の水圧が低下し粘性土層の間隙水が帯水層に排出されていく。その結果、粘性土層が収縮して地盤沈下を引き起こすというわけだ。(※1)

自然な地質現象

地盤沈下が引き起こされる原因のひとつに、自然な地質現象も挙げられる。環境省が公表した「令和2年度 全国の地盤沈下地域の概況」によると、全国で地盤沈下が認められた主要の地域と、約260万年前に相当する時代に堆積した地層の分布がともに重なっていることが明らかになった。

したがって地盤沈下と地質は密接な関係にあり、自然な地質現象によって引き起こされたと推測されている。(※1)

地震による影響

地震による影響でも地盤沈下は引き起こされる。地震の揺れで地盤のバランスが崩壊し、重い砂や土は下へ、反対に軽い水や空気は上へと押し出されることで液状化現象が発生する。そうなると、不同沈下を誘発するおそれがあるため注意が必要だ。(※5)

人間活動による要因

人間活動による要因で引き起こされる地盤沈下もある。たとえば、地下水の過剰な汲み上げや天然ガスかん水の採取などだ。

千葉県が公表した「令和3年 千葉県における地盤沈下の概況について」によると、地下水の過剰な汲み上げや天然ガスかん水の採取を行う調査対象地域において、2022年1月時点で約3分の1の地域で地盤沈下が見受けられたと報告されている。(※6)

インフラ開発による影響

地盤沈下が引き起こされる原因に、インフラ開発の影響が挙げられる。たとえば、大規模な建築物やインフラの建設などは地盤に大きな負荷がかかるため、地盤が圧迫されて地盤沈下を進行させる要因となる。また軟弱地盤での建設はその重さによって沈下が生じる可能性があり、地盤沈下が過大な場合は周辺の地盤も沈下や隆起を引き起こすおそれがあるため注意が必要だ。(※5)

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地盤沈下によって起こる被害と影響

グレーの地面にひび

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地盤沈下によって起こる被害は、直接的な面と間接的な面がある。直接的な被害では、不同沈下による建物の傾斜や道路のひび割れ、亀裂や陥没、下水道の配管破損、地下埋設管の折損などだ。間接的な被害では、地表面と河川や排水路の水面との高低差がなくなることで排水が悪化し、集中豪雨などが起きた際に、浸水被害を発生させてしまうおそれがある。

そのほか排水の不良やビルなどの抜け上がり、湿地帯(水を多く含む地帯)の出現、ゼロメートル地帯(海抜が平均海水面と同じかそれ以下の地帯)の出現なども発生するおそれがある。また被害が発生した場合の復旧は容易でないため、私たちの日常生活にも大きな支障を与えるとされている。(※3)(※7)

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地盤沈下の事例

グラウンド

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ここでは地盤沈下の事例について解説する。

リニア工事近くで地盤沈下

岐阜県瑞浪市にあるリニア中央新幹線のトンネル工事現場において、周辺で地盤沈下が観測された。これに対しJR東海は、もっとも大きな沈みがある場所は2024年8月よりさらに1cmあまり地表面が低くなったことも明らかにしている。

さらに、リニア工事による地下水の流出が影響しているおそれがあるとして、2024年9月からおよそ60世帯の近隣住宅や公共施設に被害の影響がないか現地調査を開始したところ、「コンクリートにひびが入った」「ドアが開きにくくなった」などの声が寄せられた。(※8)

東日本大震災で地盤沈下

2011年は全国で年間2cm以上沈下した地域が14地域もあった(平成22年度は6地域のみ)。また該当した地域の多くは東日本大震災の震源地に近い地域であったため、同年に起きた3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)による影響が大きいと考えられている。

地震の影響による地盤沈下は継続して起こるおそれがあるため、長期的に沈下の状況を把握していく必要がある。同時に、1994年に発生した大渇水のような地下水の需要が急増した場合には、一時的に地盤沈下が拡大するおそれもあるため、ふたたび同じような地震が発生した際には地下水の採取状況にも注意していく必要がある。 (※9)

産業活動による人的要因で地盤沈下

人為的なもので引き起こされる地盤沈下の原因には、トンネル工事や地下水の過剰な汲み上げ、天然ガスの汲み上げ、大規模な建築物やインフラの建設、地下の鉱物資源の採取などが挙げられる。

戦後の日本産業は都会を中心に急速に発展していったことで、工業地帯の拡大や人口集中が著しかった。その結果、都市用水の需要はあっという間に増大したが、工業用水は地下水に依存することが多かったため、この地帯での地盤沈下が拡大していった。(※10)

地下水の汲み上げにより地盤沈下

地盤沈下は地下水の過剰な汲み上げにより地下水位が下がり、粘土層が収縮することで地盤沈下が引き起こされる。日本は1950年代から1970年代前半の石油ショックまで、産業活動の拡大に伴い地下水揚水量も急激に増加した。

愛知県でも地盤沈下が著しく進行したが、対策として1974年より「旧公害防止条例」による地下水揚水規制を実施した。また尾張工業用水道をはじめとする代替水源の確保や整備、水の節水などによって尾張19市町村における地下水揚水量を、1975年度のもっとも地盤沈下が激しかった頃から2019年度には減少させることに成功している。

しかし一度沈下してしまうと元の状態には戻らないため、沈下量は年々蓄積されていき、年間の沈下量が少なかったとしても、長期的に見た場合に建造物の損壊や洪水時に浸水増大を引き起こすおそれがある。したがって地盤沈下が起きてからの対策よりも、起きないための予防措置がとくに重要とされている。(※2)(※11)

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地盤沈下の原因を知って私たちにできること

ひび割れた地面

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日本の地盤沈下は地震などの自然発生的な場合もあるが、多くは地下水の過剰な汲み上げや水溶性天然ガスなどの液体資源を人為的に抽出することで発生する。地下水の過剰な汲み上げを行わないためにも、私たちも日常的に水の使いすぎには注意し、こまめな節水を心がけるといいだろう。一度沈下した地盤は元に戻らないからこそ、地盤沈下をさせないための対策を私たちも考えて行動していきたい。

※掲載している情報は、2024年11月20日時点のものです。

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