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韓国の出生率が過去最低を記録し、0.72となった。8年連続で記録を下回ったこととなる。韓国で出生率が落ちているのはなぜか?日本や世界の出生率と比較し、その理由を探る。
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韓国統計庁の発表によると、2023年の韓国の出生率(*合計特殊出生率)は0.72だった。これは2022年の0.81を下回るもので、過去最低となった。内訳をみると、ソウル市は0.55、釜山市は0.66など、とくに都市部で出生率の低下が顕著だ。
*合計特殊出生率とは、15~49歳の女性人口をもとに算出されるもので、1人の女性が生涯を通じて産む子どもの数を表したもの。
韓国では少子化が進み、出生率が8年連続で下回った。2018年には1.0を下回り、驚異的な低水準が加速している。
2023年 | 0.72 |
---|---|
2022年 | 0.78 |
2021年 | 0.81 |
2020年 | 0.84 |
2019年 | 0.92 |
2018年 | 0.98 |
2017年 | 1.05 |
2016年 | 1.17 |
少子高齢化が進んでいる日本も、世界的に見ると出生率が低い。2021年の合計特殊出生率は1.30で、2020年の1.33よりも低下している。
また、世界に目を向けてみると、出生率がもっとも高い国はニジェールで6.73。アフリカの国々が出生率ランキングの上位に並んでいる。先進国は出生率が低い傾向にあるが、例えば、フランスは2.02、アメリカは1.84、イギリスは1.63となる。
これらの数値と比べても、韓国の数値がいかに驚異的に低いかがわかるだろう。韓国の出生率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかでも最低だ。
では、韓国の出生率が世界的に見てもここまで低下しているのはなぜだろう?
出生率が低下している理由のひとつは、若者世代に広がる経済面での不安だ。物価高や不動産価格の高騰なども背景に、「子どもを産んだらお金がかかる」というイメージが大きいようだ。これが、子どもをもつことを躊躇させている一因とみられる。
韓国は、日本以上に学歴社会であると言われる。そのため、子どもによりいい大学に入学させるために、子どもには塾に通わせるなど、教育費の負担が大きくなる。教育にばかりお金をかけて、「教育貧困」という言葉すら生まれているのだ。
韓国では、結婚する年齢が高くなっており、そもそも結婚しない人も増えている。そうなると、自然と子どもを持つ人の数も減少しやすくなる。
男女間での賃金格差なども関係する。性別による格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数」で、韓国は105位(日本は125位)だった。ジェンダーギャップが低い欧州に比べると、依然として男女差は大きい。
学歴社会である韓国では、女性の学歴も高い。それにも関わらずジェンダーギャップが大きいということは、女性が子どもを持つときに「キャリアか家庭か」の選択を迫られていると指摘する声もある。そのような男女格差が、女性に子どもを産むことをためらわせている理由にもつながっていると考えられる。
世界最低水準の出生率を記録し続けている韓国。この事態について、韓国政府も危機感をつのらせ、少子高齢化対策を打ち出すほか、育児有給休暇の義務化などを求める政党もある。
しかし、夫婦2人の間に生まれる子どもの数が「2」に届かなければ、人口は減少していく。2023年のデータで、韓国の人口は5,180万人。だが、韓国統計庁は、2072年には3600万人台まで減少するという試算を示している。
生産年齢人口は急激に減少し、極端な超高齢化社会を迎えることになるとみられる。また徴兵制度のある韓国では、人口減少にともなう兵力不足や安全保障への懸念もある。
韓国と同じように少子高齢化が進む日本。韓国の出生率低下の問題は、他人事とは言えない。社会を健全な状態に維持するためには、若い世代が欠かせない存在だ。より子どもを育てやすい社会になるため、韓国でも、日本でも、大きな変革が求められているだろう。
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