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「生理の貧困」とは、「経済的な理由から生理用品を購入できない状態のこと」を指す言葉だ。この記事では、生理の貧困に関する日本の現状に触れながら、なぜ起こるのか、どのような影響があるのかについて解説していく。また、国や企業の取り組みや、個人でできる支援についても紹介する。
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世界でも話題となっている、「生理の貧困」。ここでは意味を解説しながら、現状についても紹介していこう。
「生理の貧困」とは、「経済的な理由から生理用品を購入できない状態のこと」を指す言葉だ(※1)。
日本では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大で収入が減ったことによって、この問題が顕在化。しかし世界では、それより前の2017年に、国際NGOプラン・インターナショナルがイギリスで行った調査がきっかけで、「生理の貧困(Period Poverty)」という言葉が広く知られるようになった。
「経済的な理由で生理用品が購入できない」と聞くと、日本には関係がなく、開発途上国だけの話のように感じる人もいるかもしれない。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大前の時点で、世界では5億人もの女性が生理の貧困に陥っているとされているのだ。
日本では、厚生労働省が発表した「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」の結果によると、「新型コロナウイルス発生後(2020年2月頃以降)、生理用品の購入・入手に苦労したこと」が「よくある」「ときどきある」のは回答者の8.1%(244人)。購入・入手に苦労した理由は「自分の収入が少ないから(37.7%)」「自分のために使えるお金が少ないから(28.7%)」「その他のことにお金を使わなければいけないから(24.2%)」などが挙げられたそうだ(※2)。
また、2017年のイギリスの調査でも、14〜21歳の女性のうち、回答者の10%が生理用品を買えなかった経験があることがわかっている(※3)。このことから、経済的な理由で生理用品が購入できないのは、開発途上国に限った話ではなく、身近に起こっている問題であることがわかるだろう。
生理の貧困の現状がわかったところで、ここからは、生理の貧困がおよぼす影響について、具体的に紹介していこう。
開発途上国では、経済的な理由で生理用品を購入できないことにプラスして、衛生的なトイレや入浴施設が少ないといった、衛生面での問題も深刻だ。身体を清潔に保つことのほか、生理用品を適した方法で廃棄することも難しい状態である。
日本でも、生理用品を購入・入手できないときの対処法として、「トイレットペーパーやティッシュペーパー等で代用する」などの回答があり、衛生的に対処できていない女性も多い。これらは、かぶれやかゆみなど、健康的な被害にもつながりやすい。
生理の貧困は、経済的な理由で生理用品が購入できないことだけを意味しているわけではない。前述したように、衛生的な生活が送れないほか、生理用品が入手できないために学業や仕事に集中できなかったり、外出を控えるために重要な試験を休んだりと、女性の社会進出の機会損失にもつながっている。
生理の貧困による女性のパフォーマンス低下は、社会経済的にも影響をもたらしている。2013年に日本国内でおこなわれた調査によると、生理の症状によって国内で年間6828億円もの社会経済的な負担が起きているそう。このうち生理の症状による仕事のパフォーマンス低下を原因とする労働損失は、4911億円にもおよぶという(※4)。
生理の貧困はなぜ起こるのだろうか。生理の貧困の背景について考えてみよう。
生理の貧困が起こる主な理由は、経済的な問題である。
前述したように、日本で生理の貧困が注目されるようになったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による収入格差の拡大がきっかけだった。なかでも、女性従業員の割合が高い小売業や飲食業、旅行業において、大幅な収入減や失業が起こり、多くの女性たちが経済的に苦しい状態に追い込まれることになったのだ。
それ以外の職業に就いている女性も、感染拡大防止のための休校措置や育児施設の閉鎖によって子どもの在宅時間が増えたことで、仕事を短縮したり休んだりしなければいけない人が増加。働く時間が減ったことで収入も減り、生理用品にかけられるお金も減ってしまった。
経済的な貧困が原因で生理用品を十分に購入できない人は日本にも存在し、増えている。
