Photo by Anne Nygård
EUは、環境に対する取り組みで誤解を招く用語を規制する方針だ。とくにカーボンオフセットを利用して「クライメートニュートラル」「クライメートポジティブ」などと主張することが禁止される。
Kanae Tahara
Freelance PR / Writer
社会貢献×ライフスタイルを軸にした日本国内の企業で広報、PR、コンテンツ制作などの経験を積み、2023年よりフリーに。現在カナダ在住。
企業は、自社や自社製品において、環境への取り組みをさまざまな形でアピールする。そんな環境主張について、EU(欧州連合)では、誤解を招く表現を取り締まる。
その一環として2026年までに、カーボン・オフセットを利用して気候中立を達成する場合、「クライメートニュートラル」や「クライメートポジティブ」などの用語を禁止する計画を発表した。
この規制は、EU内で数か月にわたる交渉の末、2023年9月に合意に達し、2024年1月に承認された。裏付けがない場合は、環境に配慮した製品やサービスの宣伝において「エコ」や「生分解性」などの言葉の使用が禁止され、カーボン・オフセットを活用した主張も全面的に禁止される。
「カーボン・オフセット」とは、温室効果ガスの排出削減に取り組むものの、削減が難しい部分について別の方法で埋め合わせること。たとえば再生可能エネルギープロジェクトへの投資、森林保護プロジェクトへの資金提供など、二酸化炭素排出を相殺するための活動を指す。
通常、気候中立を宣言する企業や団体は、これらの取り組みを通じて環境への影響を最小限に抑えようとしている。しかし、大手グローバル企業の多くが利用する、森林に関するカーボン・オフセットについて、90%以上に価値はなく“幻のクレジット”である可能性も指摘されている。
「お金を払って埋め合わせすれば、温室効果ガスは排出されたまま」とも捉えかねないことから、カーボン・オフセットの制度そのものに疑問の声が上がっていることも事実だ。
欧州議会・域内市場委員会のアンナ・カヴァッツィーニ氏は、発表した規制内容に関して次のようにコメントを述べた。
「CO2相殺にもとづく『クライメートニュートラル』や『クライメートポジティブ』などの主張が完全に禁止されることを非常に嬉しく思います。企業による気候保護プロジェクトへの投資は歓迎されており、もちろん、それを伝えることも可能です」
「しかし、熱帯雨林に木を植えることによって、自動車の工業生産、サッカーワールドカップの開催、または化粧品の生産がクライメートニュートラルになると思われるべきではありません」
新しい規制の下では、認証スキームを使用したサステナブル関連のラベルのみが許可され、ラベルを付ける場合には、その実績を示す必要がある。
規制を導入する目的は、環境にやさしいとされる製品やサービスに関する広告が、より信頼性を持ち、消費者が本当にサステナブルな選択をする際に誤解や混乱を招くことを防ぐことだ。企業や団体は、具体的な行動と取り組みを通じて、より実態のある環境への配慮を実現していくことを求められるだろう。
EUは今回の規制により、見せかけではない、本当の意味で環境に配慮した製品やサービスの普及を期待している。
※参考
EU bans ‘misleading’ environmental claims that rely on offsetting|the Guardian
Revealed: more than 90% of rainforest carbon offsets by biggest certifier are worthless, analysis shows|the Guardian
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