居心地のよさを追求した新しい街のかたち「ウォーカブルシティ」とは

ニューヨークのブロードウェイの歩行者

ウォーカブルシティとは、歩行者を中心にデザインされた街やその考え方のこと。車がなくても、徒歩や自転車、公共交通機関によってどこにでもアクセスできる利便性や、歩いていて楽しく、安全な歩行環境が整っていることが重視される。

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2020.11.30

歩行者中心のウォーカブルシティとは

ウォーカブルシティとは、歩行者を中心としたまちづくりのコンセプト、およびその考え方に沿って設計された街のことを指す。直訳すると「歩きやすい街」だが、「自動車がなくても住みやすい街」「居心地のよい街」といった意味も含まれている。

ウォーカブルシティの条件には、以下のようなものが挙げられる。
・快適な歩行環境が整っている
・公共交通機関が整備されていて、自動車がなくても移動が快適
・医療や教育などの公共施設が徒歩圏内にあり、日常の用事を徒歩で済ませられる
・公園や飲食店などの憩いの場が充実していて、出歩きたくなるような環境である

このように、歩行での移動における利便性だけでなく、街に活気があり、多様な活動を繰り広げられる街の「暮らしやすさ」や「居心地のよさ」が大きく関係していると言える。

国土交通省では、国内外の先進事例などの情報共有や、政策づくりに向けた国と地方とのプラットフォームに参加し、ウォーカブルシティをともに推進する「ウォーカブル推進都市」を随時募集中。現在は281の自治体が賛同している。

ウォーカブルシティの事例

ヨーロッパの街並みと人

Photo by Xiaofen P on Unsplash

ポートランド(アメリカ)

ポートランドでは、コンパクトシティと呼ばれるまちづくりを推進。都市と郊外の間に「都市成長境界線」を導入することで、無秩序な郊外開発を防止し、農地や森林を保全しながら、都市機能を中心地に集約させている。

「自転車の街」としても知られており、バスや電車に自転車の持ち込みが許可されているほか、自転車専用レーンや駐輪ラックが町中に設置されている。また、ライトレール(軽電車)、ストリートカー(路面電車)、バスなどの公共交通機関、自転車や電動キックボードのシェアリングサービスも充実しているため、車がなくても街の移動がスムーズだ。

街の区画は、通常の半分のサイズとなる約60×60mに定められており、歩道に面する建物の1階部分は、一部をガラス張りにするという規定がある。街区ごとに景観が変化し、アクティビティが可視化されることで、歩きやすい街の構造になっている。

コンビニやチェーン店は少なく、ローカルファースト(地元第一主義)を徹底。近隣農家によるファーマーズマーケットや、地元アーティストによるウォールアートなども街に活気をもたらしている。

パリ(フランス)

パリでは、市内の歩行者空間化と自転車道の整備を推進。セーヌ川沿いの自動車専用道路は歩行者空間化され、パリ中心の有名通りでは自動車の通行が原則禁止となっている。

また、エッフェル塔周辺の車道を緑地広場にする計画も現在進行している。チケット売り場やキオスクは地下に埋められ、景観を損なわないように配慮。車の通行量が減ることで、観光客がよりエッフェル塔にアクセスしやすくなるほか、街の景観も改善するため街歩きが楽しくなる。

さらに2024年までには、「すべての場所に15分でアクセスできる街」を目指し、6万台分の駐車スペースをなくして、すべての道路に自転車専用レーンを導入する予定だ。

東京(日本)

品川区天王洲では、水辺空間を活かした良好な景観づくりを推進しており、天王洲アイルには、運河に沿いに広々としたウッドデッキを設置。テラス席のあるカフェやレストランも併設しており、歩行者が運河を眺めながらくつろいだり、休憩できる空間になっている。天王洲アイルからは、港南公園へとつながる歩行者専用の橋もあり、夜にはライトアップもされる。

オフィスの多い丸の内では、「人が中心の空間」を目指し、仲通りに面したビルの1階部分に、有名ブランド店や飲食店を導入。車道の幅を狭めて歩道を広くしたことで、人が歩きやすくなった。さらに仲通りを一定の時間「歩行者天国」化し、ベンチやテーブルの設置やイベントの開催をおこなうことで、ワーカーや来訪者がくつろぎ楽しめる空間へと変化させている。

経済や環境にもプラスの影響

東京の街並みと人

Photo by Matthew Hadiwidjaja on Unsplash

ウォーカブルシティの取り組みが広がることで、排気ガスや事故などの心配もなく、安心して街を歩けるようになるだろう。また、歩行者を誘致するイベントや店舗が増え、街に活気が溢れることで、観光客の増加や地域経済の発展も期待できる。

さらに歩行量の増加による健康改善、自動車に依存しないことによる環境負荷の削減など、ウォーカブルシティはさまざまなメリットをもたらすことが考えられる。

「人」中心の居心地のよい街へ

家族や友人と街中でくつろぐことのできる、緑いっぱいの広々とした空間。車を持っていなくても、自転車や徒歩でどこにでもアクセスできる利便性。歩きやすく、景観を配慮した歩道デザイン。これらが実現すれば、街歩きはより楽しく、暮らしはより心地のよいものになるだろう。

今後、より多くの街でウォーカブルシティが推進され、「人」を中心とした居心地のよい街が広がっていくことに期待したい。

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

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