社会的企業とは?ボランティアやNPOとの違いや実例も紹介

青空とオフィスビル

Photo by Abbe Sublett

世の中をよりよくしたいという試みを、ビジネスで表現しようとするのが社会的企業といわれる組織のあり方である。この記事では、社会的企業が具体的にどのような企業なのかを解説し、ボランティアやNPOとの違い、日本の社会的企業の実例について紹介する。

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2024.02.29
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社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)とは

開発中の街

Photo by 高 翔 on Unsplash

社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)とは、社会的な問題解決や社会的価値の創造を主な目的とする企業のことを指す。従来、企業は営利を目的として運営されるが、社会的企業は非営利団体のような社会的なミッションに取り組む組織としての側面を持っており、利益の追求と理想とする社会の実現を目指すハイブリッドなビジネスモデルを持つ組織である。

例えば、貧困や教育の格差、環境問題など、さまざまな社会的課題に対処する事業を展開しながら、同時に経済的な持続可能性も追求する。

企業という形をとっているため、収益を生み出すことで持続可能な組織を構築することも社会的企業においては重要な役割である。

その過程において、これまで解決の難しかった社会的課題に取り組むので、従来の方法やアプローチにとらわれることなく、新しいアイデアを取り入れながら、対処を試みる。そのため、イノベーションを創出するという側面も持っている。

CSRとの関連性

高層ビル

Photo by Scott Webb on Unsplash

社会的企業について学ぶ上で、CSRについて知っておくことも重要だ。CSRは「Corporate Social Responsibility」を略した言葉で、日本語に訳すと「企業の社会的責任」となる。

企業はステークホルダーに対して何らかの利益をもたらす責任があるが、CSRでは利益のみならず、地域社会や人々の倫理観や道徳心、法律に基づいた考えに対してポジティブな影響を与える責任を指す。CSRでは、それらの企業が果たすべき責任を7つに分けて定義している。

説明責任:企業の活動が社会に対して与える影響を説明する責任。
透明性:企業の意思決定と活動について、透明性を保つ責任。
倫理的な行動:企業活動は、公平で誠実な倫理観に基づいて行う責任。
ステークホルダーの利害の尊重:株主、債権者、取引先、消費者、従業員など、ステーク・ホルダーに配慮して利益をもたらす責任。
法の支配の尊重:自国の法令や、事業にあたって適用される国の法令を遵守する責任。
国際行動規範の尊重:法令のみならず、国際的な規範を守る責任。
人権の尊重:普遍的である人権を尊重する責任。

社会的企業とCSRは近しい点もあるが、区別されている。社会的企業は存在や企業としての活動そのものが、社会に対してポジティブな影響を与えるものであるのに対し、CSRは一般企業が業績の向上や社会的な地位を保つために務める必要がある事柄である。

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NPO・ボランティア活動との違い

物資を積み込む男性

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社会的企業と共通した目的を持つ団体としてNPOやボランティア団体などが挙げられる。どちらも、社会に対して貢献するという点では社会的企業と一致しているが、異なる点も紹介していく。

NPOとの違い

NPOも社会的企業も、どちらも社会にある課題の解決を目的とする組織だ。ただ、両組織には以下のような違いがある。

まず、NPOは事業によって収益を得ることが可能だが、得た利益をステークホルダーに分配せず、全額NPOの事業にあてる必要がある。一方の社会的企業は得た利益を投資家に分配できる。そもそも活動資金を集める方法に違いがあり、NPOは「寄付」「事業収入」「助成金」「会費」が主な活動資金になるため株主が存在しない。

社会的企業は「株式」「出資」「事業収入」によって活動資金を獲得するため、得た利益を株主に分配する必要がある。この点は、一般企業と社会的企業の共通点だ。

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ボランティア活動との違い

ボランティアと社会的企業は「活動資金」と「利益追求」において違いがある。ボランティア活動は、主に寄付や構成員の持ち出しによって活動が維持されるが、社会的企業は先ほども触れたように、株式や融資、出資によって成り立っている。また、社会的企業は利益を追求しないボランティアと異なり、活動によって事業収入を得ることも目的としている。社会問題の解決を目指すのと同時に、自社の利益も追求することが社会的企業のあり方である。

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日本における取り組みの事例

勉強

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ソーシャル・エンタープライズに取り組む日本の企業を紹介する。

