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毎年7月11日は「世界人口デー」である。どのような意味を持つ日なのか、知らない人も多いのではないだろうか。世界人口デーの目的や背景、世界人口の推移について詳しく解説する。よりいい未来を創るため、世界人口の「いま」と「課題」に注目しよう。
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世界人口デーとは国連デーのひとつであり、毎年7月11日にやってくる。英語表記は「World Population Day」だ。世界人口デーは1990年、国連人口基金の提案によって正式に制定された。その目的は、世界が抱える人口問題に目を向け、解決への糸口を探ることにある。
世界人口デーが制定された背景には、世界の人口が50億人を突破したという記念すべきニュースがある。「50億人目の赤ちゃん」として国連人口基金が正式に認定したのは、ユーゴスラビア生まれのマテイくんだ。1987年7月11日のことだった。
当時、国連事務総長を務めていたハビエル・ペレス・デ・クエヤル氏が、「マテイちゃんと同じ世代の人々が平和に暮らせるように」と祝福の言葉を贈ったとされる。その後、世界人口が50億人を突破したことの記念として、また未来への願いを形にする目的で制定されたのが、世界人口デーなのだ。(※1)
世界の人口は、20世紀以降、急激に増加している。産業革命がスタートした頃の世界人口は、わずか10億人程度であった。その後1950年には25億人を突破。1986年には50億人を超えている。そこからわずか10年ほど、1998年には人口60億人を突破したニュースが伝えられた。70億人を突破したのは、2011年のことだ。(※2)
国連人口基金が発表した「世界人口白書2022」によると、2022年時点の世界の人口は79億5400万人で、2021年と比較して7,900万人増加した。2050年には、世界の人口が97億人にのぼると試算されている。(※3)
このような急激な人口増加の背景にあるのは、医療の発達による死亡率の低下、技術革新による作物生産能力の向上などが挙げられるだろう。なかでも大きな影響を与えているのが、「発展途上国における出生率の高さ」である。
発展途上国で貧しい生活を強いられる人々にとって、日々の生活のために子どもは欠かせない存在だ。子どもが大きくなれば、家庭内の貴重な労働力になる。ときには子どもの人身売買によって、生活費を確保するようなケースもある。さらに教育を受ける機会がないまま成長した子どもたちは、親世代と同じことを繰り返さざるを得ない。負のループによって、人口はどんどん増加しているのだ。
2022年版の世界人口ランキングは、以下の記事で紹介している。日本の順位や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響についても、ぜひ参考にしてみてほしい。
急激な人口増加の裏には、さまざまな問題が隠されている。いま我々が直面している人口問題を具体的な例とともに解説しよう。
「成長の限界」は、1972年に出版された人口増加に関する研究レポートである。「1960年代の人口増加率と経済成長率がそのまま継続した場合、100年以内に地球の成長は限界を迎える」という予測結果で、世界中に衝撃を与えた。
人口増加や過度な経済活動に歯止めが効かないまま推移した場合、食糧不足や資源の枯渇、環境汚染など、ありとあらゆる問題が引き起こされると予想している。もしこの予想が現実になれば、人口は減少し、地球も崩壊の一途をたどっていくだろう。だからこそ、人口増加にも経済活動にも、適切なブレーキをかける必要がある。
成長の限界については、以下の記事で詳しく解説している。50年後や100年後の世界予測についても、ぜひ参考にしてみてほしい。
「人口爆発」とは、急激なスピードで人口増加が進むことを言う。人口爆発が起きた場合、それに対処するための環境整備が間に合わない。よって、以下のような問題が多角的に発生すると予想されている。
・貧困層の拡大
・食糧不足
・環境破壊
人口爆発がもたらす具体的な影響や各国の対策については以下の記事で具体的に解説している。
世界人口増加の背景には、女性や少女への性暴力や望まない妊娠といった問題も隠されている。貧困生活の中、自身の生き方を選択できる女性や少女は少ない。適切な教育を受けられないまま、過酷な環境に晒され、望まない妊娠と出産を繰り返してしまうケースもある。
世界人口白書においても、少女や女性が被っているさまざまな被害について警鐘を鳴らしている。人口問題を解決するためには「ジェンダー問題の解決」が不可欠であり、そのためにはより多くの人々が、問題に真正面から向き合う覚悟が必要と言えるだろう。
毎年、何気なく過ごしてしまいがちな世界人口デー。とはいえ、世界が抱える人口問題は、決して他人事ではない由々しき問題だ。ふだんは見えにくい問題に焦点を当て、あらためて考えるきっかけにしてみよう。
日本の人口は減少傾向にあるものの、世界の人口は今日も増え続けている。まずは世界の実情に目を向けるところからスタートしてみてほしい。
※1 世界人口デーは、なぜ、7月11日なのですか?|JOICFP(ジョイセフ)
※2 人類誕生から2050年までの世界人口の推移(推計値)グラフ|UNFPA(国連人口基金)
※3 世界人口白書2022|UNFPA(国連人口基金)
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