EUが54億ユーロの水素プロジェクトを承認 15カ国が共同で技術革新を目指す

水素エネルギー開発を進めるEU

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EUが水素エネルギーの活用に向けたプロジェクトを承認した。最大54億ユーロの公的資金が投じられ、15の加盟国とともに、仏アルストムや独ダイムラーなども資金を拠出。とくに交通分野での水素製造や燃料蓄電池、輸送と流通、最終消費者への適用に焦点を当てたプロジェクトに参画するという。

岡島真琴|Makoto Okajima

ライター

ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。ライター・編集者として活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRESSを運営。

2022.08.09
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EU15カ国が水素エネルギー技術を推進

水素エネルギー開発を進めるEU

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欧州委員会は2022年7月15日、水素技術のバリューチェーンにおける研究・革新と最初の産業展開を支援するプロジェクトを承認した。

プロジェクトの名称は「IPCEI Hy2Tech」。オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペインの15加盟国が共同で準備してきたという。

加盟国は最大54億ユーロ(約7400億円)の公的資金を拠出し、さらに民間企業から88億ユーロ(約1兆2000億円)を調達する。すでに、ドイツ商用車大手のダイムラー・トラックやイタリア重電大手のアンサルド・エネルジア、デンマークのエネルギー企業オーステッド、フランス鉄道車両大手アルストムなどをはじめとする35社が、41のプロジェクトに参画する予定だ。

IPCEIのプロジェクトは、とくに交通分野での水素製造、燃料蓄電池、水素の貯蔵・輸送・流通、最終消費者への応用などを対象としている。またこのプロジェクトにより、約2万人の雇用創出につながることが期待される。

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グリーンエネルギーへの移行に期待

欧州委員会のマルグレーテ・ヴェスタガー上級副委員長は、「水素は将来的に大きな可能性を秘めており、エネルギー源の多様化とグリーンな社会への移行に不可欠な要素だ」と語る。

「しかし、このような革新的な技術に投資することは、一加盟国や一企業にとってはリスクが高い場合がある。そこで、IPCEIに向けたEUの国家補助規則が果たすべき役割がある」と、水素開発を担う本プロジェクトの使命を語る。

また欧州委員会のティエリー・ブルトン委員(域内市場担当)は、「水素はエネルギー多消費型産業のグリーンエネルギーへの移行を可能にし、化石燃料からの脱却を進める」として、水素技術への投資によってエネルギー分野でEUがリーダーシップを発揮することに意欲を示した。

ロシアによるウクライナ侵攻で、エネルギー源を多様化することは欧州にとって喫緊の課題となっている。環境にやさしいグリーンな社会への移行を水素プロジェクトが加速させることができるのか、引き続き注目が高まっている。

※掲載している情報は、2022年8月9日時点のものです。

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