「ECOPET®︎(エコペット®︎)」は、リサイクルという言葉すらまだ広く浸透していなかった1995年に誕生した、リサイクル素材のパイオニア。使用済みペットボトルや裁断くずなどの不要なものをもとの繊維に変え、私たちの暮らしのあちこちで活用されている。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
エコペット®︎は、使用済みのペットボトルや、衣料品、繊維くずをリサイクルしたポリエステル繊維。帝人が、廃棄物を資源として循環させる研究を重ね、1995年にエコペット®︎を開発した。
1995年といえば、リサイクルという言葉がまだ浸透しておらず、SDGsが生まれるずっと前。そんな25年以上も前に、リサイクルポリエステル繊維として生まれた。いわば、リサイクル素材のパイオニア的存在だ。
エコペット®︎は、暮らしのあらゆるシーンで活用され、進化し続けている。例えば、衣料品では、ファッション衣料はもちろん、機能性が必要とされるユニフォームや子どもの体操服、スポーツウェアのほか、ランドセル、靴にも使われている。また家のなかでは、キッチンの水切りネット、寝具、カーテンなどに活用されている。
さらに、繊維の形状に自由度が高く、機能性素材としても利用用途が幅広いことから、電車のクッション材や災害用毛布、最近では軽量で吸音性もある天井材なども開発された。私たちの暮らしのさまざまなシーンでエコペット®︎は活用されているのだ。
エコペット®︎は2つの方法でつくられる。ひとつは、使用済みペットボトルを原料にする方法。もうひとつは、裁断くずや糸くずを原料にする方法だ。
使用済みペットボトルを原料にする方法では、「マテリアルリサイクル」という工程を経ていく。
使用済みペットボトルを粉砕して、フレーク(小さな欠片)にする。
フレークを溶かし、ペレットにする。これが糸や綿の元となる。この後は、下の(3)の工程につづく。
衣服などの生地や製品をつくるときに、工場で発生する裁断くずや糸くず。これらを原料にする方法では、「ケミカルリサイクル」が行われる。ケミカルリサイクルは化学的な分解処理を行い、糸や綿の原料にリサイクルする方法。ケミカルリサイクルの工程では染料不純物を取り除くことが可能なため、石油由来の原料と同じように、あらゆる細さ、形状の繊維や、高機能繊維をつくることができる。
裁断くずや糸くずを細かく粉砕する。
(2-1)の後、化学分解を行って、繊維の元となるペレットにする。ペレット以降の工程は、使用済みペットボトルからつくる場合と同じで、下の(3)につづく。
使用済みペットボトルを原料とするマテリアルリサイクルと、繊維くず・糸くずを原料とするケミカルリサイクルのそれぞれの工程で、最終的にペレット状にする。これを溶かして押し出し、糸状にする。
・製綿すると「エコペット®︎綿」に
・エコペット®︎綿を紡績すると「エコペット®︎紡績糸」に
・製糸すると「エコペット®︎長繊維」となる。
帝人フロンティアのさまざまな加工技術によって、生地、製品などに、柔らかさ、ドライタッチ、軽量、保湿性など、用途にあわせてさまざまな機能をプラスすることができる。
エコペット®︎が誕生した時代は、「ごみは処分するもの」と認識され、まだリサイクルについての関心が薄かった頃。しかし、帝人フロンティは廃棄されるものに光をあて、新しい素材へ生まれ変わらせる研究をいち早く進めてきた。エコペット®︎は、「いらないもの」を新しい素材に生まれ変えらせたパイオニア的存在だ。
これまで廃棄されていたものを原料としているため、燃やされて処分されるごみを減らすことから、CO2の削減にも貢献できる。石油由来の原料を使ったポリエステルと比べて、エコペット®︎の生産時のCO2排出量は、およそ60%も少ない(品番により異なる*)。
*帝人フロンティア(株)独自の計算システムにより算出。
誕生から25年を経た2020年時点で、生産されたエコペット®︎は、累計50万トン以上。これはペットボトルに換算すると、なんと250億本分*。Tシャツに換算すると25億枚*に相当する。
*ペットボトル1本20g、Tシャツ1枚200gとして計算。
エコペット®︎の歴史を簡単に紹介しよう。
1995年 エコペット®︎の販売開始。エコペット®︎でできたキッチンの水切り袋が誕生した。
2000年 ケミカルリサイクルの技術が開発され、繊維くず・糸くずを原料としたエコペット®︎を販売開始。
2017年 エコペット®︎のグローバル生産体制を構築。
2018年 軽量、UVカット、吸水速乾などの機能が付与された差別化素材バリエーションが拡充。
2021年 すべてのポリエステル繊維についてエコ原料化、つまりエコペット®化が技術的に可能となった。
「SDGs」の言葉の広がりとともに、リサイクルやアップサイクルなどによるサステナブル素材は注目を集め、ニーズの高まりを見せている。
長年におよぶ地道な開発の結果、エコペット®︎は幅広い用途に活用可能な素材として進化を続け、衣料品はもちろん、家の中や学校、公共交通機関などさまざまな場所で活用され、私たちの日常を豊かにしている。そんな、未来を明るく照らしてくれるエコペット®︎は、いまなお進化を続けている。
私たちがふだん分別回収しているペットボトルも、もしかしたらエコペット®︎に生まれ変わっているかもしれない。ペットボトルやポリエステル製品を見たときは、そんなことを思い出してみてはどうだろう。
ELEMINIST Recommends