Photo by Felicity West
パタゴニアがロンドンに「ユナイテッドリペアセンター・ロンドン」を開設した。難民や就業が難しい人への技術訓練支援も行い、循環型ファションの架け橋となることを目指す。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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「#repairisnewcool(リペアが新しい恰好よさ)」が合言葉。
パタゴニアは、ロンドン北部のハーリンゲイ区に新たな修理センター「ユナイテッド・リペア・センター(URC)ロンドン」をオープンした。
社会的影響力を持つ企業「ユナイテッド・リペア・センター(URC)」と、ハーリンゲイ区でアパレル生産を行う非営利企業「ファッションエンター」との連携により、衣料品の修理を行い、生活の変革と意識的な消費の構築を目指す。
パタゴニアは2022年、オランダのアムステルダムに最初のリペアセンターをオープン。URCアムステルダムは現在、パタゴニアをはじめ、「デカトロン」「ルルレモン」などの衣料品の修理を年間30,000件請け負っている。今回のURCロンドンは、このオランダでのリペアセンターの成功に続くものだ。
URCロンドンは、英国ファッション評議会のポジティブ・ファッション研究所からの戦略的指導と、エレン・マッカーサー財団から循環経済支援を受けている。
まずは、イギリスに暮らすパタゴニアの顧客に修理サービスを行い、今後12か月以内にさらに3つのブランドも加わる予定。2025年までに、URCアムステルダムと同等の年間30,000件の修理を行う見込みで、パタゴニアを中心にアパレル業界全体で、「壊れたら処分せずに修理して長く使う」方針に変革すること狙いだ。
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URCロンドンは、難民や就職が困難な人々を雇用し、リペアに関する技術の訓練を行う側面もある。
近年、大手の小売業者は海外の安価な施設に生産の拠点を移管しており、それによって地域では従業員の雇用が難しくなる企業も多いという。そこで、就職が難しい人々にリペアの技術を身につけてもらい、循環経済への架け橋となるよう期待しているのだ。
ファッションエンターのジェニー・ホロウェイCEOは次のように語る。
「ハーリンゲイ区は、高品質の衣料品製造の地として長い歴史があります。しかし、より安価な生産を求める現在の市場では、高い品質基準や倫理を維持できないため、ビジネスを迅速に方向転換する必要がありました。
現在、当社は衣料品の修理に向けてエキサイティングなコラボレーションを行っています。熟練の技術を持った私たちのチームは、今日のファッションの循環経済に貢献していることを心より嬉しく思っています」
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パタゴニアではこれまで12年にわたり、破れたり壊れたりしたものを修理して長く着ることを呼び掛ける「Worn Wear プログラム」を実施。プログラムを通じて、消費者に衣料品の寿命をのばす方法を啓発してきた。今回のURCロンドンの開設は、それをより具体的に実現するために後押しする存在となるだろう。
メーカーが安価な服を大量に生産し、消費者が次々と新しいものを購入して、短期間で廃棄する消費モデルでは、環境への負担が大きくかかる。愛着あるものを大切に、必要に応じて修理して長く使う消費スタイルに変革するべきなのだ。
このようなリペアセンターの存在は、衣料品が破れたり壊れたりしたときに「修理する」選択肢を自然と選べるようになるひとつのきっかけになるだろう。
※参考
unitedrepaircentre
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