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多くの人が住みよい環境での生活を求める。リバブルシティはストレスフリーな住環境を重視する人にとって優れた都市構造だ。何をもってリバブルシティとするのか、その条件や実例、SDGsのゴールとともに考えてみよう。
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リバブルシティとは「住みやすい都市(住みやすい街)」を指す。そこに住む人々がいきいきと活動的に、そして快適に生活できる環境であり、かつ、ワークライフバランスを整えやすい特徴が挙げられる。
リバブルシティの概念そのものは昨今生まれたわけではない。住みよい環境を求め、歴史を積み重ねながらリバブルな街を形成してきたエリアは古くから存在する。また、近年では都市計画の段階からリバブルシティへの意識が高い。多くの人々がリバブルシティを求め続けている。
人々が暮らすエリアは無数にある。だが、そのすべてがリバブルシティと呼ばれているわけではない。なかにはとてもリバブルとはいえない住環境もある。「住めば都」という言葉もあるが、やはりリバブルシティを求める人は多いだろう。
法や条約によって「何をもってリバブルシティとするか」と定められているわけではない。あくまで概念の域だ。多くの場合には以下をリバブルシティとして意識する。
1. 交通手段の充実
2. 適切な価格の住宅で文化的な生活ができる
3. 経済活動が活発である
4. 既存のコミュニティを排除せず、共生する
5. 投資・政策の充実
6. 安全、かつ健康に生活できる環境
住みよい都市を想像すれば、上記のいずれも多くの人々が求める条件だろう。リバブルシティは都市の新旧に関わらず、利便性と安全性の高さが注目される。
しかし、昨今のリバブルシティへの意識は少々変わりつつある。環境問題へフォーカスが当てられる機会が増え、サステナビリティの尊重も注目されるようになったのだ。
リバブルシティの構成エレメントとしてサステナビリティが注目されると同時に、SDGsとの親和性もフォーカスされた。
SDGsのゴール11に「住み続けられるまちづくりを」がある。都市と人々の居住空間を包摂的・安全・強靱に、そして持続可能にするゴールである。ゴール11については以下に詳しく記載している。
ゴール11には交通面をはじめ、リバブルシティの構成エレメントが多数包括されている。リバブルシティの構想を推し進め、実現を迎えれば、取りも直さずSDGsのゴール11の達成に近付くのだ。
また、近年の都市構想はSDGsで重要視されるクリーンエネルギーの利用や気候変動対策が推進されているケースも散見される。(※1) クリーンエネルギーの利用はゴール7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、気候変動対策はゴール13「気候変動に具体的な対策を」に該当する。リバブルシティとSDGsの親和性はじつに高い。
このような都市構想は「エコ・リバブルシティ」として注目を集め、今後のリバブルシティの概念や新たな都市構想に大きく影響すると考えられる。
世界におけるリバブルシティの事例を見てみよう。各地においてリバブルシティの概念が統一されているわけではないが、それでも多くの人々が「住みよい」と感じる人気の都市をピックアップする。
ポートランドはアメリカ国内だけではなく、海外からもリバブルシティとして人気を集めている。1892年に始められた貯水池の整備からスタートし、快適で安全な住環境が整えられるようになった。
再開発時にあえてコンパクトな都市を構築し、自転車での移動が適した街づくりを進めた。自転車の利用は炭素削減に大いに貢献し、今後は2030年までに、さらに自転車を利用しやすい環境を整えるための「ポートランド自転車計画」が推進されている。(※2)
メルボルンも人気のリバブルシティだ。都市部の路面電車は無料で、交通の利便性が非常に高い。地元住民の生活の質だけではなく、観光客の回遊率も上昇している。
計画的に植えられた街路樹は美しいだけではなく、夏場には日除けとして人々を守ってくれる。プレイスメイキングとグリーンインフラがリバブルシティとしての質を高めているといえよう。
バンクーバーもリバブルシティとして有名である。豊かな自然に恵まれながら、高層ビルが建ち並ぶ大都市でもある。いわば自然と都市が共存するエリアだ。
リバブルシティとしての一面は、メルボルンと同様に自転車での交通が非常にスムーズであり、利便性だけではなくクリーンエネルギーへ貢献していることや、教育機関・公共施設の充実が挙げられる。
純粋な住みよさ・利便性の追求から環境保護へと広がりを見せたリバブルシティは、多くの人々を魅了する。ワークライフバランスを重視したとき、リバブルシティに住みたいと願う人は決して少なくないはずだ。昨今はウォーカブルシティも関心を集めている。未来の都市構想の可能性は広がるばかりだ。
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