2006年より継続的にカカオ農家支援活動を続けている明治。2022年からは、カカオを通じたサステナブルなアクションをより広げるためのプロジェクト「ひらけ、カカオ。」を開始している。先日その一環として開発された“カカオ新素材”を使った新商品が発表された。新商品発表会のレポートとともに、驚きにあふれた新しいカカオ体験と、実現までのストーリーを紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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「カカオって言われなかったら絶対にわからない新しい味!」
「カカオ=チョコレートのイメージしかなかったけど、全然印象が違う! カカオからピンク色が想像できないからびっくりしました」
「なんだかベリーっぽい!栄養が詰まっているのを感じます。甘すぎず大人っぽい味わいで好きですね」
「フルーティだったり、独特の食感だったり、いままで知らなかったカカオのおいしさにびっくりしました」
当日会場に集った人たちが、新商品を試食した率直な感想だ。カカオ豆からつくられるチョコレートとは味・見た目ともに大きくかけ離れている様子に、“いままでのカカオのイメージとは全く違う”という意見が殺到した。
あまり知られていない事実だが、チョコレートの原料として使われている「カカオ豆」は、カカオの実全体のおよそ1割。 カカオの実全体に着目することで、お客さまやカカオ農家、ひいては地球全体にとって持続可能なカカオの生産を実現させたいという想いからこの新商品は開発された。
今回使用された新素材の1つ「カカオフラバノールエキス」は、カカオ豆に含まれている「カカオフラバノール」というポリフェノールの一群と、カカオ豆を覆っている果肉(カカオパルプ)を絞った果汁からつくられている。これまでチョコレートの製造過程で使われていなかった部分が、アップサイクルされた形だ。果肉、果汁という言葉にハッとしたかもしれないが、まさにみんなが驚かされたのは、カカオがフルーツだという事実だった。
Photo by 明治
今回発売されたのは、「カカオフラバノールエキス」を使ったブランド「カカフル」のドリンク、ソルベ、タブレットの3点と、もう1つの新素材「カカオグラニュール」から生まれたブランド「カカウェル」の1点の合計4点。
「カカフル」シリーズには、「カカオがフルーツであること」、「フラバノールを含んだ素材であること」、「チョコレートに限らずさまざまな商品でカカオの価値を全力(フル)で広げていきたい」という思いが込められている。
特徴的な赤い色は、カカオ豆に含まれるアントシアニンという成分によるもので、着色料などを使用しない素材由来の鮮やかな色合いだ。そして驚きなのが、カカオの果肉を絞った果汁の甘酸っぱいフルーティな味わい。実は一般的なフルーツの果汁に比べてカカオ果汁は糖度が高く、飽きのこない絶妙な味わいを実現させるために、配合にはかなりこだわったそうだ。
「カカフル カカオの新しいカタチ 赤くて甘酸っぱいカカオフラバノールドリンク」。カカオがフルーツであることをよりわかりやすく体感できるのがドリンク。カカオフラバノールエキスに加えてカカオ果汁を贅沢に60%配合し砂糖・香料・着色料不使用で仕上げた。これまでにない新感覚のドリンクだ。
「カカフル カカオの新しいカタチ 赤くて甘酸っぱいカカオフラバノールソルベ」。食べた瞬間の口溶けと、独特の甘酸っぱさ、そしてカカオフラバノールエキスを加えたことで生まれる苦味のアクセントのバランスを追求した。
「カカフル カカオの新しいカタチ 赤くて甘酸っぱいカカオフラバノールタブレット」。種類別名称としてはチョコレートのカテゴリーに入るが、色も風味も全く別物。南国フルーツのような甘酸っぱさと、後味に感じる独特の苦味がクセになる。
「カカウェル」は「カカオ」と「ウェルネス」を組み合わせた造語で、「カカオ素材を取り入れて健康的な日々を過ごしてほしい」というメッセージが詰まっている。
カカオにはさまざまな栄養が含まれているが、カカオを多く含むほど素材自体の苦味が引き立ってしまい、継続して食べるのが難しいと感じられているのが現状だ。そこでカカオの栄養を手軽においしく摂れるようにと、明治独自の新素材「カカオグラニュール」を開発し採用。カカオの持つ栄養素をなるべくキープしつつ、他の食材と組み合わせることで健康的なおいしさを提供できるようにこだわった。
「カカウェル カカオがくれるおいしさと栄養 つめ込んだ、カカオ素材食品」。新素材「カカオグラニュール」をメインに、アーモンドやオーツ麦、デーツ、はちみつなどを加えて食べやすい一口サイズに。カカオポリフェノール、食物繊維、4種のミネラル、ビタミンEをおいしく手軽に摂ることができる。
新商品に使われている新素材は、明治がカカオ農家とともに長い年月をかけて開発したものだ。
「カカオフラバノール」はカカオポリフェノールが一群で、カテキンやエピカテキンなどいくつかが結合したプロシアニジンで構成されている。健康機能に対する多くの報告がされている可能性を秘めた成分だが、カカオをチョコレートに加工する過程で分解されてしまうため、安定的に素材化することは不可能だった。また抽出できたとしても、決しておいしいものではないというのもネックだった。
