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給食は子どもたちの健康な発育には欠かせない大切なものである。その一方で、食べ残しや調理過程において食品ロスが発生していることも事実だ。この記事では給食で食品ロスが生まれる過程と、食品ロスをどのように削減していけばいいのかについて解説する。
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食品ロスは、本来まだ食べられるにもかかわらず、捨てられてしまう食品や食材のことを指す。一般家庭や飲食店・スーパーなどで発生し、傷んでしまった食品や注文しすぎて残った食事、余分に買いすぎた食材など、破棄せざるを得ないものが食品ロスにあたる。
また、食品ロスと似た言葉に「フードロス」「フードウェイスト」があるが、国連食糧農業機関(FAO)では異なるものと定義している。それぞれの意味の違いを解説していく。
フードロスは、食品の生産、製造、流通の一連の流れのなかで発生するロスを指す。フードロスの代表的なものに、農産物の収穫や加工のときに発生する規格外の作物などが上げられる。そのほかにも、運送中に傷んでしまったものもフードロスに当たる。サプライチェーンのなかで、あらゆる理由で破棄されるものがフードロスである。
フードウェイストは、小売や飲食サービス(レストランなど)、家庭で生まれるロスを指す。この言葉には「waste=無駄にする」という意味合いがある。
食品ロスは、フードロスとフードウェイストの両方を総称したものである。食品の生産から消費までの、あらゆる段階で発生する食品のロスを包括している。食品ロスの削減は、資源の浪費を削減することはもちろん、飢餓や栄養不良の解決に向けた重要な取り組みとされている。
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日本で出ている食品ロスは、2021年度の実績で523万トンになる。(※1)このうち、学校給食で出る食品ロスの内訳のデータについて、近年での正確な数値は公表されているものがないが、2015年度の実績で生徒1人あたりの給食の食品ロスが年間17.2kg、残食率は約6.9%だった。(※2)
食品のリサイクルの取り組みとして、約7割の市区町村が食べ残しの削減に取り組んでおり、調理方法の改善やメニューの工夫が行われている。
実際の食品廃棄物のリサイクル率は約59%で、肥料化がもっとも多く、次いで飼料化となっている。リサイクル率はほぼ横ばいで推移しているが、そのうち38%は焼却、他にもメタン化や直接埋立などで破棄されている。(※2)
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学校給食における食品ロスの主な原因は「食べ残し」「調理残さ」である。どのようにして起こるのか、それぞれ説明していく。
学校給食において、子どもたちが提供された給食を完食できないことが起こる。個々の子どもの食欲や好みはもちろん原因の一つだが、給食システムにも課題がある。
小・中学校の給食の時間はおよそ45〜50分ほどだが、実際には配膳の時間やその他の休憩時間が含まれていることもある。そのため食事の時間が制限され、給食を完食できないという問題が起こっている。また、食べきれない量が提供されることも、食べ残しの原因になっている。
調理残さとは、調理時に出る食材くずや余剰な部分などのことだ。この調理残さが学校給食での食品ロスの大きな原因の一つとされている。
学校給食における調理残さは、本来なら食べられる部分も多く捨てられていることが特徴だ。実際に、泥つき野菜の葉や皮つき野菜の一部が余分に取り除かれることがある。このような過剰除去は、食材の品質や見た目を向上させるためや、食べにくいと思われる部分を避けるために行われている。
多くの食材が無駄になっている現状から、食品ロス削減のために考えられる工夫について考えていきたい。
より多くの子どもたちに受け入れられるメニューの工夫が、食品ロスを削減する方法になり得る。残食量が多いメニューを把握し、その原因を分析してみる。子どもたちが好まない食材や味付け、あるいは量が多すぎるなどの問題点を探っていくことで、本当に必要なメニューも見えてくる。
まずは情報収集を行い、児童が好む味付けや食材を選ぶことで、メニューを改善していく。また栄養バランスや食事内容の多様化も目指し、残食を減らすための工夫が必要だ。
食材のカット方法や調理過程の見直しも必要だ。例えば食材のカット方法を変更することで、食材の有効活用を図り、調理残さを減らしていける。また調理過程での適切な火加減や調味料の使用量を見直し、食材の風味や栄養価を最大限に引き出すことも食品ロスの削減につながる。野菜くずなどを使ってふりかけにするといった工夫もできるだろう。
子どもたちに食品ロスの問題やその背景、そして持続可能な食生活の重要性について啓発することも、食品ロス減少のために必要だ。特別授業などを通じて、食品ロス削減の取り組みや地球環境への配慮について学ぶ時間を設ける。
また座学だけではなく、堆肥化施設や農家での体験学習などの実践的な活動を通じて、食品ロス削減の意識を高めていく必要もあるだろう。
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給食における食品ロス削減を成功させた事例を紹介していく。
群馬県高崎市箕郷学校給食センターでは、給食に関わるあらゆる視点から食品ロス削減に取り組んでいる。食品残さが発生しない食材のカット方法、子どもたちへの特別授業、学校や保護者に対しての啓蒙活動などを行っている。さらには地域の生産者と連携し課外授業を行うことで、子どもたちに食べ物の大切さを積極的に伝えている。
京都府宇治市では、市内の複数の小学校で給食における食品ロスの減少に取り組んでいる。食事の時間を十分に確保するための給食準備時間の効率化や、給食に関する学習の機会を設けるなど、子どもたちを対象としたアプローチを行っている。さらには啓発イベント「食べきりフェスタ」を開催し、間接的な市民への啓蒙も行い、宇治市全体で食品ロスの削減を進めている。
茨城県取手市では取手西小学校をモデルとして、小学校における食品ロス削減のための活動に取り組んでいる。生ごみ処理機を導入し環境に関する特別授業を行うほか、発生する野菜の切りくずや学校で発生した残食を堆肥化できるよう民間事業者と連携をはかり、食品残さを有効活用している。
そのほかにも、本来食材の切りくずとなる部位等を活用した献立の定期的な提供を行っている。また調理用の油をバイオディーゼル燃料の原材料として利活用できるよう、牛久市と連携するなど、幅広い視点から食品ロスに取り組んでいる。
学校給食における食品ロスの削減は、家庭からすると学校や自治体に任せる問題だと考えるかもしれない。たしかに給食の生産過程における食品残さの問題など、委ねる部分も多いが、家庭でも子どもに対して食品ロスや食事に関する知識の教育は必要だ。
成功事例からわかるとおり、食品ロスの削減には多角的な視点が必要である。家庭でも、子どもと一緒に食品ロスについて考える機会を設けてみよう。
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