SDGs達成度1位のフィンランド その理由と具体的な取り組みを解説

雪が降るフィンランドの街並み

Photo by Alexandr Bormotin on Unsplash

SDGs達成度ランキングで4年連続1位を獲得したフィンランド。SDGs先進国としてだけでなく、福祉制度が充実していることなどから「世界一幸せな国」としても知られている。本記事では、フィンランドのSDGsの取り組みや、SDGs達成度が高い理由を紹介する。

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2024.07.31
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フィンランドはSDGs達成度ランキング1位

ヘルシンキの街を路面電車が走る様子

Photo by Tapio Haaja on Unsplash

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称のこと。2015年9月の国連サミットにて、加盟国の全会一致により採択された世界共通の目標だ。いま私たちが直面しているさまざまな課題に紐づく17の目標と169のターゲットで構成されている。達成年限は2030年であり、「誰一人取り残さない」ことを基本原則としている。

世界各国がSDGsの達成に向けて取り組みを行っているが、達成度の指標になるもののひとつに「Sustainable Development Report(持続可能な開発報告書)」がある。同報告書は、毎年6月に国際研究組織である「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が発表しているもの。各国の取り組みが、ランキングとともにレポートにまとめられている。

2024年に発表された「持続可能な開発報告書2023」によると、SDGs達成度ランキングの1位はフィンランド。4年連続で1位を獲得している。上位は欧州の国々が占めており、日本は18位という結果だった。(※1)

フィンランドは、いかにしてSDGs達成度のトップを走り続けているのだろうか。以下では、フィンランドがどんな国であり、なぜ達成度が高いのか、事例も含めて見ていこう。

フィンランドとはどのような国か

フィンランドの雪景色

Photo by Kristaps Grundsteins on Unsplash

フィンランド共和国は、北ヨーロッパに位置している。人口は約555万人で、面積は日本よりやや小さい。国土の約3分の1が北極圏だ。

以下では、フィンランドの特徴をもう少し詳しく紹介する。

豊かな自然に恵まれている

フィンランドは国土の約75%を森林が占めている。世界最大規模の群島エリアや湖沼地帯を有する、自然に恵まれた国といえる。手つかずの自然を満喫できる国立公園も多く、自然と共生する文化が根付いている。フィンランドの国立公園は、無料で年中開放されており、アクティビティを楽しめる場所も多い。

また、フィンランドでは、そこに住む人にも観光で訪れる人にも「自然享受権」が認められている。土地の所有者に迷惑をかけない、自然に敬意を払うことが前提で、ルールに則ったうえで自然を存分に楽しむことができるのだ。キノコやベリーなどの収穫も問題ないとされている。(※2)

観光も盛ん

サンタクロースやムーミンの故郷などでも有名なフィンランドは、観光に訪れる人も多い。

1年を通して本物のサンタクロースに会えるサンタクロース村への観光や、最北地域であるラップランドでのオーロラの観賞が人気だ。また、フィンランドにはサウナが多い。ヘルシンキ大聖堂をはじめとする歴史的建造物も多く、エリアごとに異なる魅力を持っている。(※3)

「世界一幸せな国」といわれている

国連の機関であるSDSNが発表している世界幸福度ランキングでは、フィンランドが7年連続で1位を獲得している。フィンランドは北欧型福祉国家であり、社会の平等性を重視している。社会保障負担費は多いものの、福祉や保健のサービスが公的に賄われ、かつ、充実していることも結果に関係しているだろう。(※4)

しかし、根本的には、フィンランド人の幸福は、彼らの生活スタイルにあると考えられている。自然と密接につながり、新鮮な食材をいただき、持続可能な生活を送る、そんなライフスタイルに幸福を見出しているのだ。(※5)

SDGs達成度ランキングは1位

繰り返しになるが、フィンランドはSDGs達成度ランキングで4年連続トップに輝いている。2位はスウェーデン、3位はデンマーク、4位はドイツと、前年と同じ国が引き続き上位を占めた。(※6)

【2023年最新】世界幸福度ランキング 1位はフィンランド、日本の順位は?

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フィンランドのSDGs達成度が高い理由

ペンでノートに書く様子

Photo by Unseen Studio on Unsplash

2024年に発表された「持続可能な開発報告書2023」によると、フィンランドはSDGsの目標1「貧困をなくそう」と、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の達成を高く評価されている。ほかにも、10の目標においての達成度の進捗が良好だ。(※7)

具体的な取り組みについては、「フィンランドにおけるSDGsの取り組み事例」で紹介するが、ここでは、フィンランドのSDGs達成度が高い理由を以下のように考察する。

「誰一人取り残さない」福祉を目指している

北欧型福祉国家を実践するフィンランドでは、社会サービスの多くが公的に賄われている。わかりやすくいうと高福祉・高負担であり、税率が高いが、国が国民全員の福祉に対して大きな責任を担っている。所得保障によって、すべての人に普遍的な平等をもたらしている点もポイントだ。(※8)

手厚い子育て支援や高齢者ケア、医療制度が実現しており、誰もが自分らしく生活していけることを保証している。フィンランドの福祉制度は、SDGsの根本的な考え方である「誰一人取り残さない」に通じるものがある。