生理用品を購入して、中身が見えない紙袋や黒い袋に入れられる、という経験をしたことがある人、そのような状況を見たことがある人も多いのではないだろうか。このように、日本では生理を「恥ずかしいもの」「隠すべきもの」という固定概念がある。
日本特有の社会的風潮のように思えるが、実は海外でも同様の考え方が見受けられている。イギリスでは、14〜21歳の女性のうち、48%が「生理を恥ずかしいと感じている」と答えているのだ(※3)。
「恥ずかしいもの」「隠すべきもの」と捉えているということは、生理について話す機会や理解する機会が少なく、正しい知識を十分に得られていない可能性があるということだ。17歳〜19歳を対象にした日本財団の調査によると、生理に関する知識の情報源は「母親」が71.6%で最多。次いで「学校の授業・課外活動」53.8%となった(※5)。
母親など生理の経験を持つ大人の女性がいない家庭では、父親に相談しづらい上、保護者側も何を教えていいかわからない、といった問題も発生しやすい。
こうした背景もあり、生理への適切な対処がわからず生理の貧困を招いてしまう状況もある。
国や企業が、生理の貧困の解決に向けて取り組みをおこなっていることを知っているだろうか。ここでは3つの取り組みを紹介しよう。
日本が行っている取り組みとして、地域女性活躍推進交付金や地域子供の未来応援交付金を活用した、生理用品の提供がある。
地方自治体でも、学校のトイレに生理用品を設置する取り組みや、相談者への配慮としてカードやスマホの画面を見せるだけで、口に出さずに役所や保健室の窓口で生理用品の提供を受けられるようにしているなどの取り組みを行っている。
企業も生理の貧困への取り組みを行っており、近年注目を集めているのが「OiTr(オイテル)」だ。「OiTr(オイテル)」は、個室トイレに設置された動画広告機能付きのディスペンサーを通じて、生理用ナプキンを無料で配布するサービス。必要な人がスマホアプリを使ってディスペンサーから生理用ナプキンを1枚、無料で受け取れる仕組みだ。
男性社員や管理職も巻き込み、女性の健康に関するセミナーを開催している企業もあるそう。
生理の貧困だけを取り上げたものではないが、従業員の健康管理のひとつとして、女性の生理や健康の理解に積極的に取り組む企業が増えている。
厚生労働省は、「働く女性の心とからだの応援サイト」で生理にまつわる情報を発信している。生理についての正しい情報や、取得率が低いことが問題視されている生理休暇の詳細、生理休暇の先駆的な取り組みを行っている企業の事例などを知ることができる。
生理の貧困の解決に向けて、個人でできることはあるのだろうか。ここでは、ひとりひとりができることを考えていこう。
個人ができることとしてイメージしやすいのが、生理用品を寄付することだろう。NPOや自治体などで寄付を受け付けている団体があるので、調べて協力してみてはいかがだろうか。
ただし、団体によっては生理用品の保管状態や、種類に決まりが設けられているところもあるので、事前に確認してから寄付を行うことが重要だ。
UN Women(国際連合女性機関)やプラン・インターナショナルのように、NPOやNGOなどで女性や子どもを支援する団体は多くある。そのような団体に寄付を行うことも、生理の貧困をなくすためにできることのひとつだ。
インターネットで「生理の貧困」と検索すると「理解できない」「甘え」「意味不明」といった言葉が関連ワードに登場する。こうした背景には、生理についての正しい知識を持つこと、そしてそれを周囲と共有することが不足していると考えられる。まずは男性・女性問わず、正しい知識をいま一度理解することが重要だ。
子どもがいる家庭なら、子どもよ生理について話し合う機会を設けるのもいいだろう。先入観や「恥ずかしい」といった感情は抜きにして、まずは科学的な事実を客観的に伝えることが大切だ。難しい場合は、絵本や冊子などを用いる方法もある。
生理の貧困は、遠い異国の話ではなく日本でも起こっている社会問題だ。現在、生理の貧困に陥っていない女性も男性も、「自分には関係ない」と捉えるのではなく、身近な人を助けるような気持ちで、できることから解決に向けたアクションをとってみてはいかがだろうか。きっとそれは、誰もが生きやすい世の中への一歩となるはずだ。
参考
※1 「生理の貧困」|内閣府男女共同参画局
※2 「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」の結果を公表します|厚生労働省
※3 Break the barriers: Girls’ experiences of mensturation in the UK(11ページ目)|プラン・インターナショナル
※4 健康経営における女性の健康の取り組みについて(3ページ目)|経済産業省
※5 18歳意識調査「第44回 –女性の生理–」要約版(14ページ目)|日本財団
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