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シンガポールのホテル業界が、2050年までにネットゼロを目指すロードマップを発表。同国の経済を支える観光業が、政府主導のもと、サステナブルな方向に舵を切ることとなった。ホテル業界として温室効果ガス排出量削減のロードマップを発表するのは、世界初とみられる。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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シンガポール政府観光局とシンガポールホテル協会は3月、「ホテル・サステナビリティ・ロードマップ」を発表した。ホテル業界でこのようなロードマップを発表するのは、世界で初めてとみられる。
その内容によると、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」を目標に掲げている。2023年までに各ホテルの二酸化炭素排出量の追跡調査を行い、2030年までに排出量の削減を開始する予定だ。さらに、2025年までに全客室数の60%で、国際的なサステナビリティ認証を取得する。
ホテル運営をグリーン化するための4つの重点分野として、ロードマップでは「水資源の保護」、「廃棄物の管理、リサイクル、循環型経済」、「持続可能な仕入れと購買」、「省エネルギー」が挙げられている。
例えば、農園での食卓体験をはじめ、屋上でのハーブの栽培、環境にやさしい寝具の採用などが考えられる。またアメニティに環境負荷の少ないものを採用するほか、ペットボトルでの飲料水提供中止、ハウスキーピングサービスの希望者のみへの提供など、宿泊客にもサステナブルな習慣を促すことができるという。
ほかにも太陽光パネルやスマートエネルギーメーターの導入、地産地消による持続可能な調達、人工知能(AI)を活用した食品廃棄物の管理など、ネットゼロを実現するための具体的なアイデアが数多く挙げられている。
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さらに各ホテルはこれらの取り組みのために、シンガポール政府観光局に助成金を申請できる。またシンガポール企業庁のプログラムを通じて、持続可能なソリューションを提供する企業と提携が可能だ。
シンガポール政府観光局とシンガポールホテル協会は、このロードマップが持続可能なホテルビジネスの競争力と成長を促進すると期待。やがてホテル業界がサステナブル分野における地域のリーダーとして認識されていくことを願っている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックによって、旅行や観光そのもののあり方が変化したいま、改めて「環境に配慮した旅」が注目を集めている。シンガポールの国を上げたこの取り組みは、日本をはじめ多くの国・地域でも参考となるだろう。
※参考
Launch of the Hotel Sustainability Roadmap by STB and SHA|A Singapore Goverment Agency
Hotels aim to have net-zero emissions by 2050; to start tracking emissions in 2023|The Business Times
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