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ミレニアル世代は、1981年から1990年代半ば頃に生まれた現在およそ28歳から43歳までを指す言葉。デジタルパイオニアとも呼ばれるこの世代は仲間や共有を優先し、環境・社会問題への関心が高いという特徴を持つ。似ていると言われるZ世代との共通点と違いとともに詳しくみていこう。
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ミレニアル世代とは、1981年から1990年代半ば頃に生まれた世代を指す言葉だ。2024年現在で20代後半から40代前半(およそ28歳から43歳まで)の人が該当する。「千年紀の」という意味の"ミレニアル"と名付けられているように、2000年代以降に成人や社会人になった世代をいう。
2014年のダボス会議(世界経済フォーラム)で"デジタル社会に適応し、今後の消費を大きく変える世代"として取り上げられたことがきっかけで注目された。(※1)アルファベットで表すと、前世代のX世代(1965年から1980年生まれ)に続きY世代とも呼ばれている。
ミレニアル世代は、子どものころにバブルが崩壊し、10代から20代に世界的な経済危機(2008年)、そして東日本大震災(2011年)を経験している。こうした時代的背景で育ったミレニアル世代には、どのような特徴があるのだろうか。次から詳しく見ていこう。
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ミレニアル世代の特徴として、主に次の5つが挙げられる。
1つ目は、ITリテラシーが高いことだ。1995年には、一般家庭に広く普及したパソコンのOSであるWindows95が発売された。1999年には、携帯電話でメールの送受信やウェブページの閲覧ができるiモードのサービスも始まっている。
ミレニアル世代は、子ども時代にパソコンや携帯電話が誕生し、その後のIT機器の目まぐるしい発展とともに成長してきたパイオニア世代ともいえるのだ。IT機器が身近なものであり、使いこなせる人も多いという特徴がある。
2つ目は、多様な価値観を尊重すること。ミレニアル世代は、国籍や年齢、性別にかかわらず個を尊重する。またジェンダーフリーの考えを持ち、LGBTQ+フレンドリーである人も多い。
背景には、インターネットやSNSなどを使い、さまざまな価値観を持つ人とつながる時代に育ったことが挙げられる。こうした環境の中で、多様性を受け入れる心が育まれたといえるだろう。
3つ目は、ワークライフバランスを重視すること。2007年、政府は人々の働き方に対する意識の変化などを受け、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章を策定した。また2010年には、新語・流行語大賞トップ10に「イクメン」が入った。
こうした時代に社会に出たミレニアル世代は、仕事とプライベートの両立を好む。また仕事を選ぶ際も、プライベートを確保できる働き方を重視する傾向にある。
4つ目は、物より経験を重視することである。生まれたときから物質的に困ることのなかったミレニアル世代は、前世代に比べて物欲が少ないといわれている。そのためレンタルやサブスクなど、物を所有しないサービスを好む。
一方でミレニアル世代が重視するのは、商品やサービスから得られる体験だ。旅行や趣味などの体験が自分に与えてくれる本質的な意味に、価値を見出す傾向にある。
5つ目は、環境問題・社会課題に関心があること。2000年代は、リサイクルや気候変動などへの関心が社会的に高まった。また2001年にアメリカ同時多発テロ、2008年に世界的な経済危機が起きた。
ミレニアル世代は、SNSなどを利用して情報を収集するなかで、こうした環境問題や社会課題に触れる機会も多い。世界中の情勢を自分に近いできごととして捉えたことが、問題への関心を高めたといえる。
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ミレニアル世代(Y世代)の次の世代は、Z世代と呼ばれている。Z世代は、1997年から2012年ごろに生まれた12歳から27歳まで(2024年時点)を指し、ミレニアル世代と比較されることも多い。この2つの世代について、共通点と相違点を挙げていく。
Z世代との共通点は①ITリテラシーが高いこと、②多様な価値観を尊重すること、③環境問題・社会課題に関心があることだ。
両世代ともITが日常にあり、デジタルでのコミュニケーションに慣れているほか、個人を尊重し多様性を受け入れる特徴がある。また環境問題・社会課題への意識も高い。
Z世代との相違点は、①ITリテラシーの深度、②環境・社会に対する関心の方向だ。
Z世代はデジタルネイティブと呼ばれ、幼い頃から確立したIT環境にいるため、デジタル技術により慣れ親しんでいる。また社会公正が問題になる中で育ったため、人種差別や男女格差などにより関心が高い。
