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世界に数多く存在する社会問題のなかで、現代の大学生にとって身近な社会問題とは何なのだろうか。どのような社会問題に対して意識を向け、興味を持ち、どのような考えを持っているのか。いくつかの調査結果をもとに解説する。
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エレミニスト編集部
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世界に数多く存在し、時代の変化とともに変化する社会問題。日本総合研究所が2023年8月、中高・大学生1,000人を対象に行った意識調査によると、回答者の半数以上が環境問題や社会課題への解決意欲を示していることがわかった。SDGsの認知調査においては、2020年から大きく上昇し、回答した大学生の80.5%が知っているとの結果に。(※1)
時代の変化とともに、キャリアや結婚、平和、お金、環境問題に対する意識が増加しつつある。とくに就職を控え、将来を考える機会が増える大学生には、その意識が比較的高い傾向にあると言える。
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日本総合研究所の最新の調査結果によると、国内や海外の環境問題や社会課題に関心があると答えた大学生は、全体の51.1%と半数以上。また、年齢や性別を問わず「人権(ハラスメント・いじめ・虐待・不登校・人種差別等)」への関心がもっとも高く、「労働問題(長時間労働、雇用不全、失業等)」への関心も高まっていることがわかった。とくに女子は「ジェンダー平等、ダイバーシティ、LGBTQ」などへの関心が同世代の男子に比べて高いこともわかった。
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大学生のなかでも、とくに関心が高いのが長時間労働についてだ。日本では、長時間労働を続けた事業場や従業員が受けるデメリットが大きいため、組織全体の意識改革が求められている。厚生労働省では、長時間労働の削減は一刻を争う課題として取り組みを強化しており、1ヵ月に80時間を超える時間外労働を「過労死基準」として監督指導が徹底されている。
厚生労働省によると、日本の長時間労働者の割合は減少傾向にあるものの、欧米諸国に比べるとまだまだ高く、一刻も早い改善が必要だ。過労死など、長時間労働の問題がより深刻化しているため、職場におけるメンタルヘルス対策も重要である。
世界だけでなく、日本でも多くの人種差別が存在している。年齢や性別を問わず根深く広がり、自己と違うという偏見から差別を続けることも少なくない。
人権問題には、女性をはじめとしたジェンダーの問題や子どもや高齢者に対する人権、障がい者やHIV、ハンセン病などの感染者に対する差別などが挙げられる。日本国内にある人種差別としては、主に「アイヌ民族の人権問題」や「外国人の人権問題」があげられる。これらの差別をなくしていくためにも、正しい知識や教育といった対策が求められている。
ジェンダーの平等と女性の能力強化については日本でも取り組まれているが、依然大きな課題を抱えた状態だ。「ジェンダーギャップ指数(男女格差指数)」は、ジェンダー平等を判断するための指標として用いられるが、2022年7月に公表された世界経済フォーラムでの日本のスコアは、146カ国中116位と先進国のなかでも非常に低く、G7では最下位のスコアとなっている。とくに経済や政治の分野でのスコアが低く、これはいまだに女性蔑視や偏見が残っているからとも言えるだろう。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、世界の平均気温は1880年から2012年までに0.85℃上昇しており、これにより生態系の一部に大きな被害が出ている。世界の平均気温が1~2℃上がることは、地球にとって大変深刻な問題。このまま対策なしに温暖化が進み続けると、2100年には気温が最大4.8℃上昇すると予測されており、仮に厳しい温暖化対策をとったとしても、0.3℃~1.7℃上昇する可能性があるとされている。
地球温暖化によって引き起こされる気候変動が進むと、気候パターンが崩れるだけでなく、豊かな生態系も壊れてしまう。現在では、温暖化や気候変動の影響で猛暑や干ばつ、山火事、台風、豪雨、洪水といった異常気象が起こり、これまでにない大きな災害が頻発している。
2012年以降、日本では女性の就業率が大幅に上昇した一方で、依然として非正規雇用が多いことが問題視されている。例えば、JILPT(労働政策研究・研修機構)の調査によると、非正規雇用の女性はコロナショックの中で3人に1人が解雇をはじめとする雇用状況の大きな変化を経験したという。平均月収は通常月に比べて最大14%も減少し、休業者の比率は、ピーク時には7.5%に達している。家計の逼迫や消費意欲の減退、メンタルヘルスの悪化、そして非正規の単身女性の貧困率の上昇などが報告されている。(※2)
