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サステナブルな取り組みを行う企業にとって、その認知を広めるためのサステナビリティブランディングはとても重要な要素の一つ。本記事では、企業がサステナビリティブランディングを行うメリットや方法について、各企業の成功事例をもとにわかりやすくご紹介。
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エレミニスト編集部
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サステナビリティブランディングとは、持続可能な社会を意味するサステナブルの考え方を通じて自社のブランディングを行い、企業価値を高めること。サステナブルを起点にして社会貢献することで、新しいブランドの構築を目指すことも目的の一つだ。
環境問題が深刻化し、SDGsの重要性が問われるなかで、企業の取り組みが環境や社会にとって持続可能であること、サステナブルであることの価値は高まっている。そのため、サステナビリティブランディングは経営戦略の切り口や企業価値向上にとって非常に重要な役割を果たしている。
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SGDsやサステナビリティに取り組む企業が増えているなかで、サステナビリティブランディングに取り組むメリットは何なのだろうか。
近年、消費者は環境に配慮し、社会的責任を果たす企業に対して信頼を寄せる傾向がある。そのため、環境問題への配慮などを取り入れ、持続的に活動を行うことは企業としての評価を高め、信頼性を向上させることにつながる。SDGsにおいての取り組みを公表し、サステナブルな活動を実施することでユーザーからの評価が高まり、環境・社会・経済分野に対して貢献している企業であるというイメージが確立できるとともに、企業ブランドとしての価値向上も図ることができる。
企業は市場においてさまざまな評価をされるが、その評価の基になるのは市場参加者が持っているその企業についての知識である。企業が提供している商品を使ってみたり、CMを見たりして得られた知識が新たな知識を生み出し、それらが企業ブランドから連想されるものとして整理され、広まっていく。サステナビリティブランディングをうまく行うことが高い評価やいいイメージを確立することにもつながるため、慎重に行うことが重要だ。
ステークホルダー(消費者や取引先など)、とくに顧客からの評価は、企業存続のために重要だ。そのため、サステナビリティブランディングに取り組むことは、ステークホルダーからの共感を得ることや、信用アップにつながる。これにより、人材の定着化や経営の安定化につながる効果が得られるだろう。
サステナビリティに取り組む企業であることの認知度が高まることは、働く従業員の満足度の向上やエンゲージメントの向上につながる。企業が社会問題の解決へ向けて主体的に取り組んでいる場合、その組織に所属していることで従業員が仕事に誇りを感じたり、自信を持つことにもつながる。働きがいを感じる従業員が増えることで、生産性の向上や離職率を下げる効果も期待できる。
サステナビリティブランディングをしっかりと行うことで、それらの取り組みに対して関心の高い人材を採用しやすくなる。SDGsやサステナブルな取り組みに関心が高い人材は、世の中のニーズや仕組みの変化に敏感であるだけでなく、前向きに取り組む意欲を持ち合わせていることが多い。広い視野を持って業務遂行できる人材を確保することは、企業の存続に必要だ。
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近年では、環境問題や社会的な課題に対する世間の人々の興味関心が高まっている。そのため、企業は積極的にサステナビリティブランディングを意識した取り組みを行うことや、一般の消費者や他企業へ公表することが求められている。
環境や社会的な問題に関心を持つ消費者が増えているため、それに伴い持続可能な製品やサービスを求める傾向にある。環境に配慮した製品や倫理的なブランドに対する需要が高まっており、企業はそれに応えるためにサステナビリティブランディングを重視する必要があるのである。
SDGsやサステナブルに対する世間の関心が高まるなかで、サステナビリティに対する不適切な取り組みは企業の評判に悪影響を与える可能性がある。環境破壊や労働条件の問題などは、ステークホルダーからの批判をはじめ、あらゆるリスクを引き起こす可能性がある。そのため、サステナビリティブランディングはリスク管理や企業価値を存続、向上させるために重要なのである。
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サステナビリティブランディングの取り組みを行う際には、企業のビジョンと価値観に基づいて進めていく必要がある。企業はサステナビリティに対するコミットメントを確立し、持続可能な環境と社会を目指す共通のビジョンを定める必要がある。
サステナビリティブランディングを行う上で、環境へ配慮することは重要な要素だ。製品やサービス全体にわたって、環境に与える影響を考慮し、持続可能な資源の使用や排出物の削減に取り組むことがとても大切だ。サーキュラー・エコノミー構築がまさにカギと言えるだろう。
他の企業や組織とのパートナーシップを築くことが有益である。SDGsやサステナビリティに関心を持つ企業やNPOと連携することで、共通の目標に向けた取り組みを強化することができる。また、サステナブル領域における支援を行う企業と連携を行うことも、ビジネスイメージの構築を図ることや、消費者の関心や需要を把握し、競争力を強化することにもつながるだろう。
