イケア効果とは 労力をかけるほど価値を感じる?サステナブルとの関係も紹介

編み物をする手元

Photo by Rebecca Grant on Unsplash

「イケア効果」とは、自分の手でつくったものに愛着や価値を感じることで、マーケティングに用いられる考え方だ。本記事では、イケア効果の意味と活用事例、サステナブルな暮らしとのつながりについて解説。暮らしをよりよく変えてみたい方はぜひ参考にしてほしい。

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2023.03.22

イケア効果とは

かんなを使って家具をDIYする女性

Photo by Ian Schneider on Unsplash

イケア効果」とは、自分の手でつくったものには、そのものが本来持つ以上の価値を見出すという、人間の心理的傾向を意味する言葉だ。労力によって得られる過大評価を指す。イケア効果は、自分の直感や経験によってものごとを非合理的に判断してしまう認知バイアスの一種であるとされている。

イケア効果は、ハーバードビジネススクールのマイケル・ノートン氏、デューク大学のダン・アリエリー氏、イェール大学のダニエル・モション氏の3名によって、2011年に発表された考え方だ。被験者を対象に、自分でつくったものと既製品を並べ、どちらの価値が高いかと尋ねる検証を実施。

結果は、多くの人が自分でつくったもののほうが価値が高いと答えたという。このときの検証にスウェーデン発の家具店「IKEA(イケア)」の家具も使われたことから、「イケア効果」と命名された。

なお、イケア効果が発揮されるのは、最初から最後まで自分の手でつくることに成功した場合のみである。一部の作成工程のみ参加した場合や、結果的にものをつくりあげることに失敗した場合などでは、イケア効果は得られにくい。

イケア効果とコンコルド効果

コンコルド効果」とは、自分の行動が将来の損失につながると知っていながら、費やしたお金や時間、労力にとらわれ、合理的な判断ができなくなるという意味を持つ言葉だ。行動経済学における考え方である。

コンコルド効果の言葉は、採算が見込めないとわかっていながら開発を続け、最終的に事業に失敗してしまった超音速旅客機コンコルドが由来とされている。

イケア効果と同様に認知バイアスの一種ではあるが、言葉の意味は正反対だ。

カギを握るのは「サンクコスト(埋没費用)」

サンクコスト」とは、過去に費やした労力やお金、時間のことで、「埋没費用」とも呼ばれる。イケア効果とコンコルド効果どちらにもサンクコストが関わっており、最終的な自分の考えに影響を及ぼす可能性があるのだ。

サンクコストがプラスに働くと、「こんなに労力を費やしたからこそ、よい結果が得られた」というイケア効果が発揮される。反対に、サンクコストがマイナスに働くと、「こんなに労力を費やしたのに、残念な結果になった」としてコンコルド効果が発揮されるのだ。

イケア効果を活用した事例

イケア効果は私たちの日常生活でもよく感じられるものだ。ここでは、私たちの日常になじみ深い、イケア効果の3つの事例を紹介しよう。

ホットケーキミックス

小麦粉と卵・牛乳と泡立て器など、手づくりホットケーキの材料

Photo by Brands&People on Unsplash

アメリカで発売された初期のホットケーキミックスは、粉に水を混ぜて焼くだけという非常にシンプルな商品だった。自宅で簡単にホットケーキをつくれることが売りだったが、当時はあまり売れ行きがよくなかったそうだ。

そこで、水だけを加えてつくる商品から、卵や牛乳も加えてつくる商品へ変更。ホットケーキミックスの売り上げはアップし、たちまち広く親しまれる商品になったという。

あえて「卵や牛乳を加える」手間をプラスしたことで、「自分でつくった」という実感を得られるようになり、イケア効果が発揮されたケースである。

家庭菜園

トマトを家庭菜園する様子

Photo by Markus Spiske on Unsplash

家庭菜園も、イケア効果の代表的な活用事例のひとつ。

スーパーや青果店で買った野菜よりも、成長過程を見守りながら時間をかけて育てた野菜のほうが、よりおいしいと感じられる。家庭菜園を経験した方なら、共感できるのではないだろうか。

野菜を種や苗から上手に育てるのは難しい。水やりや温度管理、害虫対策など、非常に多くの時間と手間がかかる。しかし、この「育てる」という大きな労力を経て完成するからこそ、イケア効果が存分に発揮される。

プラモデル

飛行機のプラモデル

Photo by Matias Luge on Unsplash

イケア効果の活用事例として、プラモデルも挙げられる。

プラモデルは、自分でパーツを切り離し、説明書を見ながら一つひとつのパーツを慎重に組み立てていく。複雑なプラモデルであるほど、完成品ができるまでに非常に時間がかかる。場合によっては、途中で失敗する可能性もあるだろう。

だからこそ、時間をかけてつくりあげたプラモデルには、並々ならぬ愛着がわくのだ。自分がかけた労力の結晶でもあるため、簡単に捨てることはできないだろう。イケア効果が十分に発揮されていると考えられる。

イケア効果でごみを減らせる?

イケア効果は、マーケティング分野のみならず、サステナブルな暮らしとも深いつながりがある。

サステナブルな暮らしを実現するための基本は、3R(リデュース・リユース・リサイクル)だ。3Rでもっとも優先順位が高いのが、ごみを減らす「リデュース」。イケア効果は、このリデュースの実現に大いに役立つ。

3R(スリーアール)とは? 優先順位はリデュース、リユース、リサイクル

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近年は、大量生産・大量消費の傾向が著しい。家具や家電など次から次へと新しいものが登場し、ひとつのものを使い続ける考えが薄れて、まだ使えるのにごみとして廃棄されることが増えた。大量生産・大量消費は、豊かな暮らしをもたらす一方で、地球の環境問題や資源枯渇などの問題を招いている。

この問題に歯止めをかけるため、家具や洋服、食器など、お店で買うものを「自分でつくるもの」に変えるのはどうだろう。また、古くなった家具・洋服、壊れた食器などをリメイクや修理して使うこともできる。

自分の手で時間をかけてつくったものにはイケア効果がもたらされ、特別な愛着がわく。愛着がわいたものの価値は高まり、より長く大切に使い続けようと思えるだろう。

結果として、まだ使えるのに簡単に捨てるという行動が減り、余計なごみが出にくくなる。必要以上にものを増やしたり、無駄な買いものをしたりといった行動も減少。リデュースの実践、すなわち「サステナブルな暮らし」の一歩を踏み出せるのだ。

壊れた・欠けた食器を直す

割れたり欠けたりした食器を修理する伝統的手法である「金継ぎ(きんつぎ)」。天然の漆と純金粉で修理して、ものを長く大切に使う、日本らしい習慣だ。金継ぎに興味のある方は下記のやり方を参考にしてほしい。

金継ぎの基本のやり方 初心者向けキットを使った手順と体験レポート紹介

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イケア効果は、自分がつくったものへの過大評価を意味する言葉。マーケティングに用いられ、サステナブルな暮らしとも深いつながりがある。

既製品ではなく自分の手でつくったり、リメイクや修理して繰り返し使ったり。何かひとつからでいいので、取り入れてみよう。ひとつのものを大切に使い続けたいと思えるようになれば、ごみや無駄な買いものを減らせる。

イケア効果の意味を知り、地球にもお財布にもやさしいサステナブルな暮らしをはじめてみては。

※掲載している情報は、2023年3月22日時点のものです。

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