そこでカカオが甘酸っぱいフルーツだということに着目した明治は、独自の取り組みで「カカオフラバノール」を豊富に含んだフルーティな味わいのエキスを開発。これが、カカオ=チョコレートの固定概念を覆した「カカオフラバノールエキス」だ。ベトナム社会主義共和国の農家の協力を得て、エキス原料として最適なカカオ豆を開発するまで至っている。
一方「カカオグラニュール」は、カカオの細胞内に含まれるポリフェノールやココアバターなどの成分を閉じ込めたまま粉末状にした、明治独自の製法による新しいカカオニブ原料。ポリフェノールを多く含む、苦味が弱い、脂質がにじみ出さないという3つの特徴を持ち、用途として限りない可能性を秘めている。
カカオ豆は5000年以上も人類が食してきた歴史があり、カカオポリフェノールに代表される多くの健康成分が含まれている。しかしカカオポリフェノールはチョコレートを加工する工程で分解されてしまうという弊害があった。カカオの価値をもっと認知してもらいたいという思いから、チョコレートの製造工程を一つずつ見直し、健康に大きく寄与するカカオの細胞膜に着目。治験がない手探りの状態から仮説と研究、検証を繰り返し、明治独自の製法を発明して誕生したのが「カカオグラニュール」という新素材だ。
また農家とともに新素材開発に取り組むだけではなく、カカオ農家支援活動(メイジ・カカオ・サポート)を通して、新しい仕組みづくりへの挑戦を継続している。
具体的には、農園までのトレーサビリティの推進、児童労働の撤廃に向けたガーナ共和国での取り組み、森林減少への対策としてカカオ農園とその周辺地域における森林環境と生態系の維持回復を目的とした土壌改善をするなど、挙げればキリがない。活動内容の豊富さと透明性は、大手企業のなかでも群を抜いていると言えるだろう。消費者が物を選ぶ時にこれらを思い出すことで、地球環境保全や社会問題解決に少しでも協力することができる。
Photo by 明治
イベント当日は、ゲストとのクロストークが行われた。サウナを含めた複合型ウェルネスのプロデュースしているサウナトータルプロデューサーの笹野美紀恵さん(写真右)は、「ぜひ取り入れたい」と絶賛。一般社団法人SWiTCH代表理事の佐座マナさん(写真中央右)は、「地球温暖化対策のためにも、ぜひ透明性のある商品を選びたい」と語った。
他にも、カカオサポート基金の設立や、循環型社会に向けたカカオ豆の皮(カカオハスク)のアップサイクルプロジェクトなどを通じて、カカオに関わるすべての人のウェルネスライフの実現を目指している。
ELEMINISTを日頃支えてくださっている読者のみなさんを代表して、ELEMINIST Followersにも発表会に参加してもらった。サステナブルでエシカルな暮らしやトレンドに関して感度が高く、日々エシカルなアクションを実践している彼らは、どんなことを感じたのだろうか。
「いままでのカカオの概念が覆される、新しいスイーツでした。カカオがフルーツだということも、お恥ずかしいながら今回始めて知りました。無駄を減らしていくことは消費の盛んな世の中では必要なこと。それを大きな会社が行ってくれているのは、社会にとって大きなインパクトになると思います」
「フルーツ感がすごくてびっくりしました。華やかな味でおいしかったです」「明治さんが現地に出向いて生産者さんと交流したり、貧困を支援している、というイメージはなんとなく持っていたんですが、ここまで力を入れているとは知りませんでした」
「チョコレートには、児童労働や森林破壊などいろんな問題が潜んでいると言われている中で、大手の企業が問題に取り組んでいるのは、消費者としても嬉しいです」「おいしく食べられるものでよい栄養素が摂れて、サステナブルに貢献できるのはとてもいいと思いました」
「いままで捨てていたものをどう活かすかや、みんなを幸せにするサプライチェーンはどんなものかという問題は、(別業種の)私も常に直面している課題なので、とても勉強になりました」
「スポーツをしているので、ふだんの食生活で栄養素をすごく気にしています。カカオの良質な栄養素を手軽にとれるような商品は、とても嬉しいですね。アップサイクルの取り組みにも感銘を受けました」
イベントに登壇した明治のみなさん。写真左から株式会社 明治カカオマーケティング部CXSG長の木原純さん、株式会社 明治商品開発研究所カカオ開発研究部の西山由梨さん、株式会社 明治食品開発本部カカオ開発部の宮崎翔太さん。
Makuakeにて数量限定販売。記者発表当日、Makuake受注開始セレモニーが行われた。
カカオの新しい可能性に挑戦し、これまでとは違うカカオの価値や、さまざまなシーンでの愉しみ方を教えてくれた今回のプロジェクト。驚きに溢れたワクワクする食体験を通じて、参加した人々には多くの学びがあったようだ。気になった方は、ぜひ新しいカカオを味わってみてはいかがだろう。
写真提供/明治 撮影/赤崎えいか 執筆/河辺さや香 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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