教育の過程にSDGsを反映している

フィンランドは、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」の評価も高い。1996年の保育法の改正によって、6歳以下のすべての子どもが保育の権利を有することになった。2000年からは、6歳児を対象に、義務教育準備のための教育が行われるように。教育費は、小学校から大学院まで無料。給食費や文房具代なども必要ない。フィンランドでは、教育の平等性が重視されている。(※9)

また、フィンランドでは、教育の過程でSDGsについて学んでいく。例えば、幼稚園から大学までのカリキュラムに気候教育が組み込まれている。(※10)環境や社会の課題を自分ごととして捉えられるように、教育が施されるのだ。

SDGsの考え方が生活に浸透している

常に自然が近くにあるライフスタイルや国家のあり方、教育方針などもあり、フィンランドでは、SDGsの考え方が生活のなかに浸透している。SDGsを強く意識せずとも、古くから生活に根づいており、ナチュラルに実践されてきたのだ。フィンランドのSDGs達成度が高い理由の大部分は、ここにあるといえる。

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フィンランドにおけるSDGsの取り組み事例

大自然のなかで風力発電が行われる様子

Photo by Karsten Würth on Unsplash

ここからは、フィンランドの具体的なSDGsの取り組みを紹介する。

2035年までにカーボンニュートラルを達成

フィンランド政府は、2035年までにCO2の排出量をゼロにする目標を発表している。(※11)日本を含めた世界各国が「2050年カーボンニュートラル」を進めるなか、15年前倒しで達成するという野心的な内容だ。

石炭火力発電は、2029年までに全廃予定。現在、温室効果ガスを排出しない電力が約9割を占めている。(※12)あわせて、国土の森林を活かした取り組みを行い、達成を推進している。

ペットボトル回収マシーンの設置

フィンランドのペットボトル回収率は92%と、欧州諸国のなかでも高い。1950年代から、スーパーをはじめとする街中にペットボトル回収マシーンが設置されている。使用済みペットボトルと引き換えにデポジットが戻ってくる仕組みになっている。(※13)

サステナブル・トラベル・フィンランドプログラム

「サステナブル・トラベル・フィンランドプログラム」とは、2019年にフィンランド政府観光局が立ち上げた独自のプログラム。旅行業界における持続可能性を新たな規範とすること、フィンランドを世界でもっともサステナブルな旅行先のひとつにすることを目的に始められた。

プログラムの工程を修了し、基準を満たした企業や観光地に認定が与えられる仕組み。宿泊施設やレストラン、交通機関など、旅行産業に関わるあらゆる企業や観光地が対象だ。フィンランドの旅行産業全体がサステナブルな方向に進むだけでなく、環境への影響を最小限にしながら旅行をしたい観光客の選択を後押しすることにもつながる。(※14)

CO2削減のヒントを可視化する「Sitraライフスタイルテスト」の提供

フィンランド政府イノベーション基金(Sitra)は、CO2排出量を算出し、削減のヒントをアドバイスしてくれるアプリ「Sitraライフスタイルテスト」を作成し、無料で提供している。住居、移動、食事、消費といったライフスタイルに関する26の質問に答えるだけで、データを可視化。具体的かつ、現実的なヒントを与えてくれる。

フィンランドでは多くの人に使われており、実際に行動に移している人も多い。今後、テストは世界に広げられる方針だ。(※15)

「ネウボラ」や「ラヒホイタヤ」による福祉の充実

福祉大国であるフィンランドでは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に関するさまざまな制度が充実している。

例えば、子育て支援制度の代表的なものに「ネウボラ」がある。ネウボラでは、妊娠中から小学校入学に至るまでのさまざまな相談に無料でのってもらえる。対象期間中、一人の保健師が一貫して担当するというのも特徴だ。そうすることで、信頼関係を築きやすく、母親の育児における安心材料になり得る。専門機関と連携しており、多方面からのサポートを受けられるのも心強い。

「ラヒホイタヤ」 は、フィンランドの福祉資格。基礎看護師や歯科助手、救急助手、ホームヘルパーなどの10の資格を統合してつくられた職種であり、子どもから高齢者までの幅広い業務に対応できるのが特徴だ。多様な役割を柔軟に担えるため、効率的。日本同様、人材不足や高齢化などの課題を抱えるフィンランドの福祉を支える存在となっている。(※16)

フィンランド発の「ネウボラ」に学ぶ日本の子育て支援 取り組み事例と普及の課題とは

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フィンランドのSDGsに学ぶこと 私たちは何ができる?

フィンランドのSDGsの取り組みは、国家レベルで成熟しているものが多い。政策や風土、国民性……日本とは異なる点が多いかもしれないが、だからといって、私たちに何もできないわけではない。

フィンランドのSDGsの取り組みは、少なからず国民一人ひとりのアクションがあってこそ成り立っている。いま日本で、私たちにできることは何だろう?まずは身近なところから実践できることを見つけてみてほしい。

※掲載している情報は、2024年7月31日時点のものです。

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