生理用品を無料提供している世界の国一覧 日本の現状は?

トイレのマーク

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生理用品を無料提供している国は、世界10ヵ国以上。「生理の貧困」を撲滅するため、ナプキンやタンポンが学校に設置されている。生理の無料提供が必要な理由は何なのか、無料提供をしている国にはどこがあるのか、日本の現状とともに紹介する。

今西香月

環境&美容系フリーライター

慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中

2023.08.21
SOCIETY
学び

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無料提供が必要な理由は「生理の貧困」

生理用品の無料提供はなぜ必要?

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「生理の貧困」をご存じだろうか?経済的な理由などで生理用品が手に入らない格差を意味する。その理由は、経済的なもののほか、生理に対して「恥ずかしいもの」「隠すべきもの」という固定概念にとらわれていることもある。そのような背景があり、生理用品を十分に入手できない女性がいるのだ。

生理用品を買えないと、仕事や学校を休んだり、女性の精神面にも影響を与えたりする可能性がある。そこで、この格差を「生理用品の無償化や無料配布」で解消し、女性の社会参加や教育機会を促進しようとする国や地域が増えているのだ。

生理用品の無料提供を行っている世界の国・地域

世界では現在、10カ国以上で生理用品を無料配布している。主な国と取り組みを紹介しよう。

スコットランド

2020年、スコットランドは生理用品を無料で提供する世界初の国となった。学校や公共施設、プール、公共ジム、市庁舎、薬局、診療所で入手できる。希望者は、「PickupMyPeriod」と呼ばれるアプリを通じて、最寄りの提供場所を検索し、デリバリーの依頼も可能だ。

スコットランド「生理用品の無償提供」を義務化 世界初の法律が施行

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ニュージーランド

ニュージーランドでは、2021年からすべての学校で生理用品の無料提供が開始された。ニュージーランド政府は生理の貧困をなくす政策の一環として、2024年までに1,800万ドル(約26億円)の費用を見込んでいる。このプログラムは、小学校、中学校、高校、そしてクラ(マオリ語イマージョン教育)の学校のすべてが対象。ジャシンダ・アーダーン首相は、この取り組みは政府が生理の貧困に対処し、就学率を高め、生徒の福祉を支援するための1つの方法であると述べた。

アメリカ

アメリカでは現在、以下の25州で学校での生理用品の無料提供が行われている。

アラバマ州、アーカンソン州、カリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州、デラウェア州、ジョージア州、ハワイ州、イリノイ州、メイン州、メリーランド州、ミネソタ州、ミズーリ州、ネバタ州、ニューハンプシャー州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オレゴン州、ロードアイランド州、ユタ州、バージニア州、ワシントン州、フロリダ州

2023年7月に生理用品の無料提供が決まったオハイオ州を例にとると、6〜12年生までの女子生徒がいる学校に、500万ドル(約7億円)の予算が組まれている。可決されたこの法案では、6年生以下の生徒への提供も認められる。

フランス

フランスでは2021年より、ナプキンやタンポンなどを学生に無料提供している。さらに、2024年からは25歳以下を対象に、月経カップや再利用可能なパッドなども無料にする。フランスでは、18〜24歳の女性の30%が、経済的理由で生理用品を定期的に購入できないという。

台湾

台湾政府は2023年7月、生理の貧困を解消するため、台湾にあるすべての学校と大学に生理用品を無料提供すると発表した。予算は1億台湾ドル(約4億5000万円)以上となる見込みだ。陳建仁行政院長(首相)は「貧困時代を終わらせることは男女平等を促す一環である」と述べた。MOE(台湾教育部)では、約95,000人の学生がこのプログラムの対象となると推定する。

オーストラリア

オーストラリアでは2023年6月、首都特別地域(ACT)における生理用品の無料提供に関する法案が可決された。公衆トイレ、図書館、保健施設などの指定場所で無料提供されるほか、月経衛生に関する情報が一般公開される予定である。多民族社会のオーストラリアでは、月経についての認識がさまざまで、タブーな話題と扱われる可能性も高い。こうした文化の違いを考慮し、多言語で月経に関する情報にアクセスできる環境が重要となる。

その他

韓国、南アフリカ、ザンビア、ボツワナ、ケニアといった国々も政府や民間組織を中心に、生理用品を無料提供している。

日本での無料提供は一部地域のみ

日本でも、一部の地域や学校で生理用品の無料配布が行われているが、国による制度ではなく、全国的には普及していない。無償化を阻む理由は、文化的なタブー視や予算の限度、政府の優先順位の低さなどに起因しているようだ。

厚生労働省の調査では、生理用品の購入や入手に苦労したことがある人のうち、約半数(49.6%)が居住エリアで生理用品の無償提供が行われているか「わからない」と回答。また、無料提供を利用しない人にその理由を聞くと、「申し出が恥ずかしい」「人目が気になる」「対面で受け取る必要がある」といった声も上がった。無料提供は実施していても、認知度の低さや受け取り方法に課題が残る。

生理用品の無料提供は社会的偏見をなくす手段

生理用品の無償化は、経済的な負担を減らし、あらゆる女性が尊厳を持って生理期間を過ごせるために重要なステップだ。生理用品が入手できないことを理由に、女性が学校や仕事を制限されることもなくなるだろう。

経済的なハードルをなくすことで、社会的偏見やタブー視が薄れ、女性自身も自分の健康や生理に対してオープンに話せる環境が整う。

生理の貧困という“見えにくい問題”の解決は、女性の教育やキャリアの機会均等を促す未来に通じるのかもしれない。

※掲載している情報は、2023年8月21日時点のものです。

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