フィリピン発「100%堆肥化できる袋」 現地のグリーンウォッシュに対抗

Photo by EcoNest Philippines

プラスチックごみの海洋流出が問題視されるなか、フィリピンでプラスチックを使わない包装の選択肢が少ないことを危惧した起業家が、キャッサバやサトウキビ由来で堆肥化可能な包装資材を販売。“見せかけのエコ”を防ぐ活動が広がりを見せている。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2024.09.24
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原料は キャッサバやサトウキビ

キャッサバのイメージ写真

Photo by EcoNest Philippines

環境に配慮した各種包装を展開する、フィリピンのエコネスト・フィリピンズ。同社の創業者であり社長を務めるニッキー・セビラ氏は、堆肥化可能なパッケージング・メーカー、サチ・グループと協働し、「アコ・パッケージング(Ako Packaging)」というベンチャーを立ち上げた。

アコ・パッケージングのコンセプトは、循環型経済に貢献する持続可能なパッケージングを創造すること。地球から生まれ、地球に還る、再生可能なバイオプラスチックが“標準的な”素材となる未来を目指す。

キャッサバやサトウキビを粉砕してつくられる袋は100%堆肥化可能だ。生ごみと一緒にコンポストに入れれば、およそ45~64日で生分解する。また、お湯の中に入れれば簡単に溶けるため、溶かした湯を畑にまいてもいい。

フィリピンでは廃棄物の焼却処理が原則的に禁止されているため、堆肥化できるこの袋は、廃棄物削減にも貢献。さらに、原料のキャッサバやサトウキビを地元で調達することで農家の生活も支える。ビジネス、コミュニティ、自然が循環するように考えられているのだ。

企業は消費者にウソをついてはいないか?

『Tatler』の記事によると、ニッキー・セビラ氏はこの取り組み始めたきっかけを、「フィリピンには堆肥化可能な包装資材がないことが気になっていた」と話している。

「環境にやさしいとか生分解性があると謳いながら、ラベルを見るとプラスチックが使われている。企業がこのようなことをすれば、私たちは人々にウソをついていることになります」と、日和見主義的な環境意識の企業が少なくないことに警鐘を鳴らす。

フィリピンの包装業界にはびこる、実態のともなわない環境活動をうたうグリーンウォッシュに危機感を覚え、循環性を促進することが急務であると確信。2018年にエコネスト・フィリピンズを設立したのだ。

非プラスチックという製品の特性だけでなく、持続可能な取り組みに対する信頼性を高めるためにベンチャーを新たに立ち上げて、いまに至る。

消費者は持続可能な取り組みを求めている

EcoNest Philippinesのメンバー

Photo by EcoNest Philippines

「エコネスト・フィリピンズ」の創業者兼社長であるニッキー・セビラ氏(写真左から2番目)と仲間たち。

グリーンウォッシュとは、エコをイメージさせる「green」と「whitewash」(ごまかす、うわべを繕う)を組み合わせた造語。企業が環境に配慮しているかのように装う、グリーンウォッシュを規制する流れがEUを中心に世界に広がっている。

取り締まりを強化する波はアジアも例外ではないが、フィリピンではいまだ多くの企業が「サステナビリティ」という言葉を乱暴に使っていると指摘する地元メディアもある。

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ネット・ゼロへの移行を推進するフィリピン最大の企業団体「Net Zero Carbon Alliance(NZCA)」は、「フィリピンの企業がどのように具体的な行動を起こし、グリーンウォッシュの可能性から脱却できるかについては、まだ詳しく検討されていない」という。だが、同アライアンスは「再生可能エネルギーなどの介入から始め、フィリピンの企業が取ることのできる脱炭素化に向けた実践的な対策に貢献する」と説明する。

アコ・パッケージングの袋には「Hindi Ako Plastic(私はプラスチックではない)」とプリントされている。ニッキー・セビラ氏が掲げるこの誠実なメッセージに賛同するように、彼女の周りに人が集まり、コミュニティの輪が広がっている。

消費者が正しい情報を求める動きは、今後も加速するだろう。

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※掲載している情報は、2024年9月24日時点のものです。

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