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いま、注目を集めているESGコンサルタントという職業。どのような役割があるのか、注目される背景や選ぶポイントなどを解説する。またESGコンサルタントを目指す場合に必要なスキルや、将来性についても紹介しよう。
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まずはじめに、「ESG」とは、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の頭文字を合わせた言葉で、「企業を中長期的に成長させ続けていくためには、これら3つの視点が欠かせない」という考え方を意味している。
これらの3つの観点を考慮した投資活動や経営・事業活動を「ESG投資」「ESG経営」などと呼ぶ。
ESGやESG投資が注目されるきっかけになったのは、2006年に発表された「責任投資原則(PRI)」である。当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が、投資判断の新たな観点としてESGを紹介したことが、大きなターニングポイントになった。(※1)
ではESGコンサルタントとはなにか、その主な役割を解説していこう。
ESGコンサルタントとは、企業や投資家が持続可能な経営や投資を行えるよう、環境・社会・ガバナンスの3つの要素に関するアドバイスや戦略を提案する職業のことを指す。
ESGコンサルタントの主な役割には次の4つがある。
クライアントの事業やそれによる環境や社会への影響、SDGs(持続可能な開発目標)に関わる部分、現状のESG施策などの情報を収集しデータ分析を行う。同時に競合他社や業界のESG施策や動向の分析なども実施。
集めた情報や現状のESGパフォーマンスの評価を基に、改善策の検討と提案、ESG戦略の策定を行う。環境・社会・ガバナンスごとに具体的な施策の提示を行い、詳細な実行計画の立案が必要となる。
クライアントのESG関連のリスクやそれによる影響を特定し、リスクに対する戦略を策定する。環境問題によるリスク、社会問題によるリスク、ガバナンス体制の不備などによるリスクを精査し、リスクを最小限に抑えるための施策を考案する。
ESGへの取り組みを報告書にまとめ、ステークホルダーに情報開示する。継続的かつ透明性の高い情報開示が企業の信頼や評価につながるため、適切な開示が不可欠だ。
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なぜESGコンサルタントが注目されているのか、その背景について説明する。
環境破壊や経済格差、貧困問題といった環境問題・社会問題が深刻化するなかで、SDGs(持続可能な開発目標)の策定を筆頭に世界的な動きが活発になっている。それは国や企業、団体といった大きな単位のみならず、いち市民にも、その意識の高まりと行動の見直しが広がりつつある。
これまでの資本主義の影響で起こってきた諸問題に対して、反省と今後の改善が求められる時代になった。企業は、環境・社会・ガバナンスに配慮した経営を行わなければ、持続可能な経営は難しい。その意識の広まりがESGに大きな注目を集め、各企業が本格的な取り組みをスタートさせたと言えるだろう。
それと同時に企業や投資家などに、環境、社会、ガバナンスの3つの要素に関するアドバイスや戦略を提案するESGコンサルタントが注目されるようになった。
数多くの環境問題・社会問題が表面化するいま、自社の利益のみを追求する姿勢は、いずれ必ず限界を迎えるだろう。経営戦略のなかにESGの観点が見られない企業に対して、投資家たちは「企業として長期的成長の見込みがない」「企業価値を損なうリスクがある」と判断しがちだ。企業のESGに着目して投資先を選択する「ESG投資」が活発になりつつある。
企業が長期的に成長し、持続するために欠かせないESGは、企業価値を高めるとの認識が広まり、多くの企業がESG経営を行うようになった。このESG経営により、投資家からの評価を上げたり、リスク管理したりするために、ESGコンサルタントの需要が増えている。
深刻化する環境問題や社会問題に対応するため、関連する法規制が多くの国や地域で制定されている。法的遵守は企業の持続可能な経営を確保するために欠かせない観点だ。多様で複雑な法規制に適切に対応していくために、知識と経験を持ってクライアントをサポートしていくESGコンサルタントが必要だ。
また、環境・社会・ガバナンスへの企業の社会的責任に対し、消費者やステークホルダーが敏感になっている現代において、環境破壊や人権問題、コーポレートガバナンスの不備といった関連するリスクが立ちはだかる。それらは多岐におよび、想定を超える範囲でリスクに直面する可能性も出てくる。こういった状況において、専門的な知識を有するESGコンサルタントは重要な役割を果たすのである。