サステナビリティブランディングを行う上で注意すべきことは、「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」の状態を回避すること。「SGDsウォッシュ」とは、SDGsやサステナブルな活動を実施していると言いながら、その発言と中身が乖離している状態のことを指す。環境に配慮した活動を実施しているとしながら、実際にはまったく効果のない製品を販売することを「グリーンウォッシュ」という。
取り組みが不十分なままサステナビリティブランディングを行ったり、いい面ばかりの発信を行うことは、グリーンウォッシュ、SDGsウォッシュだと指摘される可能性が高くなる。万が一世間にそのイメージがついてしまえば、企業としての信頼を損なう可能性があり、ブランドイメージ低下につながるなど、悪影響を及ぼすリスクが高まる。そのため、サステナビリティブランディングを実施する際には、SDGsウォッシュの批判を受けないための対策が重要だ。
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実際に、SDGsにおいて企業ブランドとしてどのような取り組みを行えるのかを公表し、サステナブルな活動を実施することがブランド確立につながっている企業も多い。ここでは、各企業の成功事例を紹介する。
アウトドアブランドPatagoniaのサステナビリティブランディングは、時にユニークでありながらもメッセージが一貫している。実際に、ブラックフライデーに向けて行った広告で「Don’t buy this jacket(このジャケットを買わないで)」というメッセージを発信したことも話題になった。環境配慮を最優先している同社の製品でも環境に負荷をかけていることを示し、環境のことを考えて「エコロジカルフットプリントを削減するには消費を控えることが重要」というメッセージが込められていたのだ。
アメリカでもっとも商品が売れるとされている日に「地球のために不要な購買行動を控えよう」と消費者に訴えかけられるのは、一貫したブランド哲学があるためだろう。これは成功しているサステナビリティブランディングの一つと言える。
カリフォルニア発のフットウェアブランドAllbirds。フットウェアを販売するブランドの多くは、デザインや履き心地、機能性を前面に押し出したブランディングを行うことが多いが、Allbirdsは環境へのインパクトをメッセージとして発信している。同社は素材から製造方法までの環境へのインパクトを考えながら、徹底的に取り組んでいる。
2016年に創業したまだ新しいブランドながら、レオナルドディカプリオがアンバサダーに就任し、企業価値が14億ドル以上とも報じられているAllbirdsの快進撃は、間違いなくサステナビリティブランディングによるものだろう。
化粧品販売などを行うMaison KOSÉは、2009年から「SAVE the BLUE」というサステナブル活動を実施。沖縄のサンゴ育成活動に取り組むなど、CSR活動に積極的な姿勢を見せていたが、サステナブルな社会の認識が高まる中で、2020年4月により持続可能性を意識した内容にアップデートした。これは、これまで取り組んできた活動だけでなく、SDGsとの連動を考慮した「人々や地球環境の未来をよりよいものとする」を掲げるものとなっている。
具体的には、同社の人気ブランドから「雪肌精 クリアウェルネ」という新シリーズを発売。さらにバイオマスPETを採用したCO2の削減や、商品外装のティアテープ包装をなくすことによるプラスチック使用量の削減、商品に同封していた紙製の説明書や店頭で配布するパンフレットをQRコードに転用することで、紙の削減を実現している。
LA発のアパレルブランドReformationは、「Being naked is the #1 most sustainable option. We’re #2(何も着ないことが1番のサステナブルな選択だけれど、2番目の選択肢は私たちのブランドの服を着ること)」をミッションに掲げている。
同社で2015年以降に生産されている洋服はすべてカーボンニュートラル。カーボンオフセットと再生可能な繊維の使用により、「2025年までにClimate Positiveを達成する企業になる」というコミットメントを表明し、ホームページ内でロードマップまで詳細に公開している。また、製造工程の透明化や従業員支援にも積極的に取り組んでおり、衣料品リサイクル企業とオンラインパートナーシップを締結し、ブランドやリテーラーが下請け業者に公正な支払いをすることを支持・確約している。
設立当初から過剰な装飾を省き、ミニマルな製品づくりを続けてきた無印良品も、サステナブルを前面に打ち出す企業の一つだ。アパレル産業が環境へもたらす負荷の大きさが近年問題視されているなかで、無印良品は製品原料の選別から副資材、包装や陳列に用いる素材までのすべてを見直している。リサイクルにおいても廃ペットボトルの再生に頼らず、自社製品の製造工程で出る残渣を利用するなど、より循環を意識した仕組みづくりを行っている。これらの活動により、無印良品は環境意識の高いサステナブルブランドでの価値を高め、JSBIの調査では企業ランキング総合部門で2年連続で2位に輝いている。
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SDGsやサステナブルへの取り組みが企業に求められる近年では、企業価値を高めていくためにもサステナビリティブランディングが重要になる。それらに取り組む目的をしっかりと考え実行し、多くの人や企業を巻き込みながらサステナビリティやSDGsへのいい影響をスケールアップさせていくことこそが、サステナビリティブランディングの意義なのではないだろうか。
サステナブルな取り組みを始めるにあたり、豊富な知識や解決策をもつ会社のサポートを受けることもおすすめしたい。サステナブル領域における支援を行う企業と連携を行うことは、ビジネスイメージの構築や、消費者の関心や需要の把握などにつながるだろう。
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