人口爆発は、産業革命によって経済が発展したころから発生するようになった。現在79億人を超える世界人口は、このまま増加を続けると2050年には97億人を超えると考えられており、それに伴う貧困や環境問題の悪化が懸念されている。
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人口爆発とは、人口が急激に増えること。世界人口は、長らく緩やかな増加を続けてきたが18世紀から21世紀にかけて急激に増加し、現在世界の人口は79億人を超えている。
このような人口爆発は、アジアやアフリカ地域などの発展途上国で多く見られ、人口が増えることによる資源不足や貧困層の増加などが問題視されている。
世界人口は、18世紀半に先進地域での産業革命を契機に徐々に増加を始め、1800年には9億5,000万人、1900年には16億5,000万人、2000年には60億人に達した(※1)。
現在、世界の人口は79億人を超えるが、このまま増加を続けると2050年の世界人口は97億人を突破すると予想されている。国連報告書によると、世界人口の増加の過半は、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア連合共和国、インドネシア、エジプト、米国といったごくわずかな国で発生すると言われている。
世界の人口については、下記の記事を参考にしてほしい。
人口が増加すると資源の消費が増え、さまざまな生産が追いつかなくなる。この結果、食糧や水、資源、住宅、雇用などの不足を引き起こし、貧困や経済格差の拡大がもたらされる。
エネルギー消費の増加や、不足する食糧を生産するために森林伐採や耕地が拡大することによって、地球温暖化の進行が加速する恐れがある。また、枯渇した資源を巡って戦争が起こる可能性も考えられる。
WFP国連世界食糧計画(国連WFP)及び国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、世界で飢餓状態にある人は8億2800万人にも及ぶ。特に新型コロナウィルス感染症のパンデミックで1億5000万人が増加。ロシアのウクライナ侵攻により食料、燃料、肥料価格が急騰したことも影響している。人口爆発が起きる裏側では、食糧難に苦しむ人も増えているのが現状だ(※2)。
人口爆発の要因には、技術の革新によって作物の生産能力が上がったことや、医療の発達により、死亡率が低下したこと、発展途上国の出生率が高いことが挙げられる。
人口増加がとくに見られる途上国には貧しい家庭が多く、労働力の確保が子どもを産む理由の一つにもなっているため、貧困と人口増加の悪循環が発生している。さらに先進国が途上国の資源や労働力を奪い、自給自足の体制を崩壊させていることが貧困をさらに加速させている。
また途上国においては、望まない妊娠に対して避妊や中絶などの情報や手段が入手できないといった問題も発生しており、このことも人口増加を促進していると考えられる。
世界一位の人口を誇る中国では、経済発展政策として出産奨励が呼びかけられていた1950年代から60年代の間に人口が急増し、食糧危機をもたらした。
これにより、中国では人口抑制政策として1978年から2014年の間、夫婦一組につき子どもは一人までとする「一人っ子政策」が実施された。この結果として、人口抑制には効果があったものの少子高齢化が進み、労働力の不足が懸念されている。
一方、2022年末時点の人口は14億1175万人で、約61年ぶりに前年より減少した。
アフリカにおける人口は、1950年からの70年間で5倍以上に増え、現在は11億人以上にも上っている。とくに、西部・中央アフリカの出生率は2021年で4.9人となっており、これは世界の平均出生率の2倍に当たる(※3)。
このような人口増加によって労働者が増えると国内での雇用が不足し、アフリカに近いヨーロッパへ移民が多く押し寄せ、政治的な摩擦が高まる恐れがある。
インドでは、中国に次いで2番目に人口の多い国だが、2023年には中国を抜いてインドが世界一人口の多い国になるとみられている。
大幅な経済成長を成し遂げているインドだが、人口増加に伴い経済格差も激しくなり、国内における約2億人の人々が栄養不足の状態にあると言われている。また、人口の急激な増加による水不足、それに伴う食糧不足も深刻化している。
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途上国における貧困は、人口増加を引き起こす要因の一つだ。貧困をなくすためには、発展国における自給自足や雇用の体制を整える必要がある。先進国は、途上国における資源や食糧の大量消費・大量廃棄を辞め、労働力を搾取しないフェアな取引を結ばなければならない。
また、私たちが今からできるアクションは、フェアトレードのものを買う、多くの途上国に工場を構えるファストファッションは買わない、などのエシカルな消費を心がけることだ。
途上国では、約2億2,500万人の女性が避妊または中絶に関する適切な情報や、安全で効果的な避妊薬(具)を入手することができない状況にある(※4)。このことは人口増加につながるだけでなく、女性の人権侵害にもあたる。
1994年にカイロで開催された国際人口開発会議において提唱された概念「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」は、いつ何人子どもを産む/産まないを選ぶ自由、安全な妊娠・出産や、そのための情報や手段、健康を得られる権利のことである。このような性生活における適切な情報や医療を受けられることが人口の抑制につながると考えられている。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツ関連のケアやサービスの広がりによって、発展途上国での妊産婦死亡率と望まない妊娠の低減には効果が見られているという。
人口問題の解決には、貧困の根絶、ジェンダーの平等の達成、医療・教育制度の強化といった、持続可能な開発目標(SDGs)の達成が大きく影響してくると言えるだろう。
※1 少子化の国際比較(p.1)|内閣府
※2 記録的飢餓が拡大: 世界の食料安全保障と栄養の現状|WFP
※3 State of World Population2021|UNFPA
※4 国際連合人口基金(UNFPA)東京事務所|国際連合広報センター
※ 参照サイト
国際連合広報センター
https://www.unic.or.jp/
UNFPA 国連人口基金東京事務所
https://tokyo.unfpa.org/ja
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