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ESGコンサルタントを選ぶ際の、3つのポイントを紹介する。
ESGコンサルタントやコンサルティングファームによって、得意とする分野が異なる。どのような専門性があるのかを知るために、いままでの実績を確認しよう。
自社のビジネスニーズと、ESGコンサルタントの得意分野や専門性がマッチするかも大事なポイントだ。そのためにはあらためて自社のビジネスニーズを確認し、サービス内容とを照らし合わせる必要があるだろう。
ESGは、継続的な取り組みが求められる。そのため初期の設計フェーズだけでなく、取り組みの実施後も継続的なサポート体制が整っているESGコンサルタントやファームを選ぶのがポイントだ。
具体的なサポートには、定期的なチェックと評価、改善点の洗い出し、最新のトレンドを組み込んだアドバイスなどがある。継続的なサポート体制により、ESG取り組みを効果的に進められる。
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ESGコンサルタントを目指したい人に向けて、年収、資格、将来性について解説する。
ESGコンサルタントは歴史の浅い職業であることから、年収の明確なデータはない。求人情報サービスを見てみると、年収は約300万~1000万円程度となっている。
企業によって年収に幅があり、経験やスキルがあれば高待遇となる傾向が見て取れる。このことから、実力しだいで高収入を目指せる職種といえる。
ESGコンサルタントになるために必要な専門的な資格は、いまのところない。ただし、取得しておくと役立つ資格は存在する。
たとえば、ビジネスレベルの語学力を証明できる資格だ。これは、ESG分野は日本よりも他の先進国が進んでいる現状があるため、英語をはじめとする外国語の資料に目を通すことも多いためだ。
また投資についての知識があることをアピールするために、アメリカの証券アナリスト資格である「CFA(Chartered Financial Analyst)」、MBA(経営学修士)、中小企業診断士といった資格を取得しておくと有利に働くだろう。
そのほかSDGs検定を取得すると、SDGsの基礎知識や世界的な課題について知識をもっていることをアピールすることができる。
ESGコンサルタントは、ESGの基本的な知識、それにまつわる社会問題などの知識が必要不可欠だ。なかでも、多くの関心を集める環境問題や気候変動などについてアドバイスや改善策を提案する際には、気象学や環境学などの専門知識を求められる場合もある。必要なスキルには、次のようなものが挙げられる。
・ビジネスレベルの語学力
海外の資料にあたったり、外国企業がクライアントになったりすることもあるため、ビジネスレベルの語学力があるとよい。英語はもちろん、中国語のスキルがあると活躍の場が広がるだろう。
・客観的・論理的思考力
客観的・論理的思考力は、クライアントの課題を把握し改善策を提案するうえで欠かせないスキルといえる。
・コミュニケーション能力
クライアントとスムーズにやりとりするための必須能力である。ESGの専門的な内容をわかりやすく伝えたり、相手の理解度に合わせて説明したりすることもコミュニケーション能力のうちだ。
・分析力・調査力
複雑な情報やデータを収集し、正確に処理する分析力や調査力は戦略を立てる際に必要となる。
・プロジェクトマネジメントスキル
プロジェクトマネジメントスキルは、クライアントの事業をサポートするために必要となる。
ESGコンサルタントとして働くには、まずはコンサルティングファームで経験を積み、大手コンサルティング会社や監査法人、ESGコンサルタントの専門部署を設けているコンサルタント会社、金融会社のコンサルティング部門などに転職する方法が一般的だ。また、将来的にはフリーランスとして独立することもできるだろう。
コンサルティング業務自体が未経験の場合は、まずは監査法人やコンサルタント会社に就職し、コンサルタントとしての経験を積んでから転職するとよいだろう。
ESGコンサルタントは歴史が浅い職種であるものの、ESGに対する取り組みの重要性が認知され、現在ではESGコンサルタントを雇用する企業が増加傾向にある。そのため今後も需要の高まりが予想でき、将来性のある仕事といえるだろう。
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専門的な知見をもつESGコンサルタントは、企業に持続可能な経営や長期的な発展をもたらすプロフェッショナルである。職業としてESGコンサルタントを目指すなら、コンサルタント会社、金融会社のコンサルティング部門などを経て、将来的にはフリーランスとして独立することも期待できる。将来性のある職業として、視野に入れてみてはいかがだろうか。
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