使用済みのペットボトルや繊維くずからつくられるリサイクルポリエステル繊維「ECOPET®(エコペット®︎)」。衣料品や生活用品、産業資材まで、暮らしにおけるさまざまなものに活用されている注目素材だ。今回は、エコペット®︎が採用されている今春発売の最新アイテムを紹介する。
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エレミニスト編集部
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エコペット®︎は、使用済みペットボトルや繊維くずなどをリサイクルしてつくられるポリエステル繊維。帝人が、廃棄物を資源として循環させる研究を重ね、1995年に開発した。リサイクルという言葉がまだ浸透していなかった時代に誕生した、リサイクルポリエステル素材のパイオニア的存在と言える。
さまざまなファッション衣料に活用されているほか、高い機能性を付与できることからスポーツウェアやアウトドアウェアとも相性がいい。さらに、寝具やカーテンなどのインテリアから、産業資材、例えば、電車のクッション材、災害用毛布といったものにまで、あらゆるシーンで活用される用途の広さも注目される理由のひとつだ。
誕生以来、常に進化を絶やさないところも魅力だ。1995年にマテリアルリサイクルによってつくられたペットボトル由来のエコペット®が販売され、2000年にはケミカルリサイクル技術を用いてポリエステル繊維から再びポリエステル繊維へリサイクルすることが可能になった。そして、2022年には、従来のケミカルリサイクルよりも環境負荷を低減させた“新BHET法*¹”というケミカルリサイクル技術も帝人フロンティアによって開発された。
*¹ 新BHET法は、従来のケミカルリサイクル技術(DMT法)よりも工程数が少ないため、エネルギー消費量が少ない。さらには排水、排液、解重合触媒などを再利用することができるため、廃棄物の削減が可能。
帝人フロンティアは、エコペット®の技術を進化させるだけでなく新たな仕組みの構築や取り組みも行っている。例えば、従来廃棄されていた古着を、“新BHET法”を活用して新たな繊維に戻す繊維循環システムの構築に着手。本格的な実運用を見据えた実証試験を進めている。
また、世界的な海洋プラスチック問題の解決にアプローチするべく、タイで回収された使用済みペットボトルを原料にしたエコペット®の生産も開始している。
東南アジアは、世界の海洋プラスチック排出量全体の29%の発生源であると推測されている*²。その理由の一つとして、ペットボトルやプラスチックがリサイクルによって資源となることの認識がまだ薄く、分別回収されず海に流れ込んでしまう量が多いことが考えられている*³。
そこで、帝人フロンティアは50年以上にわたり生産拠点を置くタイで、この課題に挑戦するため、社会環境に合わせたリサイクルの仕組みを構築し、タイの使用済みペットボトルを原料にエコペット®の生産を開始した。
帝人フロンティアは、新たな仕組みを国内外に広げ、あらゆる側面においてエコペット®をアップデートしている。エコペット®が幅広く支持され続ける理由は、ここにもある。
*² 出典:Jambeck, J. R., Geyer, R., Wilcox, C., Siegler, T. R., Perryman, M., Andrady, A., …& Law, K. L. (2015). ‘Plastic waste inputs from land into the ocean.’ *Science, 347(6223), 768-711.
*³ 出典:GA Circular(2019). ‘Full Circle: Accelerating the Circular Economy for Post-Consumer PET Bottles in Southeast Asia.
エコペット®︎は実にさまざまなものに使われている。2024年春夏の最新ファッションでも、エコペット®︎を採用した商品がラインアップしている。
「NANO universe(ナノ・ユニバース)」では、オン・オフどちらでも使いやすいテーパードシルエットのパンツにエコペット®︎を採用した。サステナブルなだけでなく、使い勝手にすぐれている点が今回採用したエコペット®生地のいいところ。「ふだんの生活のなかで使いやすい機能性の高いアイテムは、お客様にもやさしい」と、地球にも人にもやさしいことに加えて、イージーケア素材である点から採用を決めたという。
パターンと素材感の調整にこだわって開発され、どんなトップスとも組み合わせられる、きれいめな1本に仕上がった。ストレッチが効いていて履きやすいのもポイントだ。
ナノ・ユニバースでは、廃棄や無駄を生み出さない循環型事業モデルの構築に取り組んでおり、その点でもエコペット®︎と通じるものがある。過去にもエコペット®︎の採用実績があり、環境への取り組みにも力を注いでいる。
米サンディエゴ発のアウトドアブランド「THOUSAND MILE(サウザンドマイル)」は、外遊びの魅力を発信するショップ「Green Summit(グリーンサミット)」の別注アイテムとして、エコペット®︎を採用したシャツとパンツを発売。
サウザンドマイルは、ブランド理念として「NON-DISPOSABLE CLOTHING=使い捨てでない衣類」というメッセージを掲げている。一方、外遊びの大切さを発信するグリーンサミットは、地球環境やフィールドを守ることを使命とし、環境に配慮した製品づくりや販売を行っている。両者の理念がエコペット®︎と重なっていることから、採用に至った。
エコペット®︎を使った製品開発を進めるなかで、いままで以上に地球環境問題と向き合うことができたという。まずは、「着てみたい」と思ってもらえることが重要。そのうえで、環境への配慮がありながらも「押し付けにならない」商品をつくるために話し合いを重ねてきたそう。結果として、シャツもパンツも満足のいくクオリティに仕上がったという。
エコペット®︎の利用はファッションだけにとどまらない。ここで紹介したもの以外で、エコペット®︎が使われた例は、こちらを見てほしい。
近年、アパレル業界の環境意識は高まっており、エコペット®︎のようなリサイクル素材の利用が増えつつある。エコペット®︎は、誕生した1995年から、世の中に良いインパクトを与えられるように少しずつアップデートをし続けている。進化を恐れない姿勢も相まって、今後ますます評価されていくだろう。
手に取る消費者に、地球環境と向き合うきっかけを与えてくれるのもいいところ。商品を通して、エコペット®︎の理念とブランドの想いを受け取ってほしい。
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