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気候変動や環境問題の深刻化を受けて、プラスチックの再利用化に関心を持つ人は多い。しかし、プラスチックの再利用と一口にいってもリサイクル方法は複数ある。本記事では、各リサイクル方法を説明しながら、日本のプラスチックリサイクルの現状や課題、再利用化に取り組む企業事例を紹介する。
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リサイクルという言葉を日常的に耳にするようになった昨今。できるだけ不要なものをごみとして処理するのではなく、再利用しようと考えている人も少なくない。とくに、地球温暖化・資源枯渇・海洋汚染を引き起こすとされているプラスチックごみ問題を受け、プラスチックのリサイクル(再利用)に積極的に取り組んでいる人も多いのではないだろうか。
“プラスチックリサイクル”と一口にいっても、大きく分けてリサイクル方法は3種類ある。それぞれの方法について、説明していこう。
「マテリアルリサイクル」とは、廃プラスチックを原料として、新たなプラスチック製品をつくるリサイクル方法のこと。
“マテリアル(material)”とは“原材料”を指し、廃プラスチックを溶かしたものを原材料として、新たな製品に加工をする。
加工してできあがる製品は、文房具やペットボトルなどの小さいものから、公園などにしようされる大規模な設備までさまざまだ。
「ケミカルリサイクル」とは、廃プラスチックに化学的な処理を行って分解し、それによって回収した原料を再利用するリサイクル方法のこと。
石油からつくられたプラスチックを分解して、油化、ガス化して化学原料としたり、燃料油やコークス炉の化学燃料として再利用したりする。
「サーマルリサイクル」とは、廃プラスチックを燃やしたときに発生する熱エネルギーを回収して再利用する方法。“サーマル(thermal)”とは“熱”に関連することを意味する。
プラスチックを焼却した際に回収した熱エネルギーは、発電や温浴施設、暖房設備の熱源として効率よく活用される。
ここからは、日本のプラスチックリサイクルの現状や特徴について見ていこう。
日本のプラスチックリサイクル率は、2020年のデータで86%。さらに、2012年から2020年まで80%以上を超え続けており、リサイクル率が高いことがわかる(※1)。
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プラスチックリサイクル率の高さも重要だが、同時にリサイクル方法も重要だ。
日本は80%以上と高いリサイクル率であるが、そのほとんどがサーマルリサイクルによるもの。不純物が混ざったプラスチックを処理する場合や、選別がむずかしい場合のリサイクル方法に適しているサーマルリサイクルだが、プラスチックを燃やす際にCO2や有害物質が発生するというデメリットもある。
そのようなデメリットもあり、欧米では、サーマルリサイクルはリサイクルとして認識されていない。
欧州プラスチック業界団体のPlasticsEuropeがまとめたデータによると、2016年に欧州における、サーマルリサイクルを含まないリサイクル率は、データが掲載されている30か国の内半数以上が30%を超えている(※2)。
一方、日本のサーマルリサイクルを除いた2016年のプラスチックリサイクル率は、23.6%。世界各国と比べて低い水準であることがわかるだろう。
日本のプラスチックリサイクルにおける課題は、以下のとおり。
1つ目は、前述したようにマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルが、世界的に見て低いことだ。国際的な基準でリサイクル率を高めるには、サーマルリサイクル以外を増やす必要がある。
2つ目は、廃プラスチックの輸出規制への対応。日本はこれまでコストが高いことなどから、廃プラスチックを海外に輸出し処理していた。しかし、輸出規制が開始した2021年からは海外に頼ることができず、日本国内で廃プラスチックを循環させる必要に迫られている。
気候変動や環境問題の深刻化から、さまざまな企業でプラスチックリサイクルに関する取り組みが行われている。ここではいくつかの事例を紹介しよう。
花王では、つめかえパックに使われている薄いフィルム素材を本品容器として使う「プラスチックボトルレス化」や、中身を濃縮化することで製品ボトルをコンパクトにするなど、プラスチック使用量の削減を積極的に行なっている。
さらに、同社が掲げる「ごみゼロ」の目標達成に向けた「リサイクルイノベーション」を推進。花王が関与したプラスチックの再資源化率を、2030年までに50%まで高めていくことや、使用済みのプラスチックを花王の独自技術により、価値あるものに変換することなどに取り組んでいる(※2)。
「エコペット®︎」は、使用済みのペットボトルや、衣料品、繊維くずをリサイクルしたポリエステル繊維のこと。帝人フロンティア株式会社が、廃棄物を資源として循環させる研究を重ね、1995年にエコペット®︎を開発した。
エコペット®︎は2つの方法でつくられる。ひとつは、裁断くずや糸くずを原料にする方法。もうひとつは、使用済みペットボトルを原料にする方法だ。後者には、マテリアルリサイクルの工程が採用されている。
三井物産では、包装材やPETボトルなど、さまざまな素材の回収・リサイクル事業を推進している。
現在は、米国PureCycle Technologies, Inc.(PCT社)の技術を活用したリサイクルポリプロピレン樹脂(リサイクルPP樹脂)の生産工場を日本で立ち上げることを検討(※4)。実現すれば、マテリアルリサイクル率の向上が期待されている。
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適切な分別を行うことで、リサイクルしやすい良質な廃プラスチックを排出することができる。ここでいう適切な分別とは、それぞれの市町村のルールに従った分別のことだ。
しかし、いざ分別しようと思っても、どう分別したらいいのか迷ったこともあるだろう。そんなとき意識してほしいのが、「PETボトル」や「プラスチック製包装容器」といった、容器包装の識別表示マークである(※5)。
たとえば、ペットボトルを捨てるとき。ラベルやボトル本体をよく見ると、ボトルにはPETボトルマーク、キャップやラベルにはプラスチック製包装容器マークがついている。この場合、PETボトルマークのついたボトル本体は「PETボトル」として、プラスチック製包装容器マークがついているキャップとラベルは「その他プラ」に分別するのがのぞましい。
このほかにも、「しょうゆ」「調味酢」「みりん風調味料」などの特定調味料に指定されている製品やにもPETボトルマークがついていることがあるので、よく確認してから分別しよう。
だたし、この識別マークが判断のすべてではない。たとえば、油のPETボトル、水で洗っても汚れや臭いの取れないプラスチック容器などは、PETボトルやその他プラと混ざってしまうと、収集後の分別作業や洗浄工程に多くのエネルギーと費用を要するため、「燃やすごみ」に当てはまる。
世界的に見て、日本のプラスチック再利用の状況は決して理想的な状態ではない。しかし、まだまだできることはたくさんある。まずは一人ひとりがきちんとごみを分別すること、そしてリサイクル化に取り組む企業の製品を選ぶことなど、確実に行動していくことが重要だ。
参考
※1プラスチックリサイクルの基礎知識2023(7ページ目)|一般社団法人 プラスチック循環利用協会
※2 プラスチックを取り巻く国内外の状況<第3回資料集>(20ページ目)|環境省
※3 プラスチック包装容器2040年「ごみゼロ」、2050年「ごみネガティブ」実現に向けたロードマップを公表|花王
※4 リサイクルプラスチック(ポリプロピレン) /米PureCycle社|三井物産
※5 容器包装の識別表示マーク|PETボトルリサイクル推進協議会
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