さらに、経済的な問題やキャリア優先などの理由で、出産や結婚を見送る女性が増加。女性の社会進出が少子化に拍車をかけているという懸念もある。
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先述したもの以外にも、世界や日本にはさまざまな社会問題が存在する。
2023年の消費者庁の調査によると、日本の食品廃棄等は年間2,402万トン、食品ロス量は年間523万トン。これは、毎日大型トラック約1,433台分を廃棄、年間1人当たり42kgの食べ物を捨てている計算になる。食品ロスのうち約半分は家庭から出ており、その内訳は食べ残しや、未開封の食品が食べずに捨てられている直接廃棄が大半を占めている。(※3)
十分に食料を確保できず栄養不足の状態にある人々が多数存在するなかで、日本は大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存している状況が大きな問題となっている。これらの問題を解決すべく、国をあげた取り組みが進んでいる。
気候変動や人口増加による水不足や上下水道の劣化、台風や豪雨による洪水や土砂災害など、多岐にわたる水問題が起きている。また、地球上の水資源には限りがあり、飲み水として利用できる水は地球全体の0.01%にも満たないと言われている。ユニセフによると、世界の約20億人が安全に管理された飲み水の供給を受けられておらず、菌に汚染された水を飲むことなどで感染する伝染病により、命の危険に直面している人も存在する。このように、安全な水の確保は人間の健康や命に関わるため欠かせないものである。一方で、水問題は年々深刻化しており、すべての国で自分ごととして考えていく必要があると言える。
デジタルデバイドとは、インターネットやパソコンなどの情報通信技術を使える人と使えない人との間に生じる格差のこと。情報格差とも言われ、デバイスの使用機会やICTリテラシーによってその差が生まれる。年齢や年収などの違いで起こる「個人間・集団間デバイド」や、国内の都市部と地方部の間に生じている「地域間デバイド」などがある。
ジェンダーバイアスとは、社会的・文化的な意味での性差に対する固定概念や偏見のこと。「女はこうあるべき」、「男はこうあるべき」という考え方があることにより、生きづらさを感じている人も多い。また、これらの考え方はその人らしさを否定して個人の可能性を狭め、自由を奪う原因にもなりうる。多様性が重要性されるなかで、まだ起こりつつあるこれらの固定観念を解消していく必要がある。
学内やコミュニティでのいじめや引きこもり、教育格差、詰込み教育、学力低下など、教育問題は多岐にわたる。文科省によると、いじめの件数は年を追うごとに増加しており、未だいじめに苦しむ学生は多く存在する。これらの問題の背景には、教員の仕事量が多いことや、人材不足による「教員の多忙化」があるとされている。
日本財団によるレポートによると、日本では、子どもの7人に1人が貧困状態だとされている。彼らは日本国民の年間所得の半分にも満たない環境で暮らしている。これらの経済的影響により、他の子どもたちと比べて教育の機会が少ないことや、地域との関わりが薄いなどの問題にもつながっている。(※4)
消滅集落とは、かつて住民が住んでいたものの、住民の人口が0になった集落のことを指す。山間地や離島に位置することが多く、現在も消滅集落になりかけている集落は6万3237集落も存在する。日本では、2010年をピークに人口が減少し続けており、少子高齢化が深刻化。消滅集落はその影響を大きく受け、将来多くの集落の消滅が予測されている。
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調査結果からもわかるように、大学生を含む若者の社会問題への関心度は年々高まりつつある。とくに労働問題や人権などへの関心に高まりが見られ、時代の変化に応じて自らの将来を考える機会が以前に比べて増加していると考えられる。世の中ではさまざまな社会問題が起きており、これらすべてに目を向けることは難しいかもしれないが、一人ひとりが関心を持つことが未来への大きな一歩となるのではないだろうか。
社会問題に対する若者の意識については、海外に比べていまだ遅れが見られる点もあるが、年齢や性別問わず、自らが意識的に社会問題について興味関心を持ち、未来に向けて行動できる若者が増える社会になっていくことを期待したい。
参考
※1 日本総研|2022 若者意識調査 サステナビリティ、金融経済教育、キャリア等に関する意識(P.3, 11-14)
※2 労働政策研究・研修機構|子育て女性の職業キャリア──少子化とライフステージの視点から
※3 消費者庁消費者教育推進課|食品ロス削減関係参考資料(P.4-7, 18-19)
※4 子どもの貧困対策
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