「ヒュッゲ(HYGGE)」とは、デンマーク発のライフスタイル。ほっこりした時間や居心地のいい空間などを意味する。欧米ではすでにカルチャーとして定着しており、日本でも徐々に認知度が高まっている。この記事では、言葉の意味や成り立ち、ヒュッゲな暮らしを実践するためのアイデアをいくつか紹介しよう。
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「ヒュッゲ(HYGGE)」とは、デンマーク発のストレスフリーなライフスタイル。直訳するのは難しいが、こたつでミカンを食べるときの脱力感や、縁側でひなたぼっこするときのホッコリ感を楽しむ生き方、といえばイメージが湧くだろうか。
仕事でストレスを感じていて、家では心豊かに暮らしたい。そんな働く女性の願いを叶える北欧流の幸せな暮らし方が、ヒュッゲなのだ。
この言葉がデンマークで使われるようになったのは、1800年ごろのこと。英語辞書サイトの「LEXICO」には「普段の生活における快適さや、心地よさ」とあり、語源はノルウェー語でウェルビーイングを指す「ヒュッゲリ(Hyggelig)」だそうだ。
北欧はどこも冬が長くて、気分が暗くなりやすい。そんな厳しい環境のなかでも明るくハッピーに過ごそうと、家でのリラックスタイムを楽しむ文化が発達してきた。
たとえば、北欧雑貨のショップを想像してほしい。座り心地のよさそうな椅子、カラフルなファブリック、色鮮やかな観葉植物。そんなお気に入りのアイテムとたくさんのキャンドルに囲まれながら、自分の時間をゆっくり満喫する。これこそがヒュッゲの真髄なのである。
ヒュッゲな暮らしが浸透しているデンマークでは、人々の幸福度がとても高い。国連が毎年発表している世界幸福度ランキングでは常に上位に位置しており、2023年の調査では世界137ヵ国中2位にランクインしている。一方の日本は47位と、ストレス社会が反映されたのか寂しい結果に終わった。
デンマーク人が幸せな理由は、ヒュッゲ以外にも文化的背景や社会制度が深く関係している。まず日本と大きく違うポイントは、デンマークでは仕事よりプライベートを優先するのがごくごく当たり前というところだ。
国教がキリスト教ということもあり、愛する家族や友人との時間を大切にするこの国では、たとえ役職付きの人でも残業せずに定時ダッシュで帰宅する。男性も普通に家事や育児をしてくれるし、女性にばかり負担がかかるということも少ないようだ。
それに、デンマークは言わずと知れた高福祉の国。医療費や学費は無料で、みなが充実した社会保障のもとに暮らしている。もちろんその分税負担は重く、所得税は最大で収入の55%、消費税は日本より2.5倍も高い25%だ。それでも安心して生活するためのベースが国からしっかり保証されていることから、心に余裕を持ってのびのび暮らせるのだ。
日本ではまだ知る人ぞ知る存在であるヒュッゲだが、欧米ではすでにカルチャーのひとつとして市民権を得ている。2016年、イギリスの流行語大賞にノミネートされたのをきっかけとして、ストレスを感じながら働く世界中の人々に受け入れられるようになった。
キャンドルやお花代程度でリラックス感に浸れるヒュッゲな暮らしは、誰でも今すぐ始められる。そんな手軽さもあって、世界中のゆるゆる過ごしたい女子たちにもウケているのだ。
とはいえ日本に住む私たちが、毎日仕事終わりに十分な自由時間を確保するのは、正直ちょっと難しい。疲れている日はごはんを食べてお風呂に入るだけで精一杯だし、ちょっとスマホをチェックしているうちに、すぐに寝る時間が来てしまう。「リラックスタイムを設けるより、できれば早く寝たい」と思う日も、少なくないのが現実だ。
それならお隣スウェーデン発の「ラゴム」から始めてみてもいいかもしれない。ラゴムは、頑張りすぎたり人に合わせすぎたりしなくも、自分にとって「いい塩梅」ならOKじゃないか、という肩肘張らない生き方だ。
これならリラックスする時間を楽しむヒュッゲと違って、ふだんから自分のコンフォートゾーンを大事にしていればいいだけだ。お金も時間も特別かからず、心の持ちようを少し変えるだけで、気持ちをちょっぴり楽にできるから、忙しいあなたにピッタリではないだろうか。
「足るを知る者は富む」という言葉が昔あったが、周りの目を気にして、あれもこれも求めたって、疲れるだけで誰の得にもならない。毎年変わるトレンドを追い続けたり、完璧を求めて疲弊したりする前に、まずは今の自分を受け入れてみよう。
自分を大事にして、あるがままを認めてあげれば、「ちょうどいい感じ」の素敵な日々をあなたも送れるはずだ。
Photo by Pavan Trikutam on Unsplash
それではここで、ヒュッゲな暮らしを送るためのアイデアを、予算別に7つ紹介したい。コージーなリラックスタイムはお金を使わなくても簡単に作れるし、季節を問わずにいつでも実践できるため、気軽に取り入れてみてはいかがだろうか。
北欧の家といえば、やっぱり暖炉だ。だが日本人で暖炉がある家に住んでいる人は、あまり見たことがない。そこでおすすめしたいのが、暖炉やキャンプファイヤーの動画だ。
冗談のような話だが、炎が燃えるのを延々と映しただけの映像はすでに動画サイトにたくさんアップロードされている。なかには再生回数1,800万回超えのものまで存在する。視聴者からは「揺れる炎に癒されて、心がホンワカする」と、人気なようだ。
目で見て楽しんでも、動画をBGMにして読書してみてもいい。静かで暖かい炎の音が、意外と心を落ち着かせてくれる。これなら0円でリアルな北欧感が出せ、PCをTVにつないで大画面に映し出せば、女子会のときにもウケそうだ。
ほかにも0円でできることはたくさんある。たとえば、22時以降はスマホの電源を落としてみる。SNSを見続けても、他人の芝生は青く見えるもの。周りに左右されないで、自分を大事にしている女性のほうがよっぽど魅力的だ。まずは自分時間を優先するのに慣れるところから始めてみよう。
古本屋で一冊、お風呂で読む用の本を買ってみる。100円の古本なら、ちょっと水がかかってフニャフニャになっても、そんなに後悔しない。お風呂のフタがない家でも大丈夫だ。読むのは漫画でも小説でも、自分が好きなものなら何でもいい。
トリートメントしている時間に読書すれば、髪もツルツルになり、自分の内面も磨けて一石二鳥だ。それに、お風呂でたっぷりリラックスして過ごせば、ぐっすり寝られて明日の仕事にも集中できる。いいサイクルが100円でスタートできるなら、悪くないのではないだろうか。
部屋に観葉植物を置いて、目から癒されてみる。虫が出るのが怖かったら、ミニサボテンでも大丈夫だ。忘れずに水やりをする自信がなかったら、多肉植物を揃えてもかわいい。もっと簡単にグリーンを取り入れたかったら、ドライフルラワーでボタニカル調に部屋を彩ってもよさそうだ。
Photo by Scott Webb on Unsplash
インテリアに緑を取り入れれば、それだけで気持ちが明るくなり、心も自然と和む。キッチンの窓際でハーブを育てて、自家製ハーブティーを作ってみても楽しいかもしれない。
ヒュッゲに必要な物は? とデンマーク人に聞くと、「とりあえずキャンドル」と返ってくる。電気を落として、優しく光るたくさんのキャンドルに囲まれれば、せかせかしていた気持ちも落ち着く。
どんな家でも一瞬でノルディックな雰囲気に早変わりだ。雑貨屋さんでいろんなデザインのキャンドルを集めるだけでも楽しいし、アロマキャンドルを使えばリラックス効果も期待できる。
火をつけるのが苦手な人は、使いやすいLEDライトがおすすめだ。これなら寝落ちしても火事の心配がないから、子供やペットがいる家庭でも安心して北欧ムードを味わえる。
物が多くてストレスを感じているなら、身の回りの環境を整えることからスタートしてみてはいかがだろうか。まずは近所のフリーマーケットやバザーに友達と一緒に出店して、思い切ってしばらく使っていないものを売ってしまおう。
たくさん出品しなくても、何人かの友達と不用品を持ち寄れば、出店料の足しくらいにはなるだろう。ヒュッゲな暮らしを続けていくには、こうやって自分のストレス要素を少しずつ排除していくのも一つのコツだ。
外国の映画でよく見る、ソファに無造作においてある大判のふわふわブランケット。あれが一枚あると、よりヒュッゲ感を楽しめる。ブランケットにくるまりながら、お気に入りのドリンクをゆっくり飲めば「あ、これがヒュッゲなんだ」と気づくはず。
ブランケットはピクニックにも持って行けるし、ベッドライナーとして使っても結構いいアクセントになるから、一枚あれば重宝する。素材はアクリルなどの化学繊維より、コットンやウールの方が高見えしてよさそうだ。
1万円も使えるなら、ヨガ教室に通ってみたり、週末に近場のキャンプ場でグランピングしてプチ贅沢をするのもありだ。グランピングなら必要なものや食材などは会場が用意してくれるから、アウトドア初心者でも全然問題なく、段取りの手間がいらないので無駄に疲れない。
自然のなかで大好きな人たちとゆっくりすれば、自然と気持ちが解放されるはず。思う存分太陽の光や森の匂いを楽しんで、自然の恩恵を味わってみよう。
Photo by Kiki Siepel on Unsplash
ヒュッゲやラゴムは一過性のトレンドではなく、いつも北欧の人たちの心と一緒にあるもの。ストレスフルに生きる現代人は、深呼吸する時間すらないほど忙しいから、いい意味でちょっと脱力感のある生き方が、いま世界中に広がっているのだ。お金や手間をかけなくても心の余裕は取り戻せるので、あなたもリトリート感覚ではじめてみてはいかがだろうか。
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