「デッドストック」が注目される理由とは アパレル業界の問題と取り組み

ハンガーにかけられた黒いワンピース

Photo by Henry & Co. on Unsplash

デッドストック問題は、昨今のアパレル業界が抱える深刻な課題の一つである。そもそもデッドストックとは何なのか、詳しく学んでみよう。デッドストックが注目される理由やメリット・デメリット、各社の取り組み事例についても解説する。

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2022.03.31
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デッドストックとは

デッドストックとは、日本語で「長期間放置されていた在庫品」や「売れ残り品」を意味する言葉である。「流通在庫品」と訳されることも多い。英語の「dead(死んでいる)」「stock(在庫)」という、2つの単語を組み合わせた言葉だ。主にアパレル業界で使われており、売れ残りの洋服や服飾小物を表している。

市場には多くの商品が並び、流行は常に移り変わっている。しかし残念ながら、この世に生み出されたすべての商品が売れるわけではない。流通事情により倉庫で保管されるだけになったり、いったんは店頭に並んだものの売れずに逆戻りしたりと、デッドストックになるまでの過程は、商品によってさまざまである。デッドストックは新品ではあるものの、いわゆる「旬を過ぎたアイテム」が多い。

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デッドストックとヴィンテージとの違い

デッドストックと似た雰囲気の言葉に、「ヴィンテージ」がある。ヴィンテージとは、「年代もののアイテム」や「古くて価値のあるもの」を意味する言葉だ。アパレル業界においては、広義で「古着」と捉えられる機会も多いだろう。

一般的には、「古い=価値が落ちる」と捉えられがちだ。しかしファッションアイテムのなかには、時間の経過とともに味わいを増す商品も少なくない。人気ヴィンテージアイテムには、ときに新品よりも高値がつく。古着のなかでも、特別な存在と言っていいだろう。

ちなみに、ヴィンテージにもデッドストック品は存在する。新品のまま倉庫で長く眠っていた商品が、ヴィンテージ品として流通するケースだ。この場合、経年劣化によるヴィンテージらしさはない。一方で、古い時代のアイテムを「新品」の状態で手に入れられるというメリットがある。

衣類大量廃棄問題とデッドストック

アパレル業界が環境に与える負荷が問題視されるにつれて、デッドストックへの注目度も増している。

シーズンごとに流行が移り変わるアパレル業界では、大量生産・大量消費を長く当たり前のものとしてきた。原材料調達から、製造・輸送・販売、そして廃棄にいたるまで、業界が与える環境負荷は極めて大きい。環境省が公開しているデータによると、原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷の総数は、以下のとおりである。

・CO2排出量 約90,000kt/年
・水消費量 約83億平方m/年
・端材等排出量 約45,000t/年
・化学物質による水質汚染(※1)

非常に華やかなイメージのアパレル業界だが、一方で「汚染産業」としての側面も持っているのだ。こうした状況を改善するため、アパレル業界全体での取り組みが進められている。デッドストック問題の解決も、その一つだ。

売れる見込みのないデッドストックアイテムは、新品であってもそのまま廃棄されてしまう。環境に負荷をかけてつくった製品を廃棄すれば、それは新たな環境問題につながるだろう。国際社会において、環境意識の低い企業やブランドに対する風当たりは、年々強まってきている。

アパレルブランドにとっても、環境問題とどう向き合い、具体的に何をしていくのかは非常に重要な課題だ。アウトレット店やオフプライスストアを活用することで、消費者に対して積極的にアプローチしている。また生産・供給体制の見直しから、デッドストック問題解決への道を探る企業も多い。

デッドストックのメリットとデメリット

我々消費者から見ると、デッドストックにはメリットもあればデメリットもある。環境問題と日々身に付ける衣服、両方とうまく付き合っていくため把握しておこう。

デッドストックを選択するメリット

流行の最新アイテムが簡単に手に入る状況のなか、あえてデッドストックを選択するメリットは以下のとおりである。

・価格の安さ
・環境保護活動

デッドストック品は、最新アイテムよりも安い価格で販売される。「品質のよいものを手ごろな価格で入手したい」と思う人にとっては、非常に魅力的だろう。廃棄予定のデッドストック品を選べば、その分ごみを削減できる。立派な環境保護活動だ。

また、「誰かが使った中古品には抵抗がある」という人でも、導入しやすい点がデッドストックのメリットである。型落ちであっても、新品は新品。抵抗感なく、生活のなかに取り入れられるだろう。

デッドストックのデメリット

一方でデメリットとなるのは、残り物なので需要が少ない商品が多い点である。デッドストックの多くは、今シーズンよりも前に発売されたアイテムだ。流行遅れの商品や、人気カラーだけが欠けた商品も少なくない。一般的なファッションアイテムと比較して、選択の幅は狭まってしまうだろう。

デッドストックを活かす 具体的事例とは?

デッドストック問題解決に向けて、さまざまな企業やブランドが具体的な行動をスタートしている。3つの事例を紹介しよう。

1.「フロムライフストック」プロジェクト

「FROM LIFESTOCK(フロムライフストック)」プロジェクトは、D&DEPARTMENT(ディアンドデパートメント)が2014年より展開する、デッドストック生地を活用するプロジェクトである。各地で眠っている生地や展示商品をバッグやラグとして製品化。「ライフストック」として再利用している。

同じ形のバッグでも、それぞれで異なる風合いを楽しめるなど、デッドストック品の新たな活用方法を生み出している。

デッドストック生地でバッグやラグを D&DEPARTMENTの「FROM LIFESTOCK」

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2.「パスザバトンマーケット」

PASS THE BATON MARKET(パスザバトンマーケット)は、企業の倉庫で眠るデッドストックアイテムや規格外品を集めて行われる、期間限定ののみの市である。2021年12月には、6回目が開催された。

現代ではなかなか見られない商品や、一風変わったアイテムも見つけられる機会として注目される。大手企業も多く出店するほか、ワークショップやフードエリアも充実。

日本の倉庫を空っぽに 蚤の市「PASS THE BATON MARKET Vol.4」が開催 

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3.アップサイクルブランド「フロムストック」

多数の人気ブランドを展開する株式会社アダストリアは「FROMSTOCK(フロムストック)」という新たなアップサイクルブランドを展開中だ。

デッドストック品として残ったアイテムを、黒染めして再販。傷や汚れ、流行遅れといったデメリットを隠し、新たな風合いを加える狙いがある。使用する染料やきちんとした排水管理など、環境への配慮も忘れていない。(※4)

デッドストック活用で環境負荷低減へ

ファストファッションの浸透で、大量生産・大量消費が当たり前になったアパレル業界。その裏で発生したのが、大量のデッドストック問題である。その活用方法について、独自の取り組みをスタートする企業も増えてきた。

デッドストック問題は、我々消費者の意識変化によっても解決を目指せる。デッドストック削減に向けて、自分にできることからスタートしてみよう。

※掲載している情報は、2022年3月31日時点のものです。

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