ユーグレナ|ミドリムシの研究と活用

ユーグレナはミドリムシの持つ力に着目し、サステナブルな事業を展開する企業だ。実はミドリムシはビタミンやアミノ酸など豊富な栄養源となる。ユーグレナはそんなミドリムシを活用した代替食品の開発で一躍有名になったが、そのほかにもヘルスケア事業、環境事業などさまざまなソーシャルビジネスを通して社会的な課題に取り組んでいる。例えば、バングラディシュの難民キャンプの子どもたちに無償でミドリムシでつくったクッキーを提供する「ユーグレナGENKIプログラム」を展開し、途上国の食料問題の解決を目指している。

LIFULL|空き家の再生

LIFULLは世界63ヵ国で不動産事業を展開する日本の企業である。なかでも、日本各地で問題になっている持ち主不在の空き家の再生についての取り組みが特徴的だ。「LIFULL 地方創生」をテーマに空き家の再生を通して、地方の活性化を目指している。また、空き家を活用したビジネスの講座や、地域の観光産業をプロデュースできる人材の育成など教育にも力を入れている。

マザーハウス|途上国の活性化

マザーハウスは6つの発展途上国に生産拠点を置くアパレル企業である。2006年にバングラデシュから世界に通用するファッションブランドをつくることを目標に立ち上げられ、洗練されたデザインのバッグやジュエリーを販売している。途上国で雇用の機会を創出し、経済格差の解消に取り組んでいる。現在では、日本やシンガポールを中心に、世界に40店舗以上のショップを展開する事業に成長した。

ボーダレス・ジャパン|ハチドリ電力

ハチドリ電力は、株式会社ボーダレス・ジャパンが取り組む、地球温暖化を解決するための電力サービスだ。ハチドリ電力で生産する電力はすべてCO2ゼロの自然エネルギーで、環境に配慮したエネルギーを提供している。また、利用者が支払った電気代の1%をNPOや環境団体へ寄付できる仕組みだ。

LITALICO|社会の障害を取り除く

LITALICOは「障害は人ではなく、社会の側にある」と考え、「障害のない社会」をつくることを理念として2005年に創業した企業だ。障害を持つ人々への就労支援サービスや、発達障害をもつ子どもへの学習機会の提供を行っており、全国に120ヶ所以上の就労支援拠点と、250ヶ所以上の学習教室を展開している。

OUI inc.|眼科医療

OUI inc.(ウイインク)は、世界の失明人口に歯止めをかけるために展開される事業だ。慶應義塾大学医学部発のベンチャー事業で、眼科医によって創業された。スマホに装着することで誰でも簡単に診察ができる「Smart Eye Camera(SEC)」を開発するなど、目に関する医療のインフラを整えている。

スマイルアカデミー|無料の学童保育

株式会社スマイルアカデミーは筋骨隆々なタレントたちを派遣する、ユニークなサービスを展開しているが、同時に「スマ学」という無料の学童保育を福岡で提供している。教育格差による貧困をなくすことをミッションに掲げており、勉強だけではなく地域の商店街と協力して職業体験など、幅広い学びの機会を提供している。

イータウン|地域活性化

株式会社イータウンは「cafeから始まるおもしろまちづくり」をテーマに、地域の活性化を目指すソーシャル・エンタープライズだ。地域の課題や困ったことを、地域住民が自ら解決できるようなプラットフォームづくりを行っており、港南台に地元のコミュニティを支援するための「港南台タウンカフェ」を設立した。経済産業省の選ぶ「ソーシャルビジネス55選」(※1)にも選出されている。

キャンサースキャン|病気の予防事業

株式会社キャンサースキャンは、日本の予防医療が抱えるあらゆる課題を解決するための事業を展開している。社会貢献とビジネスの両立を掲げ、検診受診率向上事業や生活習慣病重症化予防事業など、人間の行動を変革するための事業を提案しており、DXやAIなど最新の技術を取り入れながらも、一人ひとりと向き合う方法でよりよい社会の実現を目指している。

雨風太陽|地方再生・食品ロスの低減

雨風太陽は、生産者と消費者をつなぐ「ポケットマルシェ」というオンラインマルシェを展開しており、消費者は全国8100名以上の生産者から直接魚や野菜を購入できる。消費者は生産者から手頃な価格で食材を購入できるだけではなく、市場の規格に合わない商品の販売もできるので、フードロスの低減にも役立てられている。

まとめ

ポーズを取るロボット

Photo by Possessed Photography on Unsplash

日本における社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)の数は、2015年時点で、全体の11.8%で全国に20万社以上あることが報告された。一般企業の社会問題に対する意識も高まっており、社会に求められる形でソーシャルビジネスを展開する企業はさらに増えているだろう。この傾向は変わらず、社会的企業はさらに注目されることも予想される。「社会貢献」はビジネスにおいて、重要なテーマになっているといえるだろう。

※掲載している情報は、2024年2月29日時点のものです。

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