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デジタルパイオニアと呼ばれているミレニアル世代は、何を情報収集源としているのだろうか。5つの主な情報収源を挙げてみよう。
テレビは、ミレニアル世代の情報収集源の1つである。Z世代もテレビは見るが、ミレニアル世代の方がより多く活用している。ミレニアル世代の大半を占める30代では、「生活や趣味に関する情報を得るうえでもっとも役立っているメディア」でテレビと回答した人が19%いた。これは30歳未満の12%よりも多い。(※2)
SNSサービスはさまざまなものがあるが、とくにLINEやInstagram、X(旧Twitter)を利用しているミレニアル世代が多い。フラー株式会社の調査によると、ミレニアル世代は1日のうちにスマートフォンアプリを利用している時間が6時間21分あり、そのうちSNSの利用時間は55分におよぶ。X世代のSNS利用時間は33分であり、明らかに長い。(※3)
ニュースサイトは、世の中のできごとや動きを知る媒体として、テレビの次に役立つとミレニアル世代は考えている。NHKの調査で30代が「世の中の出来事や動きを知るうえでもっとも役立っているメディア」と答えたのは、52%のテレビに次いで、Yahoo! の21%が多かった。(※2)
YouTubeをはじめとする動画配信プラットフォームは、生活や趣味に関する情報を得るときにテレビと同じくらい活用する傾向にある。NHKが行った調査では、30代が「生活や趣味に関する情報を得るうえでもっとも役立っているメディア」としてあげたのは、テレビが19%、YouTubeが20%とほぼ同数だった。(※2)また、先に紹介したフラー株式会社の調査でも、ミレニアル世代の動画アプリの利用時間は1日に54分であり、X世代の32分より長かった。(※3)
書籍は、テレビやニュースサイト、動画などに比べると、情報収集源としての利用は少ないようだ。
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ミレニアル世代の特徴や情報収集源などを踏まえて、マーケティングの観点から、効果的なアプローチを考えてみよう。
1つ目は、商品やサービスを通じて体験や経験を提供することだ。物よりも経験を重視するミレニアル世代は、経験に価値を見出す。そのため商品やサービスにお金を払うことで、どのような経験ができるのかをアピールするのが効果的だ。
例えば「商品を購入すると〇〇体験ができる」といったものや、イベントなどを通じて宣伝することが挙げられる。商品という物に体験の「コト」を加えたマーケティング戦略も1つの方法だ。
2つ目は、共感からの拡散を狙ったコンテンツの活用だ。SNSなどを利用しているミレニアル世代は、発信された情報に共感して商品やサービスを購入する。また、いいと思ったものは周囲に勧めるなどして、情報を拡散する傾向にある。
鍵になるのは、ミレニアル世代がSNSで拡散したいと思うような共感を得るコンテンツを作成することだ。コンテンツの作成には、有名人やインフルエンサーなど、この世代が影響を受ける人を採用するのも有効だ。
物欲の少ないミレニアル世代は、物を所有することよりもコストパフォーマンスを重視する傾向にある。そのため、レンタルや人と物を共有するシェアリングサービス、定額料金を払うことで商品やサービスを利用できるサブスクリプションサービスなどは魅力的に映るだろう。
シェアリングサービスなどは、人と共有することにより体験や経験もついてくる。コストパフォーマンスを意識するのと同時に、体験・経験価値のある商品であることを宣伝するのも効果的だ。
環境問題・社会課題に関心が高いミレニアル世代は、エシカル消費への関心も高い。エシカル消費とは、人や社会、地域、地球環境に配慮した消費行動のこと。安心・安全・品質・価格に次ぐ第4の消費の尺度とも言われ、"持続可能な消費"のひとつの物差しとして注目されている。
企業は環境配慮や貧困、児童労働、福祉、食品ロス、生物多様性の損失など、社会全体の問題に対しての自社の取り組みを積極的に訴求する。そういった方法もミレニアル世代へのひとつの効果的なアプローチといえるだろう。
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ミレニアル世代はデジタルパイオニアと呼ばれ、ITリテラシーの高さが特徴である。物より体験を重視する特徴も、ミレニアル世代のマーケティング戦略のポイントだ。
多角的なアプローチを行うときも、SNSの活用は欠かせない。共感・拡散してもらえるような魅力的なコンテンツを作成し、商品やサービスの販促につなげることが必要だろう。
※1 ミレニアル世代|JTB総合研究所
※2 NHK文研フォーラム2023_Z世代と「テレビ」世論調査部 保髙隆之/舟越雅
※3 日本人のスマホアプリ利用時間は1日あたり4.8時間と過去最多に|フラー
参考)・政府統計の総合窓口
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