12月10日の「人権デー」とは 歴史・由来・世界が抱える人権問題に注目を

手を交差させたピースサイン

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash

毎年12月10日は、国連が定めた「人権デー」である。基本的人権の重要性や、身近に潜む人権問題について、あらためて学んでみよう。人権デーが誕生した経緯や、過去の主な取り組みについて解説する。「人権」に思いを馳せるきっかけにしてみてほしい。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2022.10.31
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

12月10日の「人権デー」とは

人権デーとは、1948年に開催された国際連合第3回総会において「世界人権宣言」が採択されたことを記念して制定された国際デーである。英語表記は「Human Rights Day」だ。

世界人権宣言とは、基本的人権尊重の原則を定めたもの。人権保障の目標や基準を、国際的にはじめてうたった画期的な宣言であり、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として認識されている。法的拘束力は持たないものの、基本的人権に関する目標や基準が明確にされたという点で、非常に大きな意味を持つ宣言だったと言えるだろう。

毎年12月10日の人権デーには、国際社会に向けて人権保護と基本的自由の尊重を訴えるための各種イベントが開催されている。その目的は、人権尊重の思想を広く世界に浸透させることだ。

世界人権宣言が採択された1948年は第二次世界大戦直後であり、戦争や人種、宗教に思想など、さまざまな要素をもとにした差別や不平等が横行していた。世界人権宣言は、こうした社会情勢を反映したものだと言えるだろう。

しかし現代においても、差別や不平等は解消されていない。人種や宗教、性別、出生、戦争や侵略などが原因で、差別や不平等に悩む人はまだまだ多い。毎年12月10日の人権デーが果たす役割は非常に大きい。

過去の人権デーの取り組みは?日本や世界の動き

過去の人権デーには、人権にまつわるさまざまな取り組みが行われている。いくつかの事例を紹介しよう。

1949年|法務省による「人権週間」の制定

1948年にその歴史をスタートした人権デー。翌1949年には、日本の法務省が「人権週間」を制定している。期間は12月4日から12月10日までだ。国際デーを中心に、「人権」に心を寄せる期間を長くとることで、さまざまな啓もう活動を全国展開。法務省と関係各所・団体が協力して行っている。(※1)

人権週間には、さまざまな差別や偏見に焦点を当て、各種メディアを通じたイベントを開催。近年では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発端とする差別や、インターネット上の誹謗中傷も注目されるトピックである。

1968年|「国際人権賞」のスタート

1968年の人権デーより、国連がスタートしたのは「国際人権賞」である。世界人権宣言をもとに、格差や差別を是正するための行動を称賛する目的でつくられた賞で、5年に一度発表されている。個人・組織の両方が受賞対象となり、選出するのは特別委員会だ。

過去には人権活動家保護団体や奴隷廃止運動家、国連人権高等弁務官やNPO設立者などが国際人権賞を受賞。直近では2018年に授与が行われた。次回の授与は2023年を予定している。

1992年|「人権擁護活動シンボルマーク」の制定

1992年に、法務省人権擁護局および全国人権擁護委員連合会は、人権擁護活動シンボルマークを制定している。このシンボルマークは、法務省の人権擁護機関が行う啓発広報活動に使用。活動内容に統一性を持たせ、また人々の興味・関心をよりいっそうひきつけることを目的としている。

人が寄り添う姿をモチーフにしたマークには、「『人権』はすべての人が生まれながらに持っているものであり、世界中の人々の『人権』が最優先に尊重され、共存し合っていかなければならない」という願いが込められている。(※3)

2018年|「世界人権宣言」採択から70年目の節目

2018年は、世界人権宣言から70年目という記念の人権デーであった。世界各国で、さまざまな団体が「人権」に関わる啓もう活動を行った。

人権NGOの一つであり、世界各国で人権侵害問題の解決を目指すHuman Rights Watchは、70周年の節目の日に、「世界30ヶ所の有名な建造物を青くライトアップする」というイベントを開催。人間の誰もが持つ基本的人権や尊厳の重要性を、広く世界に訴えた。(※4)

人権にまつわるさまざまな問題

人権にまつわる問題は、我々の身近な場所にも潜んでいる。12月10日の人権デーを前に、人権問題をより身近に感じてみよう。

差別と貧困が生み出す不平等な社会

我々の社会にはびこるさまざまな差別は、身近な人権問題のひとつである。差別される側が住む場所や教育の機会を奪われれば、それは貧困の連鎖につながっていく。不平等な社会は、人権問題との関連も深い問題と言えるだろう。

世界の「貧困率」の現状 6人に1人が相対的貧困に直面する日本の実情とは

関連記事

社会的弱者に対するいじめや虐待

どの国家においても、個人単位で発生し得る問題が、高齢者や子ども、障がいのある人々などに対するいじめや虐待である。社会的弱者に対する不当な扱いは、すべての人が平等に持つ基本的人権を無視した行為だ。

女性に対する各種ハラスメント

女性に対する差別や不平等な扱い、各種ハラスメントについても、人権問題のひとつと言えるだろう。セクハラやモラハラ、パワハラにマタハラなど、その対象は実に幅広く、誰にとっても身近なものである。

【2022年】ジェンダーギャップ指数ランキング 世界と日本の現状・今後の課題は

関連記事

武力紛争や戦争による重大な人権侵害

武力紛争や戦争による人権侵害は、国家による人権侵害の代表例である。国同士の紛争や戦争が起きれば、そこに住む人々は安全な日常を奪われてしまう。理不尽な状況下で命を落としてしまう市民も多い。たとえ命が助かっても、住む場所を追われ、難民化せざるを得ない人々も少なくないだろう。国家が関わる人権侵害の場合、被害の規模も非常に大きくなりがちである。

他人事ではない「紛争鉱物」 規制の理由と知っておくべき人権問題

関連記事

人権デーをきっかけに身近な人権問題に目を向けて

誰もが当たり前に持っていなければならない「人権」。とはいえ実際には、人権侵害によって非常に厳しい状況へと追い込まれてしまう人も少なくない。ふだんあまり意識することがないからこそ、12月10日の人権デーをきっかけにしてみよう。

我々の身近な場所にも、根深い人権問題は数多く潜んでいる。まずはそれらが「人権問題である」と知るところからスタートしてみてほしい。

国連が定めた記念日「国際デー」一覧

関連記事
※掲載している情報は、2022年